編集:片山茂裕 河盛隆造 景山茂 西尾善彦 西村理明 綿田裕孝
2022年6月現在,12823報収載!
全トライアルリスト
[HOMEに戻る]
Neuen BL, Oshima M, Agarwal R, Arnott C, Cherney DZ, Edwards R, Langkilde AM, Mahaffey KW, McGuire DK, Neal B, et al.: Sodium-Glucose Cotransporter 2 Inhibitors and Risk of Hyperkalemia in People With Type 2 Diabetes: A Meta-Analysis of Individual Participant Data From Randomized, Controlled Trials. Circulation. 2022; 145: 1460-1470. [PubMed]

2型糖尿病でCKDを伴う患者では高カリウム血症を生じやすい。またCKDや心不全を伴う場合には,腎保護や心保護作用を期待してMRAを含むRAAS阻害薬の使用が増えるが,このことも高カリウム血症を引き起こすこととなる。心保護や腎保護作用が証明されたSGLT2阻害薬が高カリウム血症のリスクを減少させる可能性が比較的短期間の小規模な試験で報告されている。今回の検討は,SGLT2阻害薬を用いた6つの心血管アウトカム試験のメタ解析である。
SGLT2阻害薬は重篤な高カリウム血症の発症リスクを16%減少させ,医師の診断による高カリウム血症イベントを20%減少させた。またこの効果は,HbA1c・eGFR・UACRの多寡,心不全既往の有無,RAAS阻害薬/利尿薬/MRAの使用の有無に関わらず,一貫して認められた。
SGLT2阻害薬がカリウムの腎からの排泄を促す機序については,皮質の集合管でのナトリウム吸収の増大に伴い電荷が増大しカリウム排泄が増えること,アルドステロンの分泌が増加すること,腎機能が保持されることなどが挙げられている。
このようにSGLT2阻害薬が高カリウム血症のリスクを減少させるとすれば,2型糖尿病でCKDや心不全を伴う患者で,心腎保護作用を有するが高カリウム血症を来す懸念のあるARB/ACE阻害薬 and/or MRAを,異なる作用機序で心腎保護作用を有するSGLT2阻害薬と併用投与できる症例が飛躍的に増えることになると期待される。MRAの使用頻度はまだ必ずしも十分ではないが,最近,FIDELIO-DKD試験で注目を集めている非ステロイド性選択的MRAであるfinerenoneも,従来のステロイド性MRAに比べれば軽度ではあるが高カリウム血症のリスクを高める。したがって,finerenoneとSGLT2阻害薬との併用も魅力のある選択肢となり得るであろう。【片山茂裕

●目的 慢性腎臓病(CKD)合併または心血管リスクが高い2型糖尿病患者において,SGLT2阻害薬は重篤な高カリウム血症のリスクを減少させるかについて検討した。
一次エンドポイントは,重篤な高カリウム血症(血清カリウム≧6.0 mmol/L)。
その他のエンドポイントは高カリウム血症イベント(治験担当医師の診断),低カリウム血症(血清カリウム≦3.5 mmol/L)。
●デザイン ランダム化比較試験(RCT)(二重盲検,プラセボ対照)のメタ解析。
●試験期間 追跡期間中央値は2.4~4.2年。
●対象患者 CKD合併または心血管リスクが高い2型糖尿病患者49,875例,RCT 6件(CREDENCE[canagliflozin],DAPA-CKD[dapagliflozin],CANVAS Program[canagliflozin], DECLARE-TIMI 58[dapagliflozin],EMPA-REG OUTCOME[empagliflozin],VERTIS-CV[ertugliflozin])。
論文の採用基準:SGLT2阻害薬に関するRCT,二重盲検,プラセボ対照,event-driven臨床試験,CKD合併または心血管リスクが高い2型糖尿病患者を対象とした試験,血清カリウム値を定期的に測定している試験。
●方法 PubMedおよびMedLineより,採用基準を満たす文献を検索(2000年1月1日~2021年7月1日)。
SGLT2阻害薬が一次エンドポイントおよびその他のカリウム関連エンドポイントに与える影響については,Cox回帰分析によりハザード比(HR)および95%CIを求め,ランダム効果モデルおよびMantel-Haenszel法とも統合し,以下のサブグループ解析も実施した。
HbA1c(≦8%,>8%),eGFR(<60 mL/分/1.73m2,≧60 mL/分/1.73m2),UACR(<30 mg/g,≧30 mg/g),心不全既往の有無,RAAS阻害薬/利尿薬/ミネラルコルチコイド受容体拮抗薬(MRA)の使用の有無
血清カリウム値はベースラインから52,104,156,208週後までの差を加重平均差および95%CIを算出して評価。
感度分析として,糖尿病の有無を問わないEFが低下した心不全患者を対象とした2試験(DAPA-HF,EMPEROR-Reduced)のデータを含めた解析を実施した。
●結果 SGLT2阻害薬は重篤な高カリウム血症の発症リスクを16%減少させ(HR 0.84,95%CI 0.76 to 0.93,p<0.001),試験間の異質性は認められなかった(I2=0.0%,異質性のp=0.71)。感度分析においても,この効果は同様に認められ(HR 0.82,0.75 to 0.90),試験間の異質性も認められなかった(異質性のp=0.65)。SGLT2阻害薬は医師の診断による高カリウム血症イベントを20%減少させ(HR 0.80,95%CI 0.68 to 0.93,p=0.004),試験間の異質性は認められなかった(異質性のp=0.21)。
また,SGLT2阻害薬は,低カリウム血症のリスクを増加させず(HR 1.04,95%CI 0.94 to 1.15),試験間の異質性も認められなかった(異質性のp=0.42)。
サブグループ解析の結果,SGLT2阻害薬の重篤な高カリウム血症に対する効果は,HbA1c(≦8%,>8%),eGFR(<60 mL/分/1.73m2,≧60 mL/分/1.73m2),UACR(<30 mg/g,≧30 mg/g),心不全既往の有無,MRA使用の有無,利尿薬使用の有無で,ほぼ一貫した結果が示された(すべての相互作用のp≧0.19)。一方,RAAS阻害薬使用の有無では,有無別の解析でもそれぞれ有意な効果が示されたが,使用なしの患者で使用有りの患者に比べて効果が高かった,すなわち重篤な高カリウム血症の頻度が少なかった(相互作用のp=0.002)。
●結論 CKDまたは心血管リスクが高い2型糖尿病患者において,SGLT2阻害薬は,低カリウム血症を増加させることなく,重篤な高カリウム血症のリスクを減少させた。