編集:片山茂裕 河盛隆造 景山茂 西尾善彦 西村理明 綿田裕孝
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Voors AA, Angermann CE, Teerlink JR, Collins SP, Kosiborod M, Biegus J, Ferreira JP, Nassif ME, Psotka MA, Tromp J, et al.: The SGLT2 inhibitor empagliflozin in patients hospitalized for acute heart failure: a multinational randomized trial. Nat Med. 2022; 28: 568-574. [PubMed]

このような状況の患者にSGLT2阻害薬を追加投与することにより,どのような効果があったのか,より強く利尿作用が発揮されたのか,それ以外の効果なのか,を解析してもらいたいものだ。むしろプラセボとの比較ではなく,より強力に利尿薬を投与する群と,SGLT2阻害薬を追加投与する群での比較研究にも期待したい。【河盛隆造

●目的 急性心不全の入院患者において,empagliflozinが臨床アウトカムに与える影響をプラセボと比較した。
主要評価項目は90日後の臨床的ベネフィット(全死亡,心不全イベントの発生頻度および初発心不全イベントまでの時間,Kansas City Cardiomyopathy Questionnaire Total Symptom Score[KCCQ-TSS]スコアのベースラインからの変化≧5ポイントの階層的複合アウトカム)。
●デザイン ランダム化,二重盲検,プラセボ対照,多施設(118施設,15ヵ国),intention-to-treat解析。
●試験期間 登録期間は2020年6月~2021年2月,追跡期間はランダム化後90日間。
●対象患者 急性心不全(左室駆出率[LVEF]を問わない,急性の新規発症心不全または非代償性心不全)の入院患者530例。
年齢中央値は,empagliflozin群71歳,プラセボ群70歳,男性67.5%,64.9%,NYHA心機能分類(II度 35.8%,34.3%,III度 /50.6%,54.7%),NT-proBNP(pg/mL) 3,299 pg/mL,3,106 pg/mL,BMI(kg/m2) 28.35 kg/m2,29.08 kg/m2,LVEF中央値(%):31.0%,32.0%,eGFR(中央値) 50.0 mL/min/1.73 m2,54.0 mL/min/1.73 m2,非代償性慢性心不全 66.8%,67.2%,新規発症急性心不全 33.2%,32.8%。【既往】糖尿病 46.8%,43.8%,高血圧 77.4%,83.4%,心房細動 50.6%,48.3%。【治療歴】ACE阻害薬 33.2%,33.6%,ARB 24.2%,19.6%,アンジオテンシン受容体ネプリライシン阻害薬(ARNi) 13.6%,17.0%,MRA 57.0%,47.2%,β遮断薬 80.4%,78.5%,ループ利尿薬 87.9%,77.0%。
登録基準:18 歳以上(日本は21歳以上)。労作時または安静時呼吸困難を伴う急性心不全のため入院し,胸部X線のうっ血所見・ラ音聴取・臨床的に関連する浮腫・頚静脈圧上昇のうち2つ以上を満たす患者。収縮期血圧≧100 mmHg,24時間以内の強心薬投与なし,低血圧症状なし,ランダム化前6時間に静注利尿薬の増量なし,かつ硝酸薬を含む血管拡張薬の投与なし。NT-proBNP≧1,600 pg/mL(心房細動患者では≧2,400 pg/mL)またはBNP≧400 pg/mL(同≧600 pg/mL)。フロセミド40 mg(日本では20 mg)相当以上の静注利尿薬の投与。
除外基準:心原性ショック,ランダム化前90日以内または入院の契機となった肺塞栓/脳血管事故/急性心筋梗塞,心臓移植を実施中または実施予定,左心補助装置または静注強心薬投与,eGFR<20 mL/min/1.73 m2または透析が必要,ケトアシドーシスの既往。
●方法 対象患者を,empagliflozin群(10 mg 1日1回投与)(265例)とプラセボ群(265例)にランダム化し,最長90日間投与。
COVID-19による外出制限や安全性の懸念から患者が試験参加施設を受診できない場合は,電話/自宅訪問によるリモート受診を可とし,中央検査機関による検体採取が困難な場合は地域の検査機関を利用,試験薬の配布は患者が受け取り可能であれば郵送可とした。
●結果 試験薬を1回以上投与された患者は,empagliflozin群260例,プラセボ群264例,試験薬の早期投与中止は52例,62例,追跡不能は11例,22例。COVID-19により受診データが欠測となった患者は2例のみ,リモート受診は23例であった。
主要評価項目である臨床的ベネフィットは,empagliflozin群のほうがプラセボ群よりも有意に高く(stratified win ratio:1.36[95%CI 1.09 to 1.68],p=0.0054),このベネフィットは,LVEF値を問わず,新規発症心不全,非代償性心不全のいずれにおいても,また糖尿病の有無にかかわらず認められた。
死亡はempagliflozin群11例(4.2%),プラセボ群22例(8.3%),心不全イベント≧1回は28例(10.6%),39例(14.7%),KCCQ-TSSスコアのベースラインからの変化は36.19(95%CI 33.28 to 39.09),31.73(28.80 to 34.67)であった。
最終受診時までの心血管死または心不全イベントの発現率はempagliflozin群12.8%,プラセボ群18.5%,90日時のKCCQ-TSSスコアの改善≧10ポイントの患者の割合は83.1%,76.3%であり,有意な差は認められなかった。
empagliflozinの忍容性は良好で,重篤な有害事象の発現率はempagliflozin 群32.3%,プラセボ群43.6%であった。ケトアシドーシスは両群ともにみられず,体液減少はそれぞれ12.7%,10.2%,重篤な症候性低血糖は1.2%,1.5%,急性腎不全は7.7%,12.1%,尿路感染は4.2%,6.4%であった。
●結論 急性心不全の入院患者において,empagliflozinは忍容性が良好であり,プラセボにくらべ治療開始から90日後の臨床的ベネフィットが有意に高いことが示された。