編集:片山茂裕 河盛隆造 景山茂 西尾善彦 西村理明 綿田裕孝
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Lee JY, Kim YE, Han K, Han E, Lee BW, Kang ES, Cha BS, Ko SH, Lee YH: Analysis of Severe Hypoglycemia Among Adults With Type 2 Diabetes and Nonalcoholic Fatty Liver Disease. JAMA Netw Open. 2022; 5: e220262. [PubMed]

2型糖尿病患者において,NAFLDが低血糖のリスク因子となっていることを示した興味深い研究である。
通常,BMI低値は低血糖のリスクとなる。NAFLDではBMI高値のヒトが大いため,NAFLDが低血糖リスク因子という印象は臨床的には感じないと思うが,本研究ではBMIを補正すると,NAFLDが低血糖リスク因子となっていることを見出している。
メカニズムに関して,肝硬変であれば,肝機能低下に基づく肝糖産生機構の低下が存在するので,低血糖リスクになることはわかるが,本研究では肝硬変非合併例のみの検討であり,このこと以外のメカニズムが考えられる。著者らはこれまでの報告で,NAFLDではグルカゴンレベルが高いことが報告されており,このためグルカゴン反応の障害がおきているのではないかとメカニズムを推測しているが,今後の検討が必要である。【綿田裕孝

●目的 2型糖尿病患者において,非アルコール性脂肪性肝障害(NAFLD)と重症低血糖の関連を評価した。
主要エンドポイントは重症低血糖(入院記録,救急受診記録により評価)。
●デザイン 後向きコホート(韓国)。
●試験期間 追跡期間中央値5.2年。
●対象患者 20歳以上の2型糖尿病を有する一般住民194万6,581例(重症低血糖発現例4万5,135例,非発現例190万1,446例)。
平均年齢は重症低血糖発現例57.2歳,非発現例67.9歳,男性は44.8%,58.1%,体重は60.1 kg,66.2 kg,BMIは24.2 kg/m2,25.1 kg/m2。【治療薬】インスリン:28.1%,7.0%,metformin:66.3%,44.7%,SU薬:75.2%,40.2%,グリニド系薬:6.1%,2.0%,チアゾリジン系薬:10.7%,6.1%,DPP-4阻害薬:9.3%,9.1%。【併存疾患】高血圧:76.5%,55.5%,脂質異常症:47.9%,42.0%,慢性腎臓病:34.0%,10.8%,心血管疾患:10.9%,6.1%。
登録基準:20歳以上,2009年1月1日~2012年12月31日に健康診断を受け,ベースラインに2型糖尿病があった者,または追跡期間中(2015年12月31日まで)に2型糖尿病を発症した者。
除外基準:多量飲酒(男性:>210 g/週,女性>140 g/週),B型・C型肝炎キャリア,肝硬変の診断,急性・慢性膵炎,他の膵臓疾患,膵癌・肝臓癌・胆管癌の診断歴,欠測データのある者。
●方法 韓国の国民健康保険公団(NHIS)のデータを用い,健康診断(2009年1月1日~2012年12月31日)で2型糖尿病の診断を受けた一般住民を対象に,NAFLDと重症低血糖の関連を評価した。2型糖尿病の診断は,保険請求データベースのICD-10コードと糖尿病治療薬の処方,または健診時の空腹時血糖≧126 mg/dLを根拠とした。NAFLDはサロゲートマーカーとして脂肪肝指数(FLI)を使用。
●結果 重症低血糖のリスクをFLIの十分位数により10群にわけて評価したところ,未調整モデル(モデル1)では,重症低血糖のリスクはFLIの増加に伴い低下した。しかし,年齢,性別,飲酒,BMIで調整すると(モデル2),FLIと重症低血糖の間にJ型の関連が認められた。この関連は,さらに過去3年間の重症低血糖の既往,インスリン,SU薬,グリニド系薬,高血圧の既往を加えて調整後(モデル3)も認められた(第5十分位群:調整ハザード比0.86[95%CI 0.83 to 0.90],第9十分位群:1.02[0.96 to 1.08],第10十分位群:1.29[1.22 to 1.37])。
次に,FLI値により3群(NAFLDなし:FLI<30,中等度FLI:30~90,NAFLDあり:FLI≧60)にわけて評価すると,調整後(モデル3)の重症低血糖リスクは,NAFLDなしにくらべ中等度FLIで同等であったが(0.99[0.97 to 1.02]),NAFLDありでは26%高かった(1.26[1.22 to 1.30])。サブグループ解析で,この関連は女性(1.29[1.23 to 1.36])とBMI低値(<18.5 kg/m2)(1.71[1.02 to 2.88])で顕著であることが示された。
●結論 NAFLDを有する2型糖尿病患者では,NAFLDがない患者にくらべ,肥満状態にかかわらず,重症低血糖リスクが高い可能性が示された。