編集:片山茂裕 河盛隆造 景山茂 西尾善彦 西村理明 綿田裕孝
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Pitt B, Filippatos G, Agarwal R, Anker SD, Bakris GL, Rossing P, Joseph A, Kolkhof P, Nowack C, Schloemer P, et al.; FIGARO-DKD Investigators: Cardiovascular Events with Finerenone in Kidney Disease and Type 2 Diabetes. N Engl J Med. 2021; 385: 2252-2263. [PubMed]

すでにFIDELIO-DKD試験で,非ステロイド型選択的MR拮抗薬であるfinerenoneの腎保護効果と心血管イベント減少効果が報告されている。今回のFIGARO-DKD試験は,微量アルブミン尿のCKDステージ2~4,または顕性アルブミン尿のCKDステージ1~2の2型糖尿病患者を対象に,finerenoneの心血管イベントに対する効果を一次エンドポイント,腎保護効果を二次エンドポイントとして行われた試験である。Finerenone投与群では心血管イベントのリスクがHR 0.87と有意に低下し,特に心不全による入院リスクがHR 0.71と有意に低下し,腎イベントも有意差には至らなかったものの,HR 0.87(95%CI 0.76 to 1.01)であった。MR拮抗薬により最も危惧される有害事象は高カリウム血症であるが,主治医により報告された高カリウム血症は,本薬群で10.8%であり,プラセボ群では5.3%であった。血液検査で5.5 mmol/L以上の高カリウム血症の頻度は,それぞれ13.5%と6.4%であった。特に重篤な6 mmol/L以上の高カリウム血症の頻度は,それぞれ2.3%と1.2%であり,本薬の中止は1.2%とプラセボ群の0.4%に比べて高いものの,従来のステロイド型MR拮抗薬に比べると,軽微であることが特筆される。
FIDELIO-DKD試験と今回のFIGARO-DKD試験に基づけば,今後,2型糖尿病を合併するCKD患者で,CKDステージが1~4で,微量アルブミン尿から顕性アルブミン尿の広い範囲の患者で,RAS阻害薬と非ステロイド型MR拮抗薬を併用することが強く推奨される可能性がある。近年,心・腎保護作用が証明されているSGLT2阻害薬は,動脈硬化性心疾患の既往またはその高リスク,心不全やCKDを伴う2型糖尿病患者では血糖降下薬の第一選択薬とされている。今後,心・腎保護の観点から,RAS阻害薬に加えて,SGLT2阻害薬あるいはMR拮抗薬をどのような患者にどのように使用するのか,あるいはRAS阻害薬・SGLT2阻害薬・MR拮抗薬を3剤併用するトリプルブロックか,などの検討が待たれる。
FIDELIO-DKD試験を基に,欧米ではfinerenoneはCKDを合併した2型糖尿病のDKD(糖尿病性腎臓病)の治療薬として認可されている。FIDELIO-DKD試験とFIGARO-DKD試験には,わが国からも1,000人余が登録されており,わが国でも近々finerenoneがDKDの治療薬として使用できるものと期待される。【片山茂裕

●目的 広範囲の慢性腎臓病(CKD)を伴う2型糖尿病患者において,finerenoneの心血管アウトカムに対する効果を評価した。
一次エンドポイントは,心血管死+非致死性心筋梗塞+非致死性脳卒中+心不全による入院の複合。
二次エンドポイントは,腎不全+eGFRのベースラインから≧40%減少+腎臓死の複合。
●デザイン ランダム化,二重盲検,プラセボ対照,多施設,第III相,有効性の解析はfull analysis set,安全性の解析はsafety analysis set。
●試験期間 登録期間は2015年9月~2018年10月,追跡期間は中央値3.4年。
●対象患者 さまざまなレベルのCKDを伴う2型糖尿病患者7,437例。
平均年齢はfinerenone群64.1歳,プラセボ群64.1歳,男性68.6%,70.3%,eGFR 67.6 mL/分/1.73m2,68.0 mL/分/1.73m2,心血管疾患既往45.5%,45.1%,尿中ACR(中央値) 302,315,血清カリウム値4.33 mmol/L,4.33 mmol/L。薬剤投与歴:RAS阻害薬99.9%,99.9%,利尿薬47.4%,47.7%,スタチン69.2%,71.8%,GLP-1受容体作動薬8.4%,6.6%,SGLT2阻害薬8.5%,8.3%。
登録基準:18歳以上,RAS阻害薬(ACE阻害薬またはARB[それぞれ最大耐用量])で治療下のCKD(① 中等度上昇アルブミン尿:尿中ACR 30~<300,かつeGFR 25~90 mL/分/1.73 m2[CKDステージ2~4],または② 重度上昇アルブミン尿:尿中ACR 300~5,000,かつeGFR≧60 mL/分/1.73 m2[CKDステージ1~2],のいずれかを満たすCKD)。血清カリウム値≦4.8 mmol/L。
除外基準:尿中ACR 300~5,000かつeGFR 25~<60 mL/分/1.73 m2のCKD,EFが低下した症候性慢性心不全。
●方法 対象患者をfinerenone群,プラセボ群に1:1にランダム化。
finerenone群では,eGFR 25~<60 mL/分/1.73 m2の場合は10 mg 1日1回より投与開始,≧60 mL/分/1.73 m2の対象は20 mg 1日1回より投与開始とした。
10 mg投与開始例では,血清カリウム値≦4.8 mmo/LでeGFRが安定していれば,1ヵ月後の目標用量20 mgとし,漸増投与。20 mgから10 mgまでの減量は,安全性に基づき,随時可とした。血清カリウム値>5.5 mmol/Lとなった場合は治療中止とし,≦5.0 mmol/Lに低下した場合は治療再開とした。
●結果 試験の脱落率はfinerenone群27.4%,プラセボ群27.7%,試験薬の遵守率は91.5%,92.9%。
平均投与量は,finerenone群17.5 mg,プラセボ群18.2 mgであった。
一次エンドポイント(心血管死+非致死性心筋梗塞+非致死性脳卒中+心不全による入院の複合)の発症はfinerenone群(12.4%[458/3,686例])でプラセボ群(14.2%[519/3,666例])に比べて有意に少なかった(HR 0.87,95%CI 0.76 to 0.98,p=0.03)。また,エンドポイントの各項目のうち,心不全による入院リスクがfinerenone群で有意に低かった(HR 0.71,0.56 to 0.90)。
二次エンドポイントの発症はfinerenone群9.5%,プラセボ群10.8%で有意な差を認めなかった(HR 0.87,0.76 to 1.01)。
全有害事象の発症は両群で差を認めなかったが,高カリウム血症による治療中止は,finerenone群(1.2%)でプラセボ群(0.4%)に比べて多かった。
●結論 アルブミン尿の中等度上昇を伴うCKDステージ2~4またはアルブミン尿の重度上昇を伴うCKDステージ1~2の2型糖尿病患者において,finerenoneはプラセボに比べ,心血管アウトカムを改善させる可能性が示唆された。