編集:片山茂裕 河盛隆造 景山茂 西尾善彦 西村理明 綿田裕孝
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Filippatos G, Anker SD, Agarwal R, Ruilope LM, Rossing P, Bakris GL, Tasto C, Joseph A, Kolkhof P, Lage A, et al.; FIGARO-DKD Investigators: Finerenone Reduces Risk of Incident Heart Failure in Patients With Chronic Kidney Disease and Type 2 Diabetes: Analyses From the FIGARO-DKD Trial. Circulation. 2022; 145: 437-447. [PubMed]

すでにFIDELIO-DKD試験FIGARO-DKD試験で,非ステロイド型選択的ミネラルコルチコイド受容体拮抗薬(MRA)であるfinerenoneの腎保護効果と心血管イベント減少効果が報告されている。FIGARO-DKD試験は,微量アルブミン尿のCKDステージ2~4または顕性アルブミン尿のCKDステージ1~2の2型糖尿病患者を対象に,finerenoneの心血管イベントに対する効果を一次エンドポイントとし,腎保護効果を二次エンドポイントとして行われた試験である。Finerenoneの投与群では心血管イベントのリスクがHR 0.87と有意に低下し,特に心不全(HF)による入院リスクがHR 0.71と有意に低下することが報告されている。
世界の主要なガイドラインにおいて,HF,特にHFrEFに対してMRAは強く推奨されている。しかしながら,CKD and/or 2型糖尿病患者において,MRAがHFの新規発症やHFの悪化にどのような影響を与えるかについては,必ずしも明らかでなかった。本報告はFIGARO-DKD試験の事前に設定されたサブ解析である。今回,finerenoneは,試験開始時にHFのない症例においてHFの新規発症を32%低下させた。また,全例における解析では,finerenone群でプラセボ群に比べて,心血管死+初回HFによる入院の複合の発生率や初回HFによる入院をそれぞれ18%あるいは29%低下させた。
CKDを併せ持つ2型糖尿病患者は,それだけで心血管疾患の高リスク群であるが,HFを合併することも多く,さらにリスクを高めることとなる。FIGARO-DKD試験の対象からは,HFrEFの患者は除外されているが,CKDを併せもつ2型糖尿病患者はHFの高リスク群あるいは症候はないが心臓の構造機能に何らかの異常を有する患者群とも考えられ,finerenoneが心血管死+初回HFによる入院の複合の発生率や初回HFによる入院を有意に低下させた臨床的意義は極めて大きいといえる。FinerenoneのHFpEFや軽度に心機能の低下したHFrEFにおける臨床的意議は,現在進行中のFINEARTS-HF(Finerenone Trial to Investigate Efficacy and Safety Superior to Placeboin Patients With Heart Failure)でより明らかにされることが待たれる。
なお,例数は少ないが,FIGARO-DKD試験では試験開始時にSGLT2阻害薬が618例で投与されており,finerenone群でプラセボ群に比べて,心血管死+初回HFによる入院の複合の発生率を有意に低下させた(HR 0.35,p=0.046)。非ステロイド型選択的MRAとSGLT2阻害薬の併用の有用性がうかがわれるが,今後さらに症例を増やしての検討が待たれる。【片山茂裕

●目的 慢性腎臓病(CKD)を伴う2型糖尿病患者において,finerenoneの心不全(HF)関連アウトカムに対する効果を評価した。
エンドポイントは,新規発症HF(HFの既往がない患者における,初回のHFによる入院[HHF]),心血管死+初回HHFの複合,初回HHF,全HHF,ほか。
●デザイン FIGARO-DKD試験(ランダム化,二重盲検,プラセボ対照,多施設,第III相,有効性の解析はfull analysis set,安全性の解析はsafety analysis set)のサブ解析。
●試験期間 追跡期間は中央値3.4年。
●対象患者 アルブミン尿を伴うCKDの2型糖尿病患者7,352例(HF既往患者571例,HFの既往がない患者6,781例)。
平均年齢はHF既往患者65.6歳,HFの既往がない患者64.0歳,男性61.3%,70.1%,白人87.9%,70.4%,BMI 32.8 kg/m2,31.3 kg/m2,糖尿病罹病期間15.1年,14.4年,HbA1c 8.0%,7.7%,eGFR 63.4 mL/分/1.73m2,68.2 mL/分/1.73m2,β遮断薬71.1%,46.2%,利尿薬63.6%,46.2%,カリウムのサプリメント4.9%,2.8%,インスリンおよびアナログ63.6%,53.5%。
登録基準:18歳以上,臨床的に診断された2型糖尿病およびアルブミン尿を伴うCKD(① 持続性の中等度上昇ACR≧30~<300 mg/g,eGFR≧25~≦90 mL/分/1.73 m2,または② 持続性の重度上昇ACR≧300~≦5,000 mg/g,eGFR≧60 mL/分/1.73 m2),最大耐用量でACE阻害薬またはARBを投与中,血清カリウム値≦4.8 mEq/Lの者。
除外基準:EFが低下した症候性慢性心不全(NYHA心機能分類II~IV),既知の重度の非糖尿病性腎症。30日前以内の脳卒中,一過性脳虚血発作,急性冠症候群,またはHHF歴。急性腎不全による最近の透析歴または腎移植,コントロール不能高血圧。
●方法 対象患者をfinerenone群,プラセボ群に1:1にランダム化。
finerenone群では,eGFR≧25~<60 mL/分/1.73 m2の対象は10 mg,≧60 mL/分/1.73 m2の対象は20 mgをそれぞれ1日1回経口投与した。10 mg投与例では,血清カリウム値≦4.8 mmol/LでeGFRが安定していれば,1ヵ月後に用量を漸増させた。減量は随時可とした。

本論文は,ベースライン時におけるHF既往の有無による事前設定サブグループ解析の報告。
●結果 HFの既往のない患者における新規発症HFは,finerenone群でプラセボ群にくらべ有意に低かった(1.9% vs. 2.8%,HR 0.68[95%CI 0.50 to 0.93],p=0.0162)。
全例における検討では,全てのHFアウトカム発生率はfinerenone群でプラセボ群にくらべて有意に低かった。心血管死+初回HHFの複合の発生率はfinerenone群でプラセボ群にくらべて18%低く(HR 0.82[0.70 to 0.95],p=0.011),初回HHFは29%低く(HR 0.71[0.56 to 0.90],p=0.0043),全HHFは30%低かった(率比0.70[0.52 to 0.94],p=0.018)。
finerenoneによるHFアウトカム改善効果は,HFの既往者でも修正されなかった。
治療関連有害事象の発症は両群同程度であった。
●結論 アルブミン尿を伴うCKDの2型糖尿病患者において,finerenoneは新規発症HFリスクを低下させ,HF既往の有無にかかわらず,その他のHFアウトカムも改善させる可能性が示唆された。