編集:片山茂裕 河盛隆造 景山茂 西尾善彦 西村理明 綿田裕孝
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Frías JP, Davies MJ, Rosenstock J, Pérez Manghi FC, Fernández Landó L, Bergman BK, Liu B, Cui X, Brown K, ; SURPASS-2 Investigators: Tirzepatide versus Semaglutide Once Weekly in Patients with Type 2 Diabetes. N Engl J Med. 2021; 385: 503-515. [PubMed]

Liraglutideやduraglutideやsemaglutideなど,ヒトGLP-1と類似の分子構造を有するGLP-1受容体作動薬が心血管イベントや腎イベントを減少させることが報じられている。Efpeglenatideは,トカゲから抽出されたexendin-4由来の週1回投与のGLP-1受容体作動薬である。Efpeglenatideの作用機序は,liraglutideなどのGLP-1受容体作動薬と同様であると考えられ,心・腎保護作用を有することが推測される。本報告では,efpeglenatideを用いた前向きの無作為化比較試験(AMPLITUDE-O試験)の結果が報じられている。
Efpeglenatideを,従来の試験より心血管疾患発症リスクの高い心血管疾患の既往または腎疾患を伴う2型糖尿病患者に投与した本試験では,プラセボ群に比べてMACEが27%,腎アウトカムが32%減少した。そして,本試験ではSGLT2阻害薬を試験開始時に15.2%の患者が服用していたが,SGLT2阻害薬の有無に関わらず,すなわちSGLT2阻害薬とは独立して,本薬の心・腎保護作用が認められた。
GLP-1受容体作動薬の心・腎保護作用には,HbA1cの低下・血圧の低下・LDL-コレステロールの低下・eGFRやアルブミン尿の低下などの心・腎イベントの危険因子が軽減されることが大きく寄与しているものと考えられる。そしてefpeglenatideを用いた本試験でも,これらの心・腎イベントの危険因子が減弱することが認められており,さらには,血管内皮細胞機能や微小循環の改善なども関与するものと推測される。
今回のAMPLITUDE-O試験では,従来の試験より心血管疾患発症リスクの高い,すなわち心血管疾患の既往と腎疾患を伴う2型糖尿病患者が21.8%を占めており,今回の結果をもっとリスクの低い2型糖尿病患者にあてはめられるかは,少し議論が残る。ただ,今回の2型糖尿病患者の多くは,心・腎保護に働くガイドラインに沿った標準的な治療を受けており,今回の結果はよりリスクの低い2型糖尿病患者にも施行可能なものと推測される。【片山茂裕

●目的 主要心血管イベント(MACE)発症リスクが高い2型糖尿病患者において,exendin-4由来のGLP-1受容体作動薬efpeglenatideが心腎血管アウトカムに与える影響をプラセボと比較した。
一次エンドポイントは,MACE(非致死性心筋梗塞+非致死性脳卒中+心血管死/全死亡の複合)。
二次エンドポイントは拡大心血管イベント(MACE,冠動脈再疎通療法,不安定狭心症による入院)と複合腎イベント(顕性アルブミン尿の発症,30日以上続く40%以上のeGFRの低下,90日以上続く腎代替療法,30日以上続く15ml/分/1.73 m2未満のeGFR)。
●デザイン ランダム化,単盲検,多施設(344施設,28ヵ国),intention-to-treat解析。
●試験期間 登録期間は2018年5月11日~2019年4月25日。追跡期間中央値は1.81年(四分位範囲1.69~1.98),追跡終了は2020年12月10日。
●対象患者 心血管疾患の既往または腎疾患を伴う2型糖尿病患者4,076例。
平均年齢は64.5歳,女性33.0%,平均HbA1c 8.91%,糖尿病罹病期間15.4年,BMI 32.7 kg/m2,eGFR 72.4 mL/分/1.73 m2。心血管疾患既往は89.6%,eGFR<60 mL/分/1.73m2は31.6%,心血管疾患+eGFR低値は21.8%,ベースライン時のSGLT2阻害薬使用は15.2%。
登録基準:HbA1c>7.0%,18歳以上で心血管疾患(冠動脈疾患,脳卒中,末梢動脈疾患のいずれかと定義)の既往を1つ以上有する患者,あるいは腎疾患(eGFR 25.0~59.9 mL/分/1.73 m2)で心血管危険因子を1つ以上有する男性50歳以上,女性55歳以上の患者。
除外基準:胃不全麻痺,コントロール不良の逆流,長期にわたる吐き気/嘔吐,重度の網膜疾患,膵炎,過去3ヵ月以内におけるGLP-1受容体作動薬/DPP-4阻害薬の使用歴。
●方法 対象患者を,efpeglenatide 4mg群,6 mg群,プラセボ群に1:1:1にランダム化。その際,SGLT2阻害薬の使用有無により層別化した。
efpeglenatide 4 mg群では,2 mg週1回皮下注より開始し,4週後から試験終了まで4 mg週1回皮下注。
efpeglenatide 6 mg群は,2 mg週1回皮下注より開始し,4週の後から4 mgを4週間,その後試験終了まで6 mg週1回皮下注。
本研究の解析では,4 mg群と6 mg群を統合し,efpeglenatide群とした。
●結果 一次エンドポイントであるMACEの発症は,efpeglenatide 群189例(7.0%),プラセボ群125例(9.2%)であり,efpeglenatideのプラセボに対する非劣性および優越性が示された(HR 0.73,95%CI 0.58 to 0.92,非劣性のp<0.001,優越性のp=0.007)。
複合腎アウトカムの発生は,efpeglenatide群353例(13.0%),プラセボ群250例(18.4%)であった(HR 0.68,0.57 to 0.79,p<0.001)。
有害事象については,重篤な消化管イベントがefpeglenatide群(90件[3.3%])でプラセボ群(25件[1.8%])に比べて有意に多く(p=0.009),下痢+便秘+吐き気+嘔吐+腫脹の複合も,efpeglenatide群(32件[1.2%])でプラセボ群(6件[0.4%])に比べて,有意に多かった(p=0.03)。
●結論 2型糖尿病で心血管疾患の既往を有する,または腎疾患+心血管危険因子を1つ以上有する患者において,心血管イベント発生リスクはefpeglenatide群(4mgまたは6 mg皮下注)で,プラセボ群にくらべ,有意に低下した。