編集:片山茂裕 河盛隆造 景山茂 西尾善彦 西村理明 綿田裕孝
2021年11月現在,1269報収載!
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Kahkoska AR, Abrahamsen TJ, Alexander GC, Bennett TD, Chute CG, Haendel MA, Klein KR, Mehta H, Miller JD, Moffitt RA, et al.; N3C Consortium: Association Between Glucagon-Like Peptide 1 Receptor Agonist and Sodium-Glucose Cotransporter 2 Inhibitor Use and COVID-19 Outcomes. Diabetes Care. 2021; 44: 1564-1572. [PubMed]

National COVID Cohort Collaborative(N3C)データベースを用いた後向きコホート研究で,糖尿病患者の使用薬剤とCOVID-19の予後との関連を検討した研究である。投薬されている薬剤による患者背景のデータでは,DPP-4阻害薬投与群で圧倒的に年齢が高かった。シックデイや年齢を考えた場合には,やはり欧米でもDPP-4阻害薬が安全な薬剤として投薬されているのではないかと思わせるデータであった。したがって,さまざまな補正しきれていない交絡因子の影響が否定できないことはこの試験の限界であるが,今後の糖尿病合併COVID-19の治療を考えるうえでは参考になるデータである。【綿田裕孝

●目的 新型コロナウイルス感染症(COVID-19)患者において,感染前におけるGLP-1受容体作動薬(GLP-1RA)およびSGLT2阻害薬(SGLT2i)の使用は,DPP-4阻害薬(DPP-4i)の使用にくらべ,アウトカムを改善するか検証した。
一次エンドポイントは,SARS-CoV-2のPCR検査陽性後60日の死亡率。
二次エンドポイントは,全死亡,PCR検査陽性後14日以内の救急外来受診,入院,人工呼吸器の使用。
●デザイン 後向きコホート,多施設(35施設,米国)。
●試験期間
●対象患者 COVID-19の成人患者12,446例(GLP-1RA使用例6,692例,SGLT2i使用例3,665例,DPP-4i使用例3,551例)*
*SGLT2iおよびGLP-1RAを併用使用していた者は,それぞれの薬剤使用例に含めた。
平均年齢はGLP-1RA使用例55.7歳,SGLT2i使用例57.9歳,DPP-4i使用例64.1歳,女性は59.07%,44.80%,50.10%,白人は64.05%,66.08%,57.36%,BMIは37.2 kg/m2,35.2 kg/m2,32.7 kg/m2,体重は106.7 kg,102.9 kg,92.8 kg,HbA1cは8.0%,8.2%,7.8%。【治療薬】metformin:60.07%,69.74%,60.61%,SU薬:22.22%,29.90%,34.66%,インスリン:55.48%,52.61%,52.63%,スタチン:57.14%,63.60%,64.77%,ACE阻害薬/ARB:56.74%,62.81%,61.24%,remdesivir:6.87%,7.45%,9.77%。【既往歴】心筋梗塞:7.50%,9.90%,11.19%,うっ血性心不全13.58%,17.00%,22.24%,がん/転移がん:8.46%,8.40%,13.02%,認知症/脳卒中:10.36%,11.08%,20.14%,慢性腎臓病/末期腎不全18.47%,16.29%,31.59%,末梢血管疾患:34.46%,30.42%,38.17%。

登録基準:18歳以上(2020年時点),SARS-CoV-2のPCR検査で陽性となった者で,検査を受ける前の24ヵ月間に,1つ以上の血糖降下薬(GLP-1RA,SGLT2i,DPP-4i)の外来処方を受けていた者。
除外基準:SARS-CoV-2のPCR検査陽性前の24ヵ月間に,DPP-4i+SGLT2i併用またはDPP-4i+GLP-1RA併用の外来処方を受けていた者(すなわち,DPP-4iとGLP-1RA,またはDPP-4iとSGLT2iを同時使用していた者)。
●方法 National COVID Cohort Collaborative(N3C)データベースのデータ(2021年2月23日時点[2018年1月~2021年2月])を使用。
感染前のGLP-1RAおよびSGLT2iの使用とアウトカム発生との関連については,targeted maximum likelihood estimation(TMLE)を用いて評価した。
●結果 一次エンドポイントの60日粗死亡率は,GLP-1RA使用例2.06%(138/6,692例),SGLT2i使用例2.32%(85/3,665例),DPP-4i使用例5.67%(199/3,511例)であった。60日死亡リスクは,DPP-4i使用例にくらべ,GLP-1RA使用例(OR 0.54[95%CI 0.37 to 0.80]),SGLT2i使用例(OR 0.66[0.50 to 0.86])ともに有意に低かった。
全死亡リスクは,DPP-4i使用例にくらべ,GLP-1RA使用例(OR 0.56[0.39 to 0.82]),SGLT2i使用例(OR 0.63[0.49 to 0.82])ともに有意に低かった。同じく,DPP-4i使用例にくらべ,PCR検査陽性後14日以内の救急外来受診(OR 0.81[0.69 to 0.96],OR 0.90[0.81 to 0.998])・入院(OR 0.73[0.62 to 0.87],OR 0.82[0.73 to 0.91])はいずれも,GLP-1RA使用例とSGLT2i使用例で有意に少なかった。PCR検査陽性後14日以内の人工呼吸器の使用は,GLP-1RA使用例で有意に低く(OR 0.73[0.55 to 0.97]),SGLT2i使用例ではDPP-4i使用例との有意な差を認めなかった。
●結論 SARS-CoV-2陽性の成人患者において,DPP-4iの使用例は高齢で病状がより悪かったものの,感染前のGLP-1RAおよびSGLT2iの使用は,DPP-4iの使用にくらべ,死亡およびその他の有害アウトカムのオッズ比が低かった。