編集:片山茂裕 河盛隆造 景山茂 西尾善彦 西村理明 綿田裕孝
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Kaku K, Kadowaki T, Seino Y, Okamoto T, Shirakawa M, Sato A, O'Neill EA, Engel SS, Kaufman KD: Efficacy and safety of ipragliflozin in Japanese patients with type 2 diabetes and inadequate glycaemic control on sitagliptin. Diabetes Obes Metab. 2021; 23: 2099-2108. [PubMed]

わが国における2型糖尿病の薬物療法の実態として,第一選択薬としてmetforminと並んでDPP-4阻害薬が多く用いられている。欧米のガイドラインでは,第一選択薬であるmetforminによる効果が不十分な場合,心不全や心血管疾患を有する場合の第二選択薬はSGLT2阻害薬あるいはGLP-1受容体作動薬である。
このような状況の下で,わが国においてもDPP-4阻害薬とSGLT2阻害薬の併用は増えると予想され,併用療法の有効性と安全性の検証が望まれる。
本研究においては,HbA1cの低下はプラセボ対照比較試験,長期併用投与試験いずれにおいても0.8%程度と大きかった。一方,HbA1c7%未満の達成割合は30~40%で,必ずしも十分ではないことが示された。被験者のBMIは26 kg/m2で肥満者が多く,プラセボ対照比較試験終了時にはipragliflozin投与群でプラセボ群よりも1.8 kg減量できていたが,食事/運動療法の基本の重要性が改めて示されたと言えよう。
安全性に関しては従来の報告と大きな変わりはないと解釈される。【景山 茂】

●目的 食事/運動療法およびsitagliptin単剤投与下でコントロール不良の日本人2型糖尿病患者において,ipragliflozin追加投与の有効性と安全性を検討した。
一次エンドポイントは,ベースラインから24週後までのHbA1cの変化(ランダム化比較試験),安全性と忍容性(長期併用投与試験)。
●デザイン ランダム化比較試験(RCT)(二重盲検,プラセボ対照,多施設[25施設,日本],第III相),
長期併用投与試験(オープン,単一群,多施設[12施設,日本],第III相)。
●試験期間 試験期間は2015年11月~2016年11月(RCT),2015年10月~2017年3月(長期併用投与試験)。
●対象患者 食事/運動療法およびsitagliptin(50 mg 1日1回)単剤投与下でコントロール不良の日本人2型糖尿病患者(RCT 143例,長期併用投与試験77例)。
平均年齢はRCTのipragliflozin群61.0歳,プラセボ群60.0歳,長期併用投与試験58.9歳,男性はそれぞれ74.0%,75.7%,64.9%,体重69.8 kg,70.1 kg,69.4 kg,HbA1c 8.1%,8.0%,8.0%,空腹時血糖値158.0 mg/dL,163.0 mg/dL,157.6 mg/dL,2型糖尿病罹病期間9.6年,9.0年,7.8年。
登録基準:20歳以上,食事/運動療法を実施中。Group Aは,sitagliptin 50 mg 1日1回を4週間以上継続し,かつ他の経口血糖降下薬(OHA)を使用しており,HbA1cは6.5~9.0%の患者。Group Bは,sitagliptin 50 mg 1日1回の単剤治療を継続している患者。Group Aの患者では,ipragliflozin投与開始の10週間前からsitagliptin以外のOHAは中止。Ipragliflozin投与開始2週間前においては,Group A,BいずれもHbA1c 7.0~10.0%,FPG≦230 mg/dLとし,これらの基準はRCTおよび長期併用投与試験で共通。
除外基準:1型糖尿病,ケトアシドーシスの既往,不安定な糖尿病網膜症,コントロール不良高血圧(収縮期血圧≧160 mmHg,または拡張期血圧≧100 mmHg),重篤な心血管疾患,活動性肝疾患,腎疾患/泌尿器系障害,悪性新生物/血液疾患,インスリン/チアゾリジンジオンの使用歴(スクリーニング前12週以内),SGLT2阻害薬の使用歴/使用中,全身性ステロイド治療を要する者,ALTまたはAST値が基準値上限の2倍を超える者,C-ペプチド<0.6 ng/mL,eGFR<60 mL/分/1.73m2,ヘモグロビン<11g/dL(男性),<10g/dL(女性),など。
●方法 【RCT】2週間のプラセボrun-in後,OHAの使用歴で層別化し,ipragliflozin群(50 mg 1日1回)(73例),プラセボ群(70例)に1:1にランダム化。24週間経口投与。
【長期併用投与試験】ipragliflozin(50 mg 1日1回)を52週間経口投与。血糖閾値を超えた場合は,オープンラベルでレスキュー治療(glimepiride追加)を実施。
両研究ともに,ipragliflozinは,sitagliptin 50 mg 1日1回への追加投与(ipragliflozin,sitagliptinは試験期間を通じて継続投与)。全例に対し,食事療法/運動療法の継続を推奨し,併存疾患(高血圧,脂質異常症)に対する投与中の薬剤は変更不可(臨床的に必要な場合を除く)とした。
●結果 【RCT】
24週後におけるHbA1cの最小二乗平均は,ipragliflozin群-0.84%(95%CI -0.99 to -0.69),プラセボ群-0.07%(-0.22 to -0.09)であり,群間差は-0.77%(-0.98 to -0.57,p<0.001)であった。HbA1cはipragliflozin群で4週後には減少し,12週後にはほぼ最大の減少となり,その減少は24週後まで維持された。
24週後における最小二乗平均の群間差は,空腹時血糖値は-28.1 mg/dL(95%CI -34.8 to -21.5),食後2時間血糖値は-48.5 mg/dL(-59.6 to -37.5),食事負荷血糖値の合計AUC0-2hは-84.6 mg・hr/dL(-102.6 to -66.6),体重は-1.8 kg(-2.5 to -1.1)であった(いずれもp<0.001)。24週後のHbA1c 7.0%未満の達成割合は,ipragliflozin群31.5%,プラセボ群8.6%であった。
全有害事象は,ipragliflozin群50.7%,プラセボ群65.7%。症候性低血糖(0% vs. 1.4%),尿路感染症(1.4% vs. 1.4%),性器感染症(0% vs. 0%),血液量減少(4.1% vs. 2.9%),多尿/頻尿(2.7% vs. 0%)の発症は,いずれも両群同程度であった。
【長期併用投与試験】
レスキュー治療を実施した患者はなかった。
ベースラインから52週後までのHbA1cの変化は-0.80%(95%CI -0.96 to -0.65),空腹時血糖値の変化は-24.5 mg/dL(-30.2 to -18.8),体重の変化は-2.3 kg(-2.9 to -1.8)であった。HbA1cが7%未満の達成は,9.2%(week 4), 51.4%(week 28),39.7%(week52)であった。
全有害事象は77.9%,薬剤関連の有害事象は24.7%。発症率≧5%の有害事象は,鼻咽頭炎28.6%,頻尿14.3%,背痛14.3%,口渇10.4%,便秘7.8%,インフルエンザ6.5%,関節痛5.2%であった。発症率≧2%の薬剤関連有害事象は頻尿14.3%,口渇7.8%,便秘5,2%であり,いずれも軽症~中等症であった。低血糖症の報告はなかった。
●結論 sitagliptin(50 mg 1日1回)単剤投与下でコントロール不良の日本人2型糖尿病患者において,ipragliflozin(50 mg 1日1回)追加投与は,血糖コントロールを有意に改善し,忍容性も概して良好であった。