編集:片山茂裕 河盛隆造 景山茂 西尾善彦 西村理明 綿田裕孝
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Filippatos G, Bakris GL, Pitt B, Agarwal R, Rossing P, Ruilope LM, Butler J, Lam CSP, Kolkhof P, Roberts L, et al.; FIDELIO-DKD Investigators: Finerenone Reduces New-Onset Atrial Fibrillation in Patients With Chronic Kidney Disease and Type 2 Diabetes. J Am Coll Cardiol. 2021; 78: 142-152. [PubMed]

CKDや2型糖尿病は心房細動(AF)のリスクを増加させ,2型糖尿病患者におけるAFの合併は,非糖尿病患者に比べて死亡率を増加させることが報告されている。CKDを伴う2型糖尿病患者では,AFを発症しやすい心臓のリモデリングが惹起されると考えられる。一方,アルドステロンが高値となり,ミネラロコルチコイド受容体(MR)が活性化されると,心臓のリモデリングが惹起され,AFの病態生理学的機序にも関わると想定されている。MR拮抗薬であるeplerenoneを用いたEMPHASIS-HF試験では,HFrEF患者でAFを減少することが報告されているが,spironolactoneを用いたHFpEF患者ではそのような効果は認められなかった。
今回の報告は,非ステロイド性のMR拮抗薬であるfinerenoneをCKDを伴う2型糖尿病患者に投与したFIDELIO-DKD試験での二次解析である。その結果,プラセボ群でのAFFの発症率は100人・年あたり1.72であり,finerenone投与群では1.33に減少し,finerenoneはAFFの新規発症を有意に抑制したといえる(HR 0.71,p=0.0164)。AFFの既往の有無に関わらず,finerenoneは複合腎アウトカムや複合心血管アウトカムを抑制した。AFは心不全の20~30%の患者にみられ,脳梗塞のリスクを5倍に,死亡のリスクを3.5倍に高めるといわれている。finerenoneがAFFの新規発症を約30%抑制するとすれば,その臨床的意義は極めて大といえる。今後,HFpEF患者で進行中のFINEARTS-HF (Finerenone Trial to Investigate Efficacy and Safety Superior to Placebo in Patients with Heart Failure) trialの結果が待たれる。【片山茂裕

●目的 慢性腎臓病(CKD)を伴う2型糖尿病患者において,finerenoneの新規発症心房細動/粗動(AFF)に対する効果を評価した。さらに,腎・心血管アウトカムに対するfinerenoneの効果をAFF既往の有無別に検討した。
事前設定の探索的アウトカムは,新規発症AFF。
一次エンドポイントは,腎不全+ベースラインからのeGFRの低下≧40%の持続+腎死の複合。
おもな二次エンドポイントは,心血管死+非致死的心筋梗塞+非致死的脳卒中+心不全による入院の複合。
●デザイン FIDELIO-DKD試験(ランダム化,二重盲検,プラセボ対照,多施設,第III相)の二次解析。
●試験期間 追跡期間は中央値2.6年。
●対象患者 CKDを伴う2型糖尿病患者5,674例(AFF既往は461例[8.1%]:finerenone群240例[8.5%],プラセボ群221例[7.8%])。
登録基準:18歳以上,①アルブミン尿の中等度の上昇(UACR 30~<300 mg/g),eGFR 25~<60 mL/分/1.73m2,および糖尿病網膜症の既往歴,あるいは②アルブミン尿の重度の上昇(UACR 300~5,000 mg/g)かつeGFR 25~<75 mL/分/1.73m2のいずれかに合致する者。加えて,スクリーニング前4週以上の最大耐用量のACE阻害薬またはアンジオテンシン受容体拮抗薬による治療を受けており,導入期間およびスクリーニング時の血清カリウム値≦4.8 mEq/Lの者。
除外基準:既知の非糖尿病性腎症,EFの低下した慢性症候性心不全(NYHA心機能分類II~IV),急性腎不全に対する最近の透析歴または腎移植,コントロール不良高血圧。
●方法 ・対象患者をfinerenone群(10または20 mg 1日1回),プラセボ群にランダム化。
地域(北米,欧州,アジア,南米,その他),スクリーニング時のアルブミン尿(中等度上昇,重度上昇),eGFR(25~<45,45~<60,≧60 mL/分/1.73 m2)による層別ランダム割付け。
・新規発症AFFは,AFFの既往歴のない患者で,ECG,電気生理学的検査,運動負荷ECG,または心エコー法により新規に検出されたものとした。治療効果は,層別化因子を調整したCox比例ハザードモデルによりハザード比(HR)を算出し,評価した。
●結果 AFFの既往のない患者における新規発症AFFの発生率は,finerenone群でプラセボ群にくらべ有意に低かった(3.2% vs. 4.5%,1.20 vs. 1.72件/100人・年,HR 0.71[95%CI 0.53 to 0.94],p=0.0164)。
複合腎アウトカムの発生率は,finerenone群でプラセボ群にくらべ有意に低かった(17.8% vs. 21.1%,HR 0.82[95%CI 0.73 to 0.93],p=0.001)。複合腎アウトカムに対するfinerenoneの効果は,AFF既往のある患者(HR 1.13[95%CI 0.71 to 1.79])とAFF既往のない患者(HR 0.81[95%CI 0.71 to 0.91])で有意な差を認めなかった(相互作用p=0.16)。
複合心血管アウトカムの発生率は,finerenone群でプラセボ群にくらべ有意に低かった(13.0% vs. 14.8%,HR 0.86[95%CI 0.75 to 0.99],p=0.034)。複合心血管アウトカムに対するfinerenoneの効果は,AFFの既往のある患者(HR 0.88,95%CI 0.62 to 1.24)とAFFの既往のない患者(HR 0.85,95%CI 0.73 to 0.99)で有意な差を認めなかった(相互作用p=0.85)。
●結論 CKDを伴う2型糖尿病患者において,finerenoneは新規発症AFFのリスクを低下させた。また,ベースライン時のAFF既往の有無にかかわらず,finerenoneは腎・心血管イベントのリスクを低下させた。