編集:片山茂裕 河盛隆造 景山茂 西尾善彦 西村理明 綿田裕孝
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Filippatos G, Anker SD, Agarwal R, Pitt B, Ruilope LM, Rossing P, Kolkhof P, Schloemer P, Tornus I, Joseph A, et al.; FIDELIO-DKD Investigators: Finerenone and Cardiovascular Outcomes in Patients With Chronic Kidney Disease and Type 2 Diabetes. Circulation. 2021; 143: 540-552. [PubMed]

先に発表されたFIDELIO-DKD試験で,finerenoneは腎複合エンドポイントを有意に18%低下させた。また,副次評価項目である心血管複合エンドポイントを有意に14%低下させた。2型糖尿病を合併するCKD患者の治療で,RAS阻害薬とMR拮抗薬の併用療法により腎保護作用が証明され,副次的エンドポイントではあるが心血管イベントの抑制効果も認められたことの臨床的意義は極めて大きいといえる。今回の報告は,FIDELIO-DKD試験に参加した対象を,CVD既往の有無で層別解析をしたサブ解析である。
その結果,CVD既往の有無に関わらず,心血管複合エンドポイントに対するfinerenoneの効果に差はなかった。しかしながら,腎複合エンドポイントに対するfinerenoneの効果は,CVD既往歴を有する患者でCVD既往歴のない患者より有意に大であった。この結果,CKDを有する2型糖尿病患者で,RAS阻害薬とMR拮抗薬であるfinerenoneの併用療法は,CVDの一次予防にも二次予防にも有効であることが示されたといえる。腎複合エンドポイントに対するfinerenoneの効果が,CVD既往歴のない患者に比してCVD既往歴を有する患者でより大であった理由は明らかではない。その理由として,CVD既往歴を有する患者では,原発性アルドステロン症も含めてアルドステロン活性が高い患者の比率が高い,血管系でのMRが活性化されているなどの可能性が考えられる。しかしながら,finerenoneのアルブミン尿の減少やeGFRの傾きの緩徐化などへの影響は,CVD既往歴の有無に関わらず,みられている。安全性に関しても,finerenoneを中止せざるをえないような重篤な高カリウム血症の頻度は,CVDの既往の有無に関わらず低かった。
今後,2型糖尿病を合併するCKD患者の治療で,RAS阻害薬とMR拮抗薬の併用療法は,CVDイベントを減少させる新しい治療のオプションになりうるであろう。【片山茂裕

●目的 慢性腎臓病(CKD)を伴う2型糖尿病患者において,心血管/腎不全アウトカムに対する非ステロイド性選択的ミネラルコルチコイド受容体(MR)拮抗薬finerenoneの効果を心血管疾患(CVD)既往の有無別に検討した。
複合心血管アウトカムは,心血管死+非致死性心筋梗塞(MI)+非致死性脳卒中+心不全による入院。
複合腎アウトカムは,腎不全(90日超の長期透析,腎移植,少なくとも4週間の間隔で再に確認されたeGFR<15mL/分/1.73m2)+ベースラインからのeGFR低下≧40%が4週以上持続+腎死。
●デザイン FIDELIO-DKD試験(ランダム化,二重盲検,プラセボ対照,多施設[48ヵ国],第III相)のサブ解析。
●試験期間 登録期間は2015年9月~2018年6月。追跡期間中央値は2.6年。
●対象患者 CKDを伴う2型糖尿病患者5674例。
登録基準:18歳以上,①アルブミン尿の持続的かつ中等度の上昇(ACR 30~<300 mg/g),eGFR 25~<60 mL/分/1.73m2,および糖尿病性網膜症の既往歴,あるいは②アルブミン-クレアチニン比(UACR)30~5000mg/gかつeGFR 25~<75mL/分/1.73m2のいずれかに合致する患者。加えて,スクリーニング前4週以上の最大耐用量のACE阻害薬またはアンジオテンシン受容体拮抗薬による安定した治療を受けており,血清カリウム値≦4.8mEq/Lの者。
除外基準:既知の非糖尿病性腎症,EFの低下した慢性症候性心不全,急性腎不全に対する最近の透析歴または腎移植,コントロール不良高血圧。
●方法 ・対象患者をfinerenone群,プラセボ群に1:1にランダム化。
地域(北米,南米,欧州,アジア,その他),eGFR(25~<45,45~<60,≧60mL/分/1.73m2),UACR(30~<300,≧300mg/g)による層別ランダム割付け。
・層別化Cox回帰モデルによりハザード比(HR)を算出し,CVD既往の有無別に治療効果を評価。
・CVD既往は,冠動脈疾患(MI,冠血行再建術,主要冠動脈1枝以上での血管造影で確認された≧50%の狭窄),虚血性脳卒中,または末梢動脈疾患のいずれかと定義。
●結果 finerenone群ではプラセボ群にくらべ,複合心血管アウトカムの発生率が有意に低かった(13.0% vs. 14.8%,HR 0.86[95%CI 0.75 to 0.99],p=0.034)。複合心血管アウトカムに対するfinerenoneの効果は,CVD既往を有する患者(HR 0.85[95%CI 0.71 to 1.01])と有さない患者(HR 0.86[95%CI 0.68 to 1.08])で有意差を認めなかった(相互作用p=0.85)。
finerenone群ではプラセボ群にくらべ,複合腎アウトカムの発生率が有意に低かったが,finerenoneの効果はCVD既往を有する患者(HR 0.70[95%CI 0.58 to 0.84])で有さない患者(HR 0.94[95%CI 0.81 to 1.10])より有意に大きかった(相互作用p=0.016)。
治療により出現した有害事象の発生率は,CVD既往の有無にかかわらず両群で同等であった(CVD既往のある患者:finerenone群22.1% vs. プラセボ群16.7%,CVD既往のない患者:23.5% vs. 15.1%)。高カリウム血症による早期治療中止率は低かった(CVD既往のある患者:finerenone群2.3% vs. プラセボ群0.8%,CVD既往のない患者:2.2% vs. プラセボ群1.0%)。
●結論 CKDを伴う2型糖尿病患者において,finerenoneは複合心血管アウトカムの発生率を低下させ,その効果はCVD既往とは独立したものであった。