編集:片山茂裕 河盛隆造 景山茂 西尾善彦 西村理明 綿田裕孝
2021年6月現在,1259報収載!
全トライアルリスト
[HOMEに戻る]
Hu Y, Zhang X, Ma Y, Yuan C, Wang M, Wu K, Tabung FK, Tobias D, Hu FB, Giovannucci E, et al.: Incident Type 2 Diabetes Duration and Cancer Risk: A Prospective Study in Two US Cohorts. J Natl Cancer Inst. 2021; 113: 381-389. [PubMed]

2型糖尿病が様々ながんのリスク因子となることは,複数の疫学研究から明らかにされている。本研究のユニークな点は,糖尿病患者の罹病期間別にがんの発症頻度を検討した点であり,その結果,発症後8年まではがんの発症率が有意に高く,さらに,そのあたりまではCペプチドレベルも高いという結果が得られた。
本研究では,明らかな因果関係に関してはまったく結論づけられていないが,インスリン抵抗性が糖尿病によるがんの発症率の増加のメカニズムに関与する可能性を支持する。【綿田裕孝

●目的 2型糖尿病の罹病期間とがん発症リスクとの関連を検討した。
●デザイン 2つの前向きコホート研究(Nurses’ Health Study[NHS],Health Professionals Follow-up Study[HPFS]),横断研究。
●試験期間 追跡期間はNHS 1978~2014年,HPFS 1988~2014年。
●対象患者 がんおよび糖尿病のないNHSの参加者113,429例,HPFSの参加者45,604例。
追跡時の2型糖尿病の有無による年齢調整患者背景:平均年齢は,NHSの非糖尿病58.7歳,糖尿病68.0歳,HPFSの非糖尿病64.5歳,糖尿病71.3歳,BMIはそれぞれ25.6 kg/m2,30.6 kg/m2,25.9 kg/m2,28.7 kg/m2,白色人種は96.9%,94.3%,95.1%,91.6%,高血圧は32.2%,66.0%,36.5%,68.2%,高コレステロールは35.6%,58.1%,44.4%,68.4%,糖尿病の家族歴は24.4%,49.1%,21.1%,38.8%,がんの家族歴は45.6%,43.9%,33.5%,31.9%,身体活動量中央値(MET-時間/週)は9.8,6.7,23.6,18.1,アルコール摂取量中央値は2.0 g/日,0.6 g/日,6.5 g/日,4.0 g/日。
●方法 2型糖尿病の罹病期間を0~2.0年,2.1~4.0年,4.1~6.0年,6.1~8.0年,8.1~10.0年,10.1~15.0年,15.0年超にわけて,がん発症のハザード比(HR)を算出した(人口動態,生活様式,食事,BMIで調整)。
2型糖尿病の診断を受けたという報告をした患者には補足質問票(症状,診断検査,低血糖治療)を送り,その回答により確定診断を得た。1998年以前の診断はNational Diabetes Data Group基準を用いて確認し,1998年以降に診断された患者については,米国糖尿病協会(ADA)に基づき,空腹時血糖値7.0 mmol/Lを基準とした。さらに,2010年1月以降に診断された患者については,基準をHbA1c 6.5%以上とした。
がんについては,非黒色腫皮膚がんおよび非致死性前立腺がんを除外したICD-9コードの140~239の全てのがんを含めた。がんの診断は,追跡時の質問票で,がん診断の報告があった患者の診療記録で確認した。
●結果 多変量調整後,2型糖尿病患者の非糖尿病者に対する統合HRは,全がんで1.21(95%CI 1.16 to 1.26),肥満に関連するがんで1.28(1.21 to 1.35),糖尿病に関連するがんで1.25(1.19 to 1.32)であった。また,個々のがんで2型糖尿病と有意に関連したのは,大腸がん(HR 1.21,95%CI 1.06 to 1.38),肺がん(HR 1.27,1.12 to 1.45),膵がん(HR 2.07,1.70 to 2.52),食道がん(HR 1.85,1.28 to 2.69),肝がん(HR 3.39,2.24 to 5.12),甲状腺がん(HR 1.49,1.03 to 2.15),乳がん(HR 1.26,1.17 to 1.37),子宮内膜がん(HR 1.26,1.06 to 1.50)であった。
全がんのHRは,2型糖尿病の罹病期間が0~2.0年でHR 1.29(95%CI 1.19 to 1.38),2.1~4.0年で1.13(1.03 to 1.24),4.1~6.0年で1.28(1.17 to 1.40),6.1~8.0年で1.37(1.25 to 1.50),8.1~10.0年で1.21(1.09 to 1.35),10.1~15.0年で1.16(1.07 to 1.26),15.0年超で1.04(0.95 to 1.14)であった。複合がん,個々のがんともに,その発症リスクは,2型糖尿病の罹病期間8年までに最大となり,それ以降の増加はみられなかった。
横断解析では,2型糖尿病の罹病期間が8年までの患者で,非2型糖尿病にくらべ,血漿Cペプチド値が高かった。一方,HbA1cについては,罹病期間が15年までの患者で高かった。
●結論 2型糖尿病の発症は,がん発症高リスクと関連し,そのリスクは2型糖尿病の罹病期間8年で最大となった。血漿Cペプチド値も,糖尿病の罹病期間との同様の関連が示された。本研究結果により,がん発症における高インスリン血症の役割が示唆された。