編集:片山茂裕 河盛隆造 景山茂 西尾善彦 西村理明 綿田裕孝
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Packer M, Anker SD, Butler J, Filippatos G, Pocock SJ, Carson P, Januzzi J, Verma S, Tsutsui H, Brueckmann M, et al.; EMPEROR-Reduced Trial Investigators: Cardiovascular and Renal Outcomes with Empagliflozin in Heart Failure. N Engl J Med. 2020; 383: 1413-1424. [PubMed]

本研究は,DAPA-HFに続き,糖尿病のみならず非糖尿病の心不全患者においてもSGLT2阻害薬empagliflozinは有効であることを示した。本研究のデザイン論文(Eur J Heart Fail 2019; 21: 1270-1278)によると,一次エンドポイントの発生が少なくとも15%/年となるよう選択基準を定めており,EFが高いほどNT-proBNPを高く設定している。
dapagliflozinと同様にempagliflozinも心アウトカムのみならず腎アウトカムを,糖尿病,非糖尿病を問わず改善したことから,血糖改善を介さない作用機序の存在を示唆している。
一次エンドポイント及び心不全による入院について,両群のカプラン・マイヤー曲線は試験開始早期から乖離しており,利尿効果によることを示唆していると解釈できる。また,eGFRはempagliflozin群ではいったん低下し,その後の低下は緩やかになっており,これはtubuloglomerular feedbackにより説明が可能と思われる。しかし一方では,SGLT2阻害薬の心腎保護作用に関しては,SGLT2阻害薬はケトン体産生を増加させ,心筋および腎組織での代謝の変化が関与していることも提唱されており,今後の検討が待たれる。
dapagliflozin(フォシーガ®)は既に慢性心不全の適応が認められており,empagliflozin(ジャディアンス®)は本研究に基づいて慢性心不全の効能取得を申請している。【景山 茂

●目的 2型糖尿病の有無を問わず,左室駆出率が低下した心不全(HFrEF)患者において,SGLT2阻害薬empagliflozinの効果を検討した。
一次エンドポイントは,心血管死+心不全による入院の複合。
二次エンドポイントは,心不全による全(初回および再)入院,eGFRの変化率。
●デザイン ランダム化,二重盲検,プラセボ対照,多施設(520施設,20ヵ国),intention-to-treat解析。
●試験期間 登録期間は2017年4月~2019年11月,追跡期間中央値は16ヵ月。
●対象患者 NYHA心機能分類II~IVでEF≦40%のHFrEF患者3,730例。
平均年齢はempagliflozin群67.2歳,プラセボ群66.5歳,女性23.5%,24.4%,NYHA心機能分類(II: 75.1%,75.0%,III: 24.4%,24.4%,IV: 0.5%,0.6%),平均収縮期血圧122.6 mmHg,121.4 mmHg,EF(平均: 27.7%,27.2%,≦30%の割合: 71.8%,74.6%),NT-proBNP(中央値: 1,887 pg/mL,1,926 pg/mL,≧1,000 pg/mLの割合: 78.6%,79.7%),eGFR(平均: 61.8 mL/分/1.73m2,62.2 mL/分/1.73m2,<60mL/分/1.73m2の割合: 48.0%,48.6%)。既往歴: 糖尿病49.8%,49.8%,高血圧72.4%,72.3%,心房細動35.6%,37.8%,12ヵ月以内の心不全による入院: 31.0%,30.7%。アンジオテンシン受容体ネプリライシン阻害薬の使用18.3%,20.7%。
登録基準:18歳以上。少なくとも3ヵ月のクラスⅡ,Ⅲ,Ⅳの慢性心不全があり,EF≦40%:①EF≦30%のときはNT-proBNP≧600 pg/mL,②EF 31~35%のときはNT-proBNP≧1000 pg/mL,③EF 36~40%のときはNT-proBNP≧2500 pg/mL,④EF≦40%でスクリーニング前12ヵ月以内に心不全で入院の既往がある場合はNT-proBNP≧600 pg/mL。心房細動を有する場合は,①~④いずれの場合もNT-proBNPの基準値を上記の2倍とした。
●方法 対象患者をempagliflozin群(10 mg 1日1回)(1,863例),プラセボ群(1,867例)にランダム化。
地域(北米,ラテンアメリカ,欧州,アジア,その他),糖尿病の状態,eGFR(<または≧ 60 mL/分/1.73m2)による層別ランダム化を実施。
全患者が心不全の標準治療を継続。
●結果 治療の早期中止はempagliflozin群303例(16.3%),プラセボ群335例(18.0%)。
一次エンドポイントである心血管死+心不全による入院の複合エンドポイントの発生は,empagliflozin群361例(19.4%),プラセボ群462例(24.7%)と有意な群間差を認めた(ハザード比[HR]0.75[95%CI 0.65 to 0.86],p<0.001)。このempagliflozinによる一次エンドポイント抑制効果は,糖尿病の有無にかかわらず,同様に認められた(糖尿病患者: HR 0.72[0.60 to 0.87],非糖尿病患者: HR 0.78[0.64 to 0.97])。心不全による入院はempagliflozin群(388件)でプラセボ群(553件)にくらべ,有意に少なかった(HR 0.70[0.58 to 0.85],p<0.001)。eGFRの変化率(/年)は,empagliflozin群-0.55±0.23 mL/分/1.73m2,プラセボ群-2.28±0.23 mL/分/1.73m2で,有意な群間差を認めた(群間差1.73 mL/分/1.73m2/年[1.10 to 2.37],p<0.001)。また,empagliflozin群ではプラセボ群にくらべ,複合腎アウトカム(慢性透析+腎移植+eGFRの持続的減少の複合)の発生リスクが有意に低かった(HR 0.50[0.32 to 0.77])。
有害事象については,非複雑性性器感染症がempagliflozin群で多かった。
●結論 心不全に対する至適治療下のHFrEF患者において,2型糖尿病の有無を問わず,empagliflozin群ではプラセボ群にくらべ,心血管死+心不全による入院のリスクが有意に低かった。