編集:片山茂裕 河盛隆造 景山茂 西尾善彦 西村理明 綿田裕孝
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Anker SD, Butler J, Filippatos G, Khan MS, Marx N, Lam CSP, Schnaidt S, Ofstad AP, Brueckmann M, Jamal W, et al.: Effect of Empagliflozin on Cardiovascular and Renal Outcomes in Patients With Heart Failure by Baseline Diabetes Status: Results From the EMPEROR-Reduced Trial. Circulation. 2021; 143: 337-349. [PubMed]

本研究は,DAPA-HFに続き,糖尿病のみならず非糖尿病のHFrEF患者においても一次エンドポイント(心血管死+心不全による入院の複合)の改善にSGLT2阻害薬が有効であり,この効果はHbA1cのベースラインの値に依らないことを示した。また,empagliflozinは,糖尿病を有さない患者のHbA1cを低下させず,重篤な低血糖を増加させることもなかった。本研究結果は,HFrEF患者に対してempagliflozinを用いる際には,血糖コントロール状況の判断は必ずしも必要ないことを示している。
また,dapagliflozinと同様に,empagliflozinも心アウトカムのみならず腎アウトカムを,糖尿病,非糖尿病を問わずに改善した。
しかし,層別解析の結果をみると,一次エンドポイント,重要な二次エンドポイント,心不全による初回入院については,正常血糖,前糖尿病,糖尿病の順に効果が大きくなっているようにみえる。DAPA-HFでは,糖尿病と非糖尿病という分類で,前糖尿病という分類はされておらず,このような分類では一次エンドポイントに対する効果に糖尿病と非糖尿病の差は認められない。
臨床試験では,サブ解析の各群についてまで統計学的に有意な結果を得るようにはサンプルサイズの設計はされていない。今後,非糖尿病者や正常血糖者についてのさらなる確認が望まれる。
dapagliflozin(フォシーガ®)はすでに慢性心不全の適応が認められており,empagliflozin(ジャディアンス®)は本研究に基づいて慢性心不全の効能取得を申請している。【景山 茂】

●目的 左室駆出率が低下した心不全(HFrEF)患者において,empagliflozinの心不全および腎イベントに対する有効性と安全性をベースライン時の糖尿病の有無およびHbA1c値により検討した。
一次エンドポイントは,心血管死+心不全による入院の複合。
二次エンドポイントは,心不全による全(初回および再)入院,eGFRの変化率。
●デザイン EMPEROR-Reduced試験(ランダム化,二重盲検,プラセボ対照,多施設[520施設,20ヵ国],intention-to-treat解析)のサブ解析。
●試験期間 登録期間は2017年4月25日~2019年11月8日,追跡期間中央値は16ヵ月。
●対象患者 HFrEF患者3,730例。
糖尿病患者は1,856例,非糖尿病患者は1,874例(前糖尿病患者1,268例,正常血糖患者606例)。平均HbA1cは糖尿病患者7.4±1.6%,前糖尿病患者5.9±0.2%,正常血糖患者5.3±0.3%。
登録基準:18歳以上。少なくとも3ヵ月のクラスⅡ,Ⅲ,Ⅳの慢性心不全があり,EF≦40%*
*①EF≦30%のときはNT-proBNP≧600 pg/mL,②EF 31~35%のときはNT-proBNP≧1000 pg/mL,③EF36~40%のときはNT-proBNP≧2500 pg/mL,④EF≦40%でスクリーニング前12ヵ月以内に心不全で入院の既往がある場合はNT-proBNP≧600 pg/mL。心房細動を有する場合は,①~④いずれの場合もNT-proBNPの基準値を上記の2倍とした。(Eur J Heart Fail 2019; 21: 1270-1278
除外基準:症候性低血圧,収縮期血圧<100 mmHgまたは≧180 mmHg,eGFR<20 mL/分/1.73 m2
●方法 対象患者をempagliflozin群(10 mg 1日1回),プラセボ群にランダム化。
血糖状態(糖尿病,前糖尿病,正常血糖),地域(北米,ラテンアメリカ,欧州,アジア,その他),eGFR(>または≦ 60 mL/分/1.73m2)による層別ランダム化を実施。
全患者が心不全の標準治療を継続。
●結果 一次エンドポイントである心血管死+心不全による入院の複合の発生リスクは,empagliflozin群でプラセボ群にくらべ,糖尿病患者(ハザード比[HR]0.72[95%CI 0.60 to 0.87]),非糖尿病患者(HR 0.78[0.64 to 0.97])ともに有意に減少し,糖尿病の有無による影響はみられなかった(p for interaction=0.57)。
また,心不全による全入院(糖尿病:HR 0.65[0.50 to 0.85],非糖尿病:HR 0.76[0.57 to 1.01],p for interaction=0.44),eGFRの変化率(HR 2.21[1.31 to 3.10],HR 1.27[0.38 to 2.16],p for interaction=0.15)についても,empagliflozin群のプラセボ群に対する効果は,糖尿病患者と非糖尿病患者で同様であった。
また,これらの結果は,前糖尿病患者と正常血糖患者の比較でも差を認めなかった。
連続変数の検討では,ベースライン時のHbA1cはempagliflozin(vs.プラセボ)の一次エンドポイントに対する効果に影響しなかった(p for interaction=0.40)。また,empagliflozinは前糖尿病患者および正常血糖患者のHbA1cを低下させず,低血糖リスクも増加させなかった。
●結論 HFrEF患者において,empagliflozin群ではプラセボ群にくらべ,腎心血管アウトカムを有意に改善した。その効果は,幅広いHbA1c値で認められ,ベースラインの糖尿病状態とは独立したものであった。