編集:片山茂裕 河盛隆造 景山茂 西尾善彦 西村理明 綿田裕孝
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Zannad F, Ferreira JP, Pocock SJ, Anker SD, Butler J, Filippatos G, Brueckmann M, Ofstad AP, Pfarr E, Jamal W, et al.: SGLT2 inhibitors in patients with heart failure with reduced ejection fraction: a meta-analysis of the EMPEROR-Reduced and DAPA-HF trials. Lancet. 2020; 396: 819-829. [PubMed]

SGLT2阻害薬が,糖尿病のみならず非糖尿病の左室駆出率が低下した心不全患者の症状悪化軽減に有効であることが示された。この機序が,すでに用いられている薬剤による利尿効果増強によるものであるのか,非糖尿病患者においてもケトン体産生を増加させ,それが心筋のsuper fuelとなっているのかなど,今後発表されるであろう検討結果が待たれる。
一方臨床の現場では,かかる患者に対して,ACE阻害薬,ARB,MRA,β遮断薬,利尿薬などの薬剤が投与され,絶えず症状を勘案し,増量や追加が行われている。どのような例でSGLT2阻害薬をさらに追加すべきなのか,副作用の出現も勘案し,早急に検討していかなければならない。【河盛隆造

●目的 糖尿病の有無を問わない,左室駆出率が低下した心不全(HFrEF)患者において,SGLT2阻害薬(dapagliflozin,empagliflozin)の心血管アウトカムに対する効果を検討した。
一次エンドポイントは,全死亡。
二次エンドポイントは,心血管死,心不全による初回入院+心血管死の複合,心不全による初回入院,心不全による再入院+心血管死の複合,腎複合アウトカム(持続的eGFR低下≧50%+末期腎不全+腎死の複合)。
●デザイン 2つの大規模心血管アウトカム試験(EMPEROR-Reduced,DAPA-HF)のメタ解析。
●試験期間 追跡期間中央値は,EMPEROR-Reduced 16ヵ月,DAPA-HF 18ヵ月。
●対象患者 ナトリウム利尿ペプチドが高値でLVEF≦40%の症候性HFrEF患者8,474例。平均年齢は,EMPEROR-Reducedのempagliflozin群67.2歳,プラセボ群66.5歳,DAPA-HFのdapagliflozin群66.2歳,プラセボ群66.5歳,男性はそれぞれ76.5%,75.6%,76.2%,77.0%,平均LVEFは27.7%,27.2%,31.2%,30.9%,糖尿病は49.8%,49.8%,45.3%,44.9%。
●方法 EMPEROR-Reducedではempagliflozin群(10mg/日を経口投与:1,863例)とプラセボ群(1,867例),DAPA-HFではdapagliflozin群(10mg/日を経口投与:2,373例)とプラセボ群(2,371例)にランダム化。
DAPA-HFは試験レベルのデータ,EMPEROR-Reducedは患者レベルのデータを使用。
メタ解析は,初回イベントまでの期間についてはCox比例ハザードモデルにより算出したハザード比(HR),再発イベントについてはLin-Wei-Yang-Yingモデルにより算出した率比(RR)に基づいて実施した。
2型糖尿病の有無,性別,アンジオテンシン受容体ネプリライシン阻害薬(ARNI)治療の有無,NYHA心機能分類(IIまたはIII~IV),人種(白人,黒人,アジア人),地域(北米,ラテンアメリカ,欧州,アジア),年齢(≦65歳,>65歳)(<55歳,55~64歳,65~74歳,≧75歳]),心不全による入院歴の有無,eGFR(<60 vs. ≧60mL/分/1.73m2),BMI(<30 vs. ≧30kg/m2)のサブグループ解析を実施。
●結果 SGLT2阻害薬による統合HRは,全死亡で0.87(95%CI 0.77 to 0.98,p=0.018),心血管死で0.86(95%CI 0.76 to 0.98,p=0.027),心血管死+心不全による初回入院の複合で0.74(95%CI 0.68 to 0.82,p<0.0001),心不全による初回入院で0.69(95%CI 0.62 to 0.78,p<0.0001),腎複合アウトカムで0.62(95%CI 0.43 to 0.90,p=0.013)であった。また,心不全による全入院+心血管死の複合についてのSGLT2阻害薬による統合RRは0.75(95%CI 0.68 to 084,p<0.0001)であった。いずれも試験間における異質性は認められなかった。
年齢,性別,2型糖尿病,ARNI治療,eGFRのサブグループ解析ではSGLT2阻害薬の治療効果は一貫していたが,NYHA心機能分類(p=0.0087)と人種(p=0.0063)については治療とサブグループの相互作用を認めた。
●結論 HFrEF患者において,empagliflozinとdapagliflozinの心不全による入院の抑制効果は一貫しており,これらのSGLT2阻害薬はさらに腎アウトカムを改善し,全死亡と心血管死を減少させる可能性が示唆された。