糖尿病と高血圧に罹患していることが,新型コロナウイルス(COVID-19)の重症度と関連しているか否かをメタ解析で検討した論文である。
2020年3月末までの論文を対象としている点に留意する必要があるが,糖尿病とCOVID-19の重症度,そしてCOVID-19による死亡,それぞれと有意な関連があることが示され,なおかつ研究間の異質性もないことが示された。日本においても報道等で周知されているように,糖尿病はやはり,COVID-19における予後規定因子であることがメタ解析でも示されたことになる。
COVID-19の収束がいつになるのか予想できないが,2020年3月以降,さらに知見が集積し,その治療法に様々な薬剤がもちいられ,新たな治療法が検討されている。さらには,2020年末からワクチン接種も開始された。昨今,DPP-4阻害薬がCOVID-19の重症化を予防する可能性があるとの報告も登場した。
このように,COVID-19を取り巻く環境が日々変わりゆくなかで,本論文のような報告が数ヵ月ことにアップデートされることを強く望む。【西村理明】
●目的 | 新型コロナウイルス感染症(COVID-19)患者において,併存慢性疾患(とくに高血圧と糖尿病)や高齢は,重症度および死亡の危険因子であると考えられている。 本研究では,糖尿病および高血圧とCOVID-19の重症度との関連を検討した。 |
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●デザイン | メタ解析 |
●試験期間 | - |
●対象患者 | COVID-19患者2,018例(男性1,175例,女性840例):7研究(コホート研究3件,ケースシリーズ4件)。 論文の採用基準:COVID-19の重症度別に糖尿病と高血圧の有病率を記載している研究。 論文の除外基準:重複文献,レビュー,エディトリアル,症例報告,レター,メタ解析,プロトコル,英語以外の言語の研究,必要データを報告していない研究。 |
●方法 | ・PubMed,Medline,およびCochraneデータベースより,以下の検索語を用いて検索(2020年3月31日まで)。 “COVID-19 and diabetes”,“2019 novel coronavirus and diabetes”,“Covid-19 and hypertension” ・COVID-19重症度は,呼吸困難(安静時に≧30拍/分),平均酸素飽和度≦93%,動脈血酸素分圧/吸入酸素濃度≦300 mmHgの場合と定義した。 ・Mantel-Haenszelランダム効果メタアナリシスを用いてオッズ比(OR)を統合。研究間の異質性は,カイ二乗ベースCochrane Q統計量(p<0.1の場合に異質性あり)およびI2統計量(>50%の場合に中等度異質性)を用いて評価。 |
●結果 | ・糖尿病とCOVID-19重症度との関連 生存例では死亡例に比べ,糖尿病の割合が低かった(OR 0.56,95%CI 0.35 to 0.90,p=0.017;I2=0.0%,p for heterogeneity=0.385)(2試験[ケースシリーズ1件,コホート研究1件])。 糖尿病とICU治療との有意な関連は認められなかったが(OR 0.78,95%CI 0.06 to 9.34,p=0.842;I2=75.9%,p for heterogeneity=0.042)(ケースシリーズ2件),糖尿病とCOVID-19重症度との有意な関連が認められた(OR 1.66,95%CI 1.20 to 2.30,p=0.002;I2=0.0%,p for heterogeneity=0.720)(コホート研究2件,ケースシリーズ1件)。 ・高血圧とCOVID-19重症度との関連 生存例は非生存例に比し,高血圧の割合が低かった(OR 0.49,95%CI 0.34 to 0.73,p<0.001;I2=0.0%)。また,高血圧とICUでの治療(OR 0.42,95%CI 0.22 to 0.81,p=0.009;I2=0.0%)および高血圧とCOVID-19重症度との有意な関連が認められた(OR 2.69,95%CI 1.27 to 5.73,p=0.01;I2=52.4%)。 |
●結論 | 糖尿病と高血圧は,COVID-19患者の重症度に悪影響を及ぼすことが示された。 |
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糖尿病トライアルデータベースは2001年にオープンしました。現在までに,1252件のトライアルを収載しています。