編集:片山茂裕 河盛隆造 景山茂 西尾善彦 西村理明 綿田裕孝
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Solerte SB, D'Addio F, Trevisan R, Lovati E, Rossi A, Pastore I, Dell'Acqua M, Ippolito E, Scaranna C, Bellante R, et al.: Sitagliptin Treatment at the Time of Hospitalization Was Associated With Reduced Mortality in Patients With Type 2 Diabetes and COVID-19: A Multicenter, Case-Control, Retrospective, Observational Study. Diabetes Care. 2020; 43: 2999-3006. [PubMed]

DPP-4阻害薬が,何故COVID-19感染後の予後の改善に有効であったのか? DPP-4は炎症シグナルのメディエーターであり,サイトカインストームを拡げることが知られている。さらにSARS-COV-2が細胞内に侵入するのをDPP-4が促進するという。今回の成績は,DPP-4阻害薬が,抗炎症作用を高め,ウイルス侵入後のサイトカインストームを防止し,重症例での予後改善に効果を発揮した,と捉えられよう。
この成績から,重症化が懸念されるCOVID-19罹患例に対して,糖尿病の有無にかかわらず,DPP-4阻害薬が投与されることになるのではなかろうか。【河盛隆造

●目的 2型糖尿病を有する新型コロナウイルス感染症(COVID-19)患者に対して,DPP-4阻害薬が有用である可能性が感染拡大地域からの報告により示唆され,2型糖尿病患者における標準治療への追加としてsitagliptinの使用が検討されるようになった。さらにイタリア糖尿病学会は,COVID-19で入院中の2型糖尿病患者では,標準治療としてのインスリン治療に加えてDPP-4阻害薬を使用することが有益である可能性についての声明を発表した。
本研究では,COVID-19で入院した2型糖尿病患者において,標準治療へのsitagliptin追加の臨床的/生化学的アウトカムを検討した。
一次エンドポイントは,死亡/退院。
二次エンドポイントは,集中治療室への入室,人工呼吸器の使用,入院時および追跡時の体外式膜型人工肺(ECMO)の必要性,臨床的改善(退院および/または7ポイントからなる修正順序尺度スコアの低下≧2ポイント)。
●デザイン 症例対照研究,多施設(7施設,イタリア)。
●試験期間 追跡期間は30日。
●対象患者 2020年3月1日~4月30日にCOVID-19で入院した(肺炎を認め,環境大気呼吸下または酸素サポート施行下での酸素飽和度<95%),2型糖尿病の連続患者338例(sitagliptin投与169例,各施設で年齢と性別をマッチングさせたsitagliptin非投与の169例)。
平均年齢はsitagliptin投与患者69歳,非投与患者69歳,≧70歳の割合はそれぞれ54%,53%,男性73%,68%,糖尿病罹病期間9.2年,8.7年。併存疾患:心血管疾患40%,38%,慢性腎臓病21%,28%,高血圧74%,67%。血糖降下薬投与率:metformin 44%,39%,インスリン 22%,30%,ACE阻害薬 38%,50%,β遮断薬 33%,56%,利尿薬 38%,52%。
登録基準:ほぼ正常の肝機能(AST値およびALT値の上昇が最大4倍),eGFR≧30mL/分/1.73m2
●方法 全患者が入院時,2型糖尿病に対する現状の治療(DPP-4阻害薬を含む)を中止し,インスリン(静注/皮下注)治療(標準治療)に切り替えた。目標血糖値は140~180 mg/dL(100 mg/dLに達した場合はインスリンを中断)。これに加え,sitagaliptin非投与例を年齢と性別をマッチングさせて登録し,sitagliptin投与例と比較検討した。
sitagliptinの用量はeGFRにより調整(eGFR≧45 mL/分/1.73 m2の場合は100 mg 1日1回,eGFR 30~45 mL/分/1.73 m2の場合は50 mg 1日1回)。
●結果 一次エンドポイントである30日後の死亡/退院のリスクは,sitagliptin投与患者で非投与患者にくらべ,有意に低かった(ハザード比0.44[95%CI 0.29 to 0.66],p=0.0001)。死亡は,sitagliptin投与患者31例(18%),非投与患者63例(37%)と有意な差を認めた(p=0.0001)。
集中治療室への入室(HR 0.51[95%CI 0.27 to 0.95],p=0.03)および人工呼吸器の使用(HR 0.27[0.11 to 0.62],p=0.003)のリスクは,sitagliptin投与患者で非投与患者にくらべて有意に低かった。ECMOの必要性は,有意な差を認めなかった(HR 1.15[0.41 to 3.17],p=0.77)。
修正順序尺度スコアの低下≧2ポイントであったのは,sitagliptin投与患者72例(52%),非投与患者50例(34%)であり(p=0.0005),修正順序尺度スコアの全般的改善を認めたのは83例(60%), 55例(38%)(p=0.0001),30日後の退院は120例,89例であった(p=0.0008)。
30日後,炎症パラメーターであるプロカルシトニン(平均±SEM)(sitagliptin投与患者:1.4±0.5 ng/mL[p=0.01 vs. ベースライン],非投与患者:8.9±2.9 ng/mL)およびCRP(3.7±0.5 mg/L[p=0.001 vs. ベースライン],7.1±0.9 mg/L)はsitagliptin投与患者で有意に減少し,リンパ球数(×10-9/L)(1.6±0.2,1.1±0.07[p=0.03 vs. ベースライン])および酸素飽和度(96±0.7%[p=0.004 vs. ベースライン],92±1.0%)はsitagliptin投与患者で有意に増加した。また,血糖値(139±4 mg/dL[p=0.002 vs. ベースライン],170±9 mg/dL)はsitagliptin投与患者で低下した。
●結論 COVD-19で入院した2型糖尿病患者において,入院時のsitagliptin追加投与により死亡率が低下し,臨床アウトカムが改善することが示された。