編集:片山茂裕 河盛隆造 景山茂 西尾善彦 西村理明 綿田裕孝
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Jhund PS, Solomon SD, Docherty KF, Heerspink HJL, Anand IS, Böhm M, Chopra V, de Boer RA, Desai AS, Ge J, et al.: Efficacy of Dapagliflozin on Renal Function and Outcomes in Patients with Heart Failure with Reduced Ejection Fraction: Results of DAPA-HF. Circulation. 2020; [PubMed]

先に発表されたDAPA-HFでは,EFが40%以下のHFrEFを有する心不全患者でdapagliflozin (10mg/日)投与群ではplacebo群に比べて,一次エンドポイント(心血管死+心不全の悪化の複合)が26%有意に減少することが報告された。そしてこの効果は,2型糖尿病の有無に関わらず同等であった。この成績をもって,ヨーロッパ・米国に次いで,dapagliflozinは心不全の治療薬として,わが国でも2020年11月に適応が拡大されたことは記憶に新しい。今回の報告は,dapagliflozinの心不全改善効果が試験開始時の腎機能によって影響を受けるかどうかをみたサブ解析である。
その結果,eGFRが60mL/1.73m2/分未満か以上かで層別してみても,一次エンドポイント(心血管死+心不全の悪化の複合)に対するdapagliflozin(vs. プラセボ)の抑制効果には有意な差を認めなかったが,絶対リスクの低下率はeGFR低値群で大であった。腎複合エンドポイントの発症率はeGFR低値群で高く,dapagliflozin群でplacebo群に比較して有意な差には至らなかったが,eGFRの低下率はdapagliflozin群でプラセボ群に比べて低く(p<0.001),この結果は,糖尿病の有無を問わず同様に認められた。必ずしも,腎エンドポイントの有意差が認められなかった事象もあるが,腎イベント数が多くはなかったことによるのかもしれない。最近報告されたEMPEROR-Reduced (Empagliflozin Outcome Trial in Patients with Chronic Heart Failure and a Reduced Ejection Fraction trial )では,腎複合イベントの定義がやや異なるが,dapagliflozin群でプラセボ群に比べて腎イベントが減少している。
非糖尿病患者におけるdapagliflozinの腎保護作用の報告ははじめてのものかもしれないが,従来糖尿病患者で想定されている糸球体高血圧やtubulo-glomerular feedbackの改善に加えて,心不全患者では心不全の改善自体が腎機能の保持に働くのかもしれない。最近DAPA-CKDの結果が発表され,非糖尿病患者でのdapagliflozinの腎保護作用が確認され,近々EMPA-KIDNEYの結果も発表されるであろう。心不全あるいはCKDを有する非糖尿病患者におけるSGLT2阻害薬の臨床応用がいよいよ開始されるが,しばらくは慎重に見守って行きたい。【片山茂裕

●目的 2型糖尿病の有無を問わない,左室駆出率が低下した心不全(HFrEF)患者において,dapagliflozinの安全性と有効性を腎機能のカテゴリー(ベースラインのeGFR<60,≧60 mL/分/1.73m2)ごとに検討した。また,dapagliflozinが腎機能に与える影響も検討した。
一次エンドポイントは,心血管死+心不全の悪化(心不全による初回の入院/静注治療を要する緊急診療)の複合。
二次エンドポイントは,心不全による全(初回/再)入院+心血管死の複合,心血管死,腎アウトカム(eGFRの50%以上の持続的[28日以上]低下+末期腎不全[ESRD]*+腎臓死の複合),他。
*ESRDはeGFR<15 mL/分/1.73m2,慢性透析,腎移植のいずれかの場合と定義。
●デザイン DAPA-HF試験(ランダム化,二重盲検,プラセボ対照,多施設[410施設,20ヵ国])のサブ解析。
●試験期間 追跡期間中央値は18.2ヵ月。
●対象患者 2型糖尿病の有無を問わないHFrEF患者で,ベースラインのeGFRデータがある4,742例。
eGFR<60 mL/分/1.73 m2は1,926例(41%)。平均年齢は,eGFR<60 mL/分/1.73 m2では70.9歳,≧60 mL/分/1.73 m2では63.2歳(p<0.001),女性はそれぞれ27.7%,20.4%,平均心拍数は70.7 bpm,72.0 bpm(p<0.001),NT-proBNPは1823.8 pg/mL,1261.1 pg/mL(p<0.001)。心不全の病因(虚血:61.0%,53.2%),2型糖尿病51.0%,41.1%(p<0.001)。既往歴:心房細動45.7%,33.3%(p<0.001),心筋梗塞47.2%,42.0%(p<0.001),高血圧81.0%,69.6%(p<0.001)。
登録基準:LVEF≦40%,eGFR≧30 mL/分/1.73m2,18歳以上,NYHA心機能分類II~IV,NT-proBNP上昇,ガイドラインで推奨される適切な薬物療法(β遮断薬など)/デバイス治療を受けている者。
除外基準:1型糖尿病,症候性低血圧/収縮期血圧<95 mmHg,eGFR<30 mL/分/1.73 m2,不安定/急速進行性腎疾患。
●方法 標準治療への追加として,対象患者をdapagliflozin群(10 mg 1日1回),プラセボ群にランダム化。
一次エンドポイントおよび二次エンドポイント(心血管アウトカム)は,ベースラインのeGFR(<60 mL/分/1.73 m2,≧60 mL/分/1.73 m2)間での比較を行った。
腎複合アウトカムは,糖尿病の有無により層別化し,ベースラインのeGFRおよび治療群で調整したCoxモデルにより評価した。
●結果 一次エンドポイント(心血管死+心不全の悪化の複合)に対する dapagliflozin(vs. プラセボ)の抑制効果は,eGFR<60 mL/分/1.73m2の患者とeGFR≧60 mL/分/1.73m2の患者間では,有意な差を認めなかった(ハザード比[HR] 0.71[95%CI 0.59 to 0.86] vs. HR 0.77[0.64 to 0.93],p for interaction=0.54)。
同様に,心不全による全入院+心血管死の複合(HR 0.79[0.64 to 0.97] vs. 0.71[0.58 to 0.93],p for interaction=0.50),心血管死(HR 0.88[0.69 to 1.13] vs. HR 0.76[0.59 to 0.98],p for interaction=0.44),心不全による全入院/静注治療を要する緊急診療(HR 0.66[0.52 to 0.83] vs. HR 0.75[0.59 to 0.95],p for interaction=0.39)のいずれについても,dapagliflozin(vs. プラセボ)の抑制効果について,eGFR<60 mL/分/1.73m2の患者とeGFR≧60 mL/分/1.73m2の患者間での差は認められなかった。
また,腎複合アウトカムについて,dapagliflozin群のプラセボ群に対する有意な減少は認められなかった(HR 0.71[0.44 to 1.16],p=0.17)。eGFRの50%以上の低下を示した者の比率はdapagliflozin群でプラセボ群に比べて低かった(HR 0.56,p=0.003)。14~720日後におけるeGFRの低下率はdapagliflozin群(-1.09[-1.41 to –0.78]mL/分/1.73m2)でプラセボ群(-2.87[-3.19 to -2.55]mL/分/1.73m2)に比べて低く(p<0.001),この結果は,2型糖尿病の有無を問わず,同様に認められた(p for interaction=0.92)。
安全性については,腎臓に関する有害事象はdapagliflozin群でプラセボ群に比してむしろ少なく(6.5% vs. 7.2%),重篤な有害事象も同様であった(1.6% vs. 2.7%)。
●結論 HFrEF患者において,糖尿病の有無を問わず,ベースラインの腎機能は,心腎エンドポイントおよび死亡に対するdapagliflozinの抑制効果に影響しなかった。また,糖尿病の有無を問わず,dapagliflozinはeGFRの低下を遅延することが示唆された。