編集:片山茂裕 河盛隆造 景山茂 西尾善彦 西村理明 綿田裕孝
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Yabe D, Nakamura J, Kaneto H, Deenadayalan S, Navarria A, Gislum M, Inagaki N, ; PIONEER 10 Investigators: Safety and efficacy of oral semaglutide versus dulaglutide in Japanese patients with type 2 diabetes (PIONEER 10): an open-label, randomised, active-controlled, phase 3a trial. Lancet Diabetes Endocrinol. 2020; 8: 392-406. [PubMed]

世界ではじめて臨床応用された経口セマグルチドの日本人を対象とした臨床治験である。対照薬は0.75mgのデュラグルチドであり,日本で最も使われているGLP-1の注射製剤である。患者にGLP-1受容体作動薬を用いるときに,現在の標準薬を用いるのか経口のGLP-1受容体作動薬を用いるのかという比較検討のデザインとなっており,興味深い。
結果として,経口セマグルチド14mgが0.75mgのデュラグルチドに比して有意なHbA1cの低下と体重減少をもたらすことは,セマグルチドの薬効が強いことを意味しており,とくに驚きはないが,経口セマグルチド7mgは0.75mgのデュラグルチドとほぼ同等のHbA1c低下作用を示しながら,体重を有意に下げている。この結果は,日本人においても経口セマグルチドは他のGLP-1受容体作動薬よりも血糖降下作用に比し,体重減少作用が強いことを意味している。この情報は,それぞれの薬剤のより適切な投与対象の選別という意味で重要と考えられる。【綿田裕孝

●目的 日本人2型糖尿病患者において,経口semaglutideの安全性と有効性をdulaglutide皮下注射と比較した。
一次エンドポイントは57週間における治療に関連する有害イベント発生数。
二次エンドポイントは52週後のHbA1cおよび体重の変化。
●デザイン ランダム化,オープン,多施設(36施設,日本),第IIIa相。
●試験期間 登録期間は2017年1月10日~5月30日,治療期間は52週,追跡は治療後5週まで。
●対象患者 コントロール不良の日本人2型糖尿病患者458例。
平均年齢58歳,男性74%,HbA1c 8.3%,糖尿病罹病期間9.4年,体重72.1 kg。
採用基準:20歳以上,診断後60日以上経過,HbA1c 7.0~10.5%,経口血糖降下薬(SU薬,glinide,チアゾリジンジオン,αグルコシダーゼ阻害薬,SGLT2阻害薬)を安定用量で60日以上服用している者(DPP-4阻害薬の使用は認めず)。
●方法 2週間のスクリーニング後,対象をsemaglutide 3 mg群(131例),semaglutide 7 mg群(132例),semaglutide 14 mg群(130例),dulaglutide群(65例)に2:2:2:1にランダム化。
semaglutideは3 mg 1日1回から開始し,7 mg群と14 mg群は,各維持用量に達するまで4週間ごとに漸増した。いずれも朝1日1回,空腹時に経口投与し(飲料水≦120 mL),投与後30分間は飲食/他の経口薬の服用を控えることとした。
dulaglutideは0.75 mg(用量漸増なし)を週1回皮下注射した。
試験期間中,基礎治療(血糖降下薬)は,安定用量にて投与頻度も変更せずに継続。
有効性の主要評価は “治療方針estimand”(治療中止またはレスキュー治療導入に関わらず,割付けした全例:intention-to-treat解析),二次評価は “治療薬estimand”(治療中止例およびレスキュー治療導入例を除外)による解析を実施した。
●結果 試験完遂は448例(98%)。
治療中止はsemaglutide 3 mg群7例(5%),7 mg群9例(7%),14 mg群15例(12%),dulaglutide群4例(6%)であった。
有害事象の発生は,semaglutide 3 mg群101例(77%),7 mg群106例(80%),14 mg群111例(85%),dulaglutide群53例(82%)であった。もっとも多い事象は感染症と消化管イベントであり,消化管イベントのほとんどが軽度かつ一過性の便秘と吐き気であり,semaglutid群では用量依存的に発生した。
有害事象による治療中止はsemaglutide 3 mg群4例(3%),7 mg群8例(6%),14 mg群8例(6%),dulaglutide群2例(3%)であった。死亡/重症低血糖イベントはなかった。
HbA1cのベースラインから52週後までの変化は,治療方針estimandでの検討では,semaglutide 3 mg群では-0.9パーセントポイント(SE 0.1),7 mg群では-1.4パーセントポイント(0.1),14 mg群では-1.7パーセントポイント(0.1),dulaglutide群では-1.4パーセントポイント(0.1)であった(semaglutide 14 mg群 vs. dulaglutide群の推定治療差:-0.3%[95%CI-0.6 to -0.1],p=0.0170)。
体重のベースラインから52週後までの変化は,semaglutide 3 mg群では0.0 kg(SE 0.3),7 mg群-0.9 kg(0.3),14 mg群では-1.6 kg(0.3),dulaglutide群では1.0 kg(0.4)であった(semaglutide 14 mg群 vs. dulaglutide群の推定治療差:-2.6 kg[95%CI -3.5 to -1.6],p<0.0001)。
●結論 日本人2型糖尿病患者において,経口semaglutideの忍容性は良好であった。経口semaglutide 1日1回投与はdulaglutide 0.75 mg週1回皮下注射にくらべ,治療開始から52週間後のHbA1c(14 mg群)および体重(7 mg群,14 mg群)を有意に減少させた。