編集:片山茂裕 河盛隆造 景山茂 西尾善彦 西村理明 綿田裕孝
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Liakopoulos V, Franzén S, Svensson AM, Sattar N, Miftaraj M, Björck S, Ottosson J, Näslund I, Gudbjörnsdottir S, Eliasson B: Renal and Cardiovascular Outcomes After Weight Loss From Gastric Bypass Surgery in Type 2 Diabetes: Cardiorenal Risk Reductions Exceed Atherosclerotic Benefits. Diabetes Care. 2020; 43: 1276-1284. [PubMed]

肥満と2型糖尿病は,CVDや腎疾患と密接に関連している。とくに高度の肥満は,糖尿病の有無にかかわらず蛋白尿の頻度を高めCKDへの進展に関与するが,その詳細な機序は必ずしも明らかでない。今回はスウェーデンの2つの国家的レジストリを用いて,GBPによってもたらされる大幅な体重減少が腎機能やその進行にどのような影響を及ぼすかを,とくに2型糖尿病患者で検討している。
2年後のBMIは対照群では40.95から38.64に減少しているが,GBP群で42.03から30.54に大きく減少している。HbA1cは対照群では58.52から57.68と変化がないのに比べ,GBP群で59.93から44.11に改善している。このような状況下において,GBP群で腎アウトカムやCVDのアウトカムが著減し,心不全が67%減少し,全死亡が42%減少したことは特筆される。ただ,全CVDや非致死的CVDの発症率は大きくは減少しておらず,動脈硬化性病変への影響は限定的といえるかもしれない。そして,腎機能を層別して解析しても,GBP群での心・腎アウトカムの減少は腎機能低下の程度に関わらず認められたことも特筆される。
GBPはmetabolic surgeryとも呼ばれるが,血糖コントロールを改善し,心・腎アウトカムを改善するというエビデンスが蓄積されつつある。もちろん今回の成績も含めて後ろ向きの観察研究がほとんどであるので,大規模な前向きのRCTでの証明が待たれるところである。【片山茂裕

●目的 肥満2型糖尿病でさまざまな腎機能レベルの患者において,胃バイパス(GBP)手術後の腎・心血管アウトカム発生リスクを検討した。
●デザイン 観察研究。
●試験期間 追跡期間はGBP群4.7年(範囲0.02~9.0),対照群4.6年(0.02~9.7)。
●対象患者 18~75歳でGBP手術を実施した肥満2型糖尿病患者5,321例(GBP群)。対照はGBP手術を実施していない5,321例(対照群)。
平均年齢はGBP群49.0歳,対照群47.1歳,男性39.43%,36.20%,BMI 42.0 kg/m2,40.9 kg/m2,HbA1c 59.9 mmol/mol,58.5 mmol/mol,クレアチニン 68.1 mmol/L,68.0 mmol/L,eGFR(MDRD) 97.2 mL/分/1.73m2,98.3 mL/分/1.73m2,eGFR(慢性腎臓病[CKD]-EPI) 99.4 mL/分/1.73m2,100.1 mL/分/1.73 m2。GBP手術は,腹腔鏡96.0%,開腹2.3%。
●方法 スウェーデンの2つの国家的レジストリである,Scandinavian Obesity Surgery Registry(SOReg)とNational Diabetes Registry(NDR)のデータ(2007年1月1日~2015年12月31日)を使用。
さらに4つの国家的レジストリ(Swedish Inpatient Register,Cause of Death Register,Prescribed Drug Register,Statistics Sweden)(社会経済変数,薬物,入院,および死因に関する情報が登録されているデータベース)へのリンクを行った。
GBP手術施行例はSORegより抽出した。対照は,NDRより,傾向スコア(性別,年齢,BMI,および暦)で1:1にマッチングさせた非GBP手術例を抽出した。
術後アウトカムはCox回帰モデルにより評価し,性別,年齢,BMI,eGFR,婚姻状態,収入,教育,出生国で調整した。
腎機能の評価には,eGFR(MDRD,CKD-EPI)を用いた。微量アルブミン尿は尿中アルブミン/クレアチニン比(ACR)3~30 mg/mmol,マクロアルブミン尿はACR>30 mg/mmolと定義した。
二次解析として,ベースラインのeGFR(≧90,90~60,60~45,45~30,<30)ごとの検討も行った。
●結果 GBP群では,術後1~2年において,BMIおよびHbA1cが著しく低下した一方,クレアチニンおよび微量アルブミン尿の減少(GBP群305例,対照群575例)はわずかであり,eGFRも安定していた。
追跡期間において,GBP群では対照群に対し,腎機能,心血管疾患(CVD),および死亡に関連したほとんどのアウトカムの発生リスクが有意に低かった(eGFR[MDRD]半減のHR 0.63[95%CI 0.45 to 0.89],eGFR[CKD-EPI]半減のHR 0.58[0.40 to 0.85],マクロアルブミン尿のHR 0.55[0.47 to 0.65],急性腎不全のHR 0.57[0.36 to 0.90],CKDのHR 0.45[0.30 to 0.67],糖尿病性腎症のHR 0.22[0.10 to 0.47],重症腎疾患のHR 0.50[0.37 to 0.68],重症腎疾患+eGFR[MDRD]半減のHR 0.56[0.44 to 0.71],重症腎疾患+eGFR[CKD-EPI]半減のHR 0.54[0.42 to 0.70],血液透析+腹膜透析のHR 0.25[0.08 to 0.72],CVDのHR 0.74[0.61 to 0.89],非致死性CVDのHR 0.82[0.70 to 0.97],うっ血性心不全のHR 0.33[0.24 to 0.46],致死性CVDのHR 0.36[0.22 to 0.58],全死亡のHR 0.58[0.47 to 0.72])。
eGFRのすべてのカテゴリーにおいて,eGFR<30mL/分/1.73m2の患者も含め,GBP群で対照群に対し,主要アウトカムの発生リスクは概して低かった。
●結論 GBP手術を実施した肥満2型糖尿病患者において,腎アウトカム,心不全,および心血管死に対するGBP手術の強いベネフィットが示された。また,ベースラインの腎機能にかかわらず,著しい体重減少には重要なベネフィットがあり,とくに心腎に対するベネフィットが示された。