編集:片山茂裕 河盛隆造 景山茂 西尾善彦 西村理明 綿田裕孝
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Gibb FW, McKnight JA, Clarke C, Strachan MWJ: Preserved C-peptide secretion is associated with fewer low-glucose events and lower glucose variability on flash glucose monitoring in adults with type 1 diabetes. Diabetologia. 2020; 63: 906-914. [PubMed]

成人1型糖尿病患者において, 内因性インスリン分泌が低値であったとしても維持されていれば,CGMで観察される血糖変動幅が小さく,低血糖イベントも少ないのではないかという仮説を検証した研究である。
その結果,内因性インスリン分泌が維持されていることは,低血糖イベントの発生の少なさと,血糖値の変動の少なさと関連していることが示された。一方,高血糖時間とは関連がみられなかった。
本研究の結果は,1型糖尿病の外来診療において,低血糖を起こしやすい人のリスク因子を明確に示したことに意義がある。一方,内因性インスリン分泌がすなわちグルカゴン分泌の低下とも関連しているのか,それとも内因性インスリン分泌のみで,このような知見がみられるのか,このポイントを明らかにしてくれる研究結果が待たれる。【西村理明

●目的 フラッシュグルコースモニタリング使用下の成人1型糖尿病患者において, Cペプチド分泌が維持されている場合,それが低値であったとしても,血糖値の変動が少なく,低血糖イベントも少ないという仮説を検証した。
一次エンドポイントはフラッシュグルコースモニタリング関連の変数*(Cペプチド分泌が維持されている群とされていない群の比較)。
*平均血糖値,血糖値の標準偏差(SD),血糖値の変動係数(CV),低血糖イベント数/2週間,血糖値<3.9 mmol/Lを推移した時間の割合,血糖値 3.9~10.0 mmol/Lを推移した時間の割合,血糖値>10 mmol/Lを推移した時間の割合,低血糖イベントの平均持続時間,推定HbA1c,HbA1cの四分位範囲(IQR)。
●デザイン 横断研究。
●試験期間 -
●対象患者 フラッシュグルコースモニタリングを使用している1型糖尿病患者290例。
登録基準:糖尿病罹病期間>3年,血漿血糖値>4 mmol/L(Cペプチド測定時の値),2019年2~4月のうち2週間のフラッシュモニタリングデータを有する者, 2週間以内のフラッシュモニタリングデータのうち≧75%が入手可能な者。
除外基準:Cペプチド分泌>200 pmol/L。
●方法 Cペプチド分泌の値により,対象患者をCペプチド分泌低値群(<10 pmol/L)(201例),Cペプチド分泌維持群(10~200 pmol/L[89例],または10~50 pmol/L[58例])にカテゴリー分けし,フラッシュグルコースモニタリングに関する変数(エンドポイント)について比較した。
データは中央値およびIQRにより示した。カテゴリーデータはカイ二乗検定またはFisher正確検定により比較し,相関係数はSpearman順位相関係数により解析した。主要なフラッシュモニタリング変数の独立した予測因子については,ロジスティック回帰分析により特定した。
●結果 Cペプチド分泌が10~200 pmol/Lに維持されていた群では,低値群にくらべ,糖尿病罹病期間が短く(中央値15年[IQR 9~24年] vs. 25年[15~34年],p<0.001),診断時の年齢が高かったが(23歳[14~28歳] vs. 15歳[9~25歳],p<0.001),現年齢に有意な差はみられなかった(39歳[31~53歳] vs. 43歳[31~53歳],p=0.560)。
平均血糖値,推定HbA1c,血糖値 3.9~10.0 mmol/Lを推移した時間の割合,血糖値>10 mmol/Lを推移した時間の割合については,Cペプチド分泌維持群と低値群で有意な差は認められなかった。
しかしながら,Cペプチド分泌維持群では低値群にくらべ,血糖値<3.9 mmol/Lを推移した時間の割合が低く(中央値3%[IQR 2~6%] vs. 5%[3~9%],p<0.001),低血糖イベント数/2週が少なく(7イベント[4~10イベント] vs. 10イベント[5~16イベント],p<0.001),血糖値のSDが低く(3.8 mmol/L[3.4~4.2 mmol/L] vs. 4.1 mmol/L[3.5~4.7 mmol/L],p=0.017),血糖値のCVが低かった(38.0%[35.0~41.6%] vs. 41.8%[36.5~45.8%],p<0.001)。
これらの差は, Cペプチド分泌が10~50 pmol/Lに維持されている群でも同様にみられ,糖尿病罹病期間,推定HbA1c値とは独立していた。
Cペプチド分泌は,CV(r -0.141,p=0.016),血糖値<3.9 mmol/Lを推移した時間(r -0.182,p=0.002),低血糖イベント数(r -0.182,p=0.002)と有意な相関を示した。
また,Cペプチド分泌維持群では低値群にくらべ,患者報告による無症候性低血糖の発生率が有意に低かった(過去1ヵ月:8.0% vs. 22.8%,p=0.028)。
●結論 Cペプチド分泌の残存はフラッシュグルコースモニタリングで観察された低血糖イベントの発生の少なさおよび血糖値の変動の少なさと関連した。本研究結果により,Cペプチド分泌が維持されている患者では,維持されていない患者と比較し,強化血糖コントロールにより目標値に到達しようとする際に低血糖のリスクは低く,血糖変動幅は小さい可能性が示唆された。