編集:片山茂裕 河盛隆造 景山茂 西尾善彦 西村理明 綿田裕孝
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Harris K, Oshima M, Sattar N, Würtz P, Jun M, Welsh P, Hamet P, Harrap S, Poulter N, Chalmers J, et al.: Plasma fatty acids and the risk of vascular disease and mortality outcomes in individuals with type 2 diabetes: results from the ADVANCE study. Diabetologia. 2020; 63: 1637-1647. [PubMed]

脂肪酸はエネルギー代謝に重要な役割を果たすだけでなく,インスリン抵抗性や肥満や糖尿病や動脈硬化の病態に密接に関わっている。特に,n-3脂肪酸であるDHAやEPAが心血管疾患(CVD)を減少させることがメタ解析でも証明されている。1g/日程度のn-3脂肪酸の補充では明らかではなかったが,CVDの既往例を有する者や糖尿病と他のリスク因子を有する者で4g/日という大量のn-3脂肪酸を投与したREDUCE-IT(Reduction of cardiovascular Events with Icosapent Early-Intervention Trial)ではCVDを減少させることが報告されている。
今回の検討は,血中脂肪酸と大血管疾患・細小血管疾患・死亡との関連を検討したADVANCE試験のサブ解析である。今回,n-3脂肪酸とDHAは大血管疾患と負の関連を示し,n-3脂肪酸はさらに死亡とも負の関連を示した。n-3脂肪酸とDHAがトリアシルグリセロールを低下させたり,血流を増加させたり,炎症を低下させるなどの機序が考えられるだろう。しかしながら,大血管疾患のリスクにこれら脂肪酸を加えたモデルでは,必ずしもn-3脂肪酸とDHAのベネフィットが大きくなかった。ただ,これら血漿脂肪酸濃度が低い層では,n-3脂肪酸の大量投与のベネフィットが得られるのかもしれない。2型糖尿病患者でのさらなる検討が求められる。【片山茂裕

●目的 2型糖尿病患者において,血漿脂肪酸バイオマーカーと大血管疾患,細小血管疾患,および死亡との関連を検討した。
●デザイン 症例対照研究(ADVANCE試験の二次解析)。
●試験期間 ADVANCE試験の登録期間は2001年6月~2003年3月,追跡期間中央値は5年。
●対象患者 ADVANCE試験に参加した2型糖尿病患者のうち,脂肪酸データがある3,576例(大血管イベント654件,細小血管イベント341件,死亡631例)。
ADVANCE試験の登録基準:≧55歳,診断時の年齢≧30歳,CVDの既往(脳卒中,心筋梗塞,一過性脳虚血発作による入院,不安定狭心症による入院,冠血行再建術,末梢血行再建,または末梢血管疾患後の下肢切断)または他のCVDリスクを1つ以上有する者。
●方法 ベースライン時の血液サンプルを用いて,NMR解析により脂肪酸を測定した。使用した脂肪酸は, n-3脂肪酸,ドコサヘキサエン酸[DHA],n-6脂肪酸,リノール酸,多価不飽和脂肪酸,一価不飽和脂肪酸,飽和脂肪酸。
脂肪酸と大血管疾患,細小血管疾患,死亡との関連を評価するため,脂肪酸の1SD増加に対するハザード比(HR)を求めた。その際,従来の心血管危険因子(年齢,性別,地域,割付け治療,大血管疾患既往,糖尿病罹病期間,現在喫煙者,収縮期血圧,BMI,尿中アルブミン/クレアチニン比,eGFR,HbA1c,HDLコレステロール,トリアシルグリセロール,アスピリンまたはその他の抗血小板薬の使用,スタチンまたはその他の脂質低下薬の使用,β遮断薬/ACE阻害薬/ARBの使用)で調整した。
ADVANCE試験では,perindopril-indapamide合剤群(2 mg/0.625 mg を3ヵ月投与後,4 mg/1.25 mgに漸増)とプラセボ群へのランダム化(二重盲検),および強化血糖コントロール群(gliclazide放出調節錠を投与,目標HbA1c≦6.5%)と標準療法へのランダム化(オープンラベル)が実施された。
●結果 従来の心血管危険因子で調整後,大血管イベントリスクと負の関連を示したのは,n-3脂肪酸(1SD増加に対する調整HR 0.87[95%CI 0.80 to 0.95])とDHA(HR 0.88[0.81 to 0.96])であった。死亡と負の関連を示したのはn-3脂肪酸であった(HR 0.91[0.84 to 0.99])。これらの結果は,脂肪酸の絶対値で評価しても,同様であった。
大血管イベントの内訳をみると,同じく調整後,n-3脂肪酸とDHAは心血管死(HR 0.85[0.75 to 0.96],HR 0.86[0.76 to 0.98]),非致死性脳卒中(HR 0.82[0.69 to 0.97],HR 0.82[0.69 to 0.97])と有意な負の関連を示した。
細小血管疾患については,調整後には,有意な関連を示す脂肪酸はなかった。
従来の心血管危険因子に脂肪酸を加えた場合も,n-3脂肪酸およびDHAに対するC統計およびNRIにおける改善はわずかであった。
●結論 血漿中n-3脂肪酸とDHAは大血管疾患と負の関連を示し,n-3脂肪酸はさらに死亡とも負の関連を示した。これらの結果は,n-3脂肪酸とDHAの心血管保護効果,さらに2型糖尿病患者に対するn-3脂肪酸の高用量サプリメントの役割について検証するメリットを支持するものである。