編集:片山茂裕 河盛隆造 景山茂 西尾善彦 西村理明 綿田裕孝
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Yuan S, Kar S, Carter P, Vithayathil M, Mason AM, Burgess S, Larsson SC: Is Type 2 Diabetes Mellitus Causally Associated with Cancer Risk? Evidence From a Two-Sample Mendelian Randomisation Study. Diabetes. 2020; [PubMed]

2型糖尿病とがんによる死亡者数は,2015年にはそれぞれ500万人・870万人に達し,大きな問題である。2型糖尿病患者は,全てのがん・大腸がん・肝臓がん・腎臓がん・子宮がん・乳がんなどのリスクといわれている。一方,2型糖尿病とすい臓がんについては相反する報告があり,前立腺がんについては2型糖尿病患者では少ないといわれている。わが国の8コホートのプール解析では,男女とも全がんのハザード比は1.19倍で,結腸がん1.40倍,肝臓がん1.97倍,すい臓がん1.85倍と報告されている。
これまでの2型糖尿病患者における検討は観察研究であった。しかしながら,今回の報告は,遺伝子多型情報により交絡因子をできるだけ抑えることができる「メンデルのランダム化法」を用いた解析であり,従来の成績と一部異なる点もある。今回の結果では,2型糖尿病のリスクが高いと,肝がん・膵がん・腎がん・子宮がん・子宮頸がんのリスクが有意に高くなり,黒色腫と食道がんのリスクは低くなった。しかしながら,全がんとの関連は認められなかった。メタ解析でも,2型糖尿病のリスクが高いと膵がんのリスクが高まることが確認された。さらに興味深いことは,空腹時血糖の遺伝的予測とがんとの関連は示されなかったが,空腹時インスリン濃度の遺伝的予測と膵がん,腎がん,子宮がん,および肺がんのリスクと正の関連が示された。高インスリン血症やインスリン抵抗性とがんの成因を示唆する成績といえよう。
いずれにしても,2型糖尿病患者においては,がんのリスクが高いことを念頭において,早期に必要なスクリーニングを行っていくことが重要であろう。【片山茂裕

●目的 2型糖尿病と全がんおよび部位別がんリスクとの因果関係を検討した。
●デザイン メンデルランダム化研究(two-sample),メタ解析。
●試験期間 -
●対象患者 【メンデルランダム化研究】
・UK Biobankの登録例(2017年3月31日迄)(血縁関係のない欧州人子孫のがん症例75,037例,非がん症例292,606例)。
・Diabetes Genetics Replication And Meta-analysis(DIAGRAM) consortiumの登録例(欧州系の2型糖尿病74,124例,対照824,0006例)。
・Meta-Analysis of Glucose and Insulin-related traits Consortium(MAGIC)の登録例(空腹時血糖の解析:欧州系の133,010例,空腹時インスリンの解析:欧州系の108,557例)。
・Breast Cancer Association Consortium(BCAC)の登録例(欧州系の乳がん症例122,977例,対照105,974例)。
・Pancreatic Cancer Cohort Consortium(PanScan),Pancreatic Cancer Case-Control Consortium(PanC4)の登録例(欧州系のがん症例9,040例,対照12,496例)。
【メタ解析】
メンデルランダム化研究7件。
●方法 【メンデルランダム化研究】
DIAGRAM consortium,MAGIC,PanScan,PanC4,BCAC,およびUK Biobankの要約レベルの遺伝的データを使用した。
2型糖尿病の操作変数は32のゲノムワイド関連研究のメタ解析(DIAGRAM consortium),空腹時血糖値および空腹時インスリン値の操作変数はゲノムワイド関連メタ解析(MAGIC)に基づき選択し,膵がんの操作変数は,1ゲノムワイド関連研究(PanScanおよびPanC4)より入手した。
操作変数は,locus-wide有意値(p<10-5)およびゲノムワイド統計的有意性の閾値(p<5×10-8)を満たすSNPsとした(2型糖尿病399 SNPs[感度分析では295 SNPs],空腹時血糖35 SNPs,空腹時インスリン17 SNPs)。
ランダム効果逆分散法を用いて遺伝的予測2型糖尿病/空腹時血糖/空腹時インスリンと全がんおよび22の部位別がんリスクの関連を検討した。
UK Biobankに登録された,血縁関係のない367,643例より,全がんおよび21部位のがんの遺伝的関連データを抽出し,年齢,性別,主要な10個の遺伝的要因により調整した。
2型糖尿病については,逆分散法で示されたエビデンスに関し,3つの感度分析を実施した(weighted median,MR-Egger法,MR-PRESSO法)。
【メタ解析】
2019年10月17日までのデータを,PubMedおよびEmbaseより,以下のMeSH termおよび/またはテキストを用いて検索。
“diabetes”, “glucose”, “insulin”, “glycemic”, “cancer”, “carcinoma”, “Mendelian randomization”, “Mendelian randomisation”, “instrumental variable causal inference”, “causal inference using instrumental variable”, “causal inference using genetic variants”
抽出したデータは,出版データ(筆頭著者名,出版年),2型糖尿病とその関連特性(空腹時血糖,空腹時インスリン),がんの部位,がんの症例数および対照数,操作変数として用いられたSNPsの数,用いたSNPsおよび推定リスクにより説明されたバラツキ(それに伴うCI)。
●結果 【メンデルランダム化研究】
399 SNPsによる検討では,2型糖尿病の遺伝的素因は,肝がん,膵がん,腎がん,子宮がん,子宮頸がんの高リスクと有意に関連し,2型糖尿病の対数オッズが1ユニット増加するごとのORは,肝がん1.16(95%CI 0.99 to 1.36,p=0.059),膵がん1.13(1.04 to 1.22,p=0.002),腎がん1.08(1.00 to 1.17,p=0.039),子宮がん1.08(1.01 to 1.15,p=0.031),子宮頸がん1.07(1.01 to 1.15,p=0.031)であった。また,黒色腫と食道がんでは低リスクと有意に関連し,2型糖尿病の対数オッズが1ユニット増加するごとのORは,黒色腫0.93(0.89 to 0.97,p=0.001),食道がん0.89(0.81 to 0.98,p=0.018)であった。
その他の部位別がんおよび全がんについては,2型糖尿病の遺伝的素因との関連は認められなかった。
以上の結果は,295 SNPsを用いた感度分析においても,ほぼ同様の結果であった。
空腹時血糖値と空腹時インスリン値の遺伝的予測と全がんおよび22の部位別がんリスクとの関連については,エビデンスが限られていた。
【メタ解析】
2型糖尿病の遺伝的予測の対数オッズと膵がんリスクとの関連が認められたが(膵がん症例8,374例,OR 1.08[1.02 to 1.14],p=0.009),腎がん,子宮がん,卵巣がんとの関連はみられなかった。
空腹時血糖の遺伝的予測と全がんおよび22の部位別がんリスクとの関連を示すエビデンスはなかった。空腹時インスリンの遺伝的予測は,膵がん,腎がん,子宮がん,および肺がんのリスクと正の関連が示され,空腹時インスリン値が1SD増加するごとのORは,膵がん1.58(1.05 to 2.36,p=0.027),腎がん1.81(1.44 to 2.27,p<0.001),子宮がん2.13(1.30 to 3.49,p=0.003),肺がん1.27(1.05 to 1.54,p=0.014)であった。
●結論 メンデルランダム化研究により,2型糖尿病といくつかの部位別がんリスクとの因果関係が示された。2型糖尿病患者に対しては,がんの早期発見を可能にするため,がんのスクリーニング検査を強化すべきであろうことが示された。