編集:片山茂裕 河盛隆造 景山茂 西尾善彦 西村理明 綿田裕孝
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Zinman B, Aroda VR, Buse JB, Cariou B, Harris SB, Hoff ST, Pedersen KB, Tarp-Johansen MJ, Araki E, Zinman B; PIONEER 8 Investigators: Efficacy, Safety, and Tolerability of Oral Semaglutide Versus Placebo Added to Insulin With or Without Metformin in Patients With Type 2 Diabetes: The PIONEER 8 Trial. Diabetes Care. 2019; 42: 2262-2271. [PubMed]

GLP-1受容体作動薬semaglutideについては,SUSTAIN 6により注射剤においてはプラセボと比較して3 point MACEの減少が示され,また,経口剤においてはPIONEER 6によりプラセボに対する非劣性が示されている。
米国糖尿病学会(ADA)と欧州糖尿病学会(EASD)の合同ガイドラインでは,動脈硬化性心血管疾患を有する2型糖尿病においては,metforminの次にはGLP-1受容体作動薬あるいはSGLT2阻害薬を推奨している。また,欧州心臓学会(ESC)とEASDの合同ガイドラインでは,動脈硬化性心血管疾患を有する2型糖尿病においては,metforminよりもGLP-1受容体作動薬あるいはSGLT2阻害薬を優先している。
このようにGLP-1 受容体作動薬への期待は大きいが,これまでは注射剤のみのため患者の受け容れは必ずしも良好ではなかった。semaglutideについては経口剤の開発が進められ,患者のハードルは低くなることが期待される。
本研究においては,インスリン投与下においてもHbA1cの改善と減量が認められ,広い範囲の2型糖尿病における有効性が期待される。一方, semaglutideの高用量群で消化器症状による中止例が多いことが気になる点である。発売後には有効性のみならず,安全性に関する調査研究と注意が必要であろう。【景山 茂】

●目的 metforminの有無にかかわらずインスリン投与下でコントロール不良の2型糖尿病患者において,経口semaglutideの有効性,安全性および忍容性を検討した。
一次エンドポイントはベースラインから26週後までのHbA1cの変化。
二次エンドポイントはベースラインから26週後までの体重の変化。
●デザイン ランダム化,二重盲検(患者と治験責任医師を盲検化),プラセボ対照,多施設(111施設,9ヵ国)。
●試験期間 登録期間は2017年2月2日~2018年1月18日,治療期間は52週,追跡期間は治療後5週。
●対象患者 metforminの有無にかかわらずインスリン投与下でコントロール不良(HbA1c 7.0~9.5%)の2型糖尿病患者731例。男性54.0%,平均61歳,HbA1c 8.2%,体重85.9 kg,糖尿病罹病期間15.0年,metformin投与67.2%。
登録基準:診断後90日以上経過,基礎インスリン/基礎-追加インスリン(いかなる併用も許可)/混合インスリン(可溶性インスリンの併用含む)を≧10 units/日にて90日以上投与している者。metforminを併用している場合は,≧1,500 mg/日または最大耐用量を90日以上投与している者。
除外基準:スクリーニング前90日以内におけるその他の血糖降下薬の使用(metformin,本試験で許可されているインスリンレジメン,急性疾患でのインスリン短期投与[≦14日]は許可)。
●方法 対象患者をsemaglutide 3mg群(184例),7mg群(182例),14mg群(181例),プラセボ群(184例)に1:1:1:1にランダム化。出身国(日本/非日本),基礎治療(metformin使用/非使用,基礎/基礎-追加/混合インスリン)による層別化を実施。
朝1日1回,空腹時に経口投与し(飲料水≦120mL),投与後30分間は食事/他の薬剤の服用を控えることとした。semaglutideはすべて3 mgから開始し,7 mg群と14 mg群は各維持用量に達するまで4週間ごとに漸増した。
治療効果は, “治療方針estimand”(治療中止またはレスキュー治療導入に関わらず,割付けした全例を含む:intention-to-treat解析)および“治療薬estimand”(治療中止例およびレスキュー治療導入例を除外)による解析を行った。
●結果 試験完遂は全体で95.3%。治療中止はsemaglutide 3 mg群13.0%,7 mg群18.7%,14 mg群20.4%,プラセボ群12.0%であった。
semaglutideの全群で,プラセボ群に対し,HbA1c低下における優越性が認められた(治療方針estimandでの推定治療差[ETD]:3 mg群-0.5%[95%CI -0.7 to -0.3],7 mg群-0.9%[-1.1 to -0.7],14 mg群-1.2%[-1.4 to -1.0],いずれもp<0.0001)。
同じく体重減少においても,semaglutide全群でプラセボ群に対し,優越性が認められた(治療方針estimand でのETD:-0.9 kg[95%CI -1.8 to -0.0,p=0.0392],-2.0 kg[-3.0 to -1.0,p=0.0001],-3.3 kg[-4.2 to -2.3,p<0.0001])。
26週後および52週後において,semaglutide全群でのプラセボ群に対するHbA1c低下効果および体重減少効果は,用量依存性であった(治療方針estimand,治療薬estimand)。
semaglutide群でもっとも多くみられた有害イベントは,吐き気(3 mg群11.4%,7 mg 16.6%,14 mg群23.2%,プラセボ群7.1%)で,いずれも軽度~中等度のものであった。
●結論 コントロール不良の2型糖尿病患者において,HbA1c低下および体重減少に関し,インスリン投与(metformin投与/非投与含む)への経口semaglutide追加投与の,プラセボに対する優越性が示された。また,安全性プロファイルは他のGLP-1受容体作動薬と同様であることが示された。