編集:片山茂裕 河盛隆造 景山茂 西尾善彦 西村理明 綿田裕孝
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Pandey A, Patel KV, Bahnson JL, Gaussoin SA, Martin CK, Balasubramanyam A, Johnson KC, McGuire DK, Bertoni AG, Kitzman D, et al.; Look AHEAD Research Group: Association of Intensive Lifestyle Intervention, Fitness, and Body Mass Index With Risk of Heart Failure in Overweight or Obese Adults With Type 2 Diabetes Mellitus: An Analysis From the Look AHEAD Trial. Circulation. 2020; 141: 1295-1306. [PubMed]

今回のLook AHEAD研究で,過体重/肥満の2型糖尿病患者においては,普通のライフスタイル介入では心不全の発症リスクを軽減させないことが判明した。しかし,心肺機能が高い例では,心不全になりにくいことも分かった。すなわち,過体重/肥満2型糖尿病患者の診療においては,食事療法により体重を減少させ続けること,加えて身体活動量を増やし,心肺機能を高め続けることが,将来の心不全を防止するうえで必須であることを常に説明しつつ,定期的に心肺機能をチェックしていくことが望ましい。【河盛隆造

●目的 過体重/肥満の2型糖尿病患者において,強化ライフスタイル介入(ILI)は,糖尿病サポート・教育(DSE)にくらべ,心不全(HF)リスク,とくに左室駆出率(LVEF)が保たれたHF(HFpEF)発症リスクを低下させるか,を検証しようとした。さらに心肺持久力(CRF)およびBMIの変化とHF,HFpEF,およびLVEFが低下したHF(HFrEF)発症リスクとの関連についても検討せんとした。
一次エンドポイントはHF,HFpEF(LVEF≧50%と定義),HFrEF(LVEF<50%と定義)。
●デザイン Look AHEAD試験(ランダム化,多施設)のサブ解析。
●試験期間 追跡期間は中央値12.4年(58,094人・年),追跡終了は2015年12月。
●対象患者 5,109例:Look AHEAD試験参加者のうち,HFがなく,ベースライン時のCRFおよびBMIのデータがある者。
Look AHEAD試験の登録基準:2型糖尿病,45~76歳,過体重/肥満(BMI≧25 kg/m2[インスリン使用者の場合は≧27 kg/m2])。
Look AHEAD試験の除外基準:HF(NYHA心機能分類III/IV)。
●方法 Look AHEAD試験では,ILI群,DSE群にランダム化。
ILI群では,7%の減量およびその維持を目標とし,グループセッション/個人面談を行うとともに,カロリー制限食を処方し(1,200~1,800 kcal/日),身体活動量の目標達成(中等度~強度の運動≧175分/週)を推奨した。
DSE群では,最初の4年は教育的グループセッションを年3回実施し,その後は食事,運動,社会支援に関するミーティングを年1回実施した。
ランダム化前に,症候限界性トレッドミル最大段階的運動負荷試験を実施し,最大酸素摂取量によりCRFを推定し,METsにて示した。
また,CRFおよびBMIとHF,HFpEF,およびHFrEF発症との関連について検討するため,ILI群とDSE群を統合し,全例をベースライン時のCRFおよびBMIの三分位により分類して検討を行った。HF,HFpHF,HFrHF発症との関連について多変量調整Coxモデルを用いて評価した(モデル1:年齢,性別,人種,教育レベル,収入,治療群,ベースライン時のBMIで調整;モデル2:モデル1の共変量に加え,ベースライン時のCRF,BMI,高血圧既往,収縮期血圧,喫煙状況,飲酒状況,心血管疾患既往,HbA1c,糸球体濾過量により調整;モデル3:モデル2の共変量に加え,追跡時のinterval MI,により調整)。
・CRF:第1三分位(3.3~6.1 METs[対照:1,694例]),第2三分位(6.2~7.8 METs[1,786例]),第3三分位(7.9~16.7[1,629例])
・BMI:第1三分位(24.53~32.60 kg/m2[対照:1,703例]),第2三分位(32.61~37.77 kg/m2[1,703例]),第3三分位(32.78~63.53 kg/m2[1,703例])
1年後および4年後のCRFおよびBMIのデータを用い,CRFおよびBMIの変化とHF発症リスクとの関連も検討した。
●結果 ・HF発症について,ILI群のDSE群に対するハザード比(HR)は0.96(95%CI 0.75 to 1.23)であり,有意な群間差は認められなかった。HFのサブタイプであるHFpEFおよびHFrEFの発症についても,ILI群とDSE群で有意な群間差は認められなかった。
・ベースライン時のCRFによる評価では,HF発症リスクは,第1三分位(低値:対照)に比べ,第2三分位(中等度)では39%低く(調整HR 0.61,95%CI 0.44 to 0.83),第3三分位(高値)では62%低かった(調整HR 0.38,0.24 to 0.59)(いずれもモデル3の共変量で調整)。
HFのサブタイプの検討では,ベースライン時のCRFとHFrEF発症リスクとの有意な関連は認められなかった。一方,HFpEF発症リスクは,CRFの第1三分位(低値:対照)にくらべ,第2三分位で40%低下し(調整HR 0.60,0.39 to 0.91),第3三分位で77%低下した(調整HR 0.23, 0.11 to 0.46)(いずれもモデル3の共変量で調整)。
・ベースライン時のBMIによる評価では,人口学的特徴および治療群による調整後(モデル1)では,BMI高値はHF発症リスクが有意に高かったが(第2三分位[vs. 対照] HR 1.64[95%CI 1.19 to 2.27],第3三分位[vs. 対照] HR 2.13[1.53 to 2.95]),CRFおよびCV危険因子で調整後(モデル2,モデル3)には,BMIはHF,HFpEF,およびHFrEF発症のいずれとも有意な関連を認めなかった。
・CRFおよびBMIを4年後に測定した患者(3,902例)での評価では,4年後におけるCRF改善および体重減少は,HF発症リスクの低下と有意に関連した(CRFが10%増加ごとのHR 0.90[0.82 to 0.99],BMIが10%減少ごとのHR 0.80[0.69 to 0.94])。
●結論 過体重/肥満の2型糖尿病患者において,ILIはHF発症リスクを低下させない可能性が示された。ベースラインのCRF高値,およびCRF改善と体重減少の維持は,HF発症リスクの低下と関連した。