編集:片山茂裕 河盛隆造 景山茂 西尾善彦 西村理明 綿田裕孝
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Crump C, Sundquist J, Sundquist K: Preterm birth and risk of type 1 and type 2 diabetes: a national cohort study. Diabetologia. 2020; 63: 508-518. [PubMed]

「早産で生まれた方は,成人になると,糖尿病を発症するリスクが高い」 というこの論文を読むと,“thrifty gene theory“ を思い浮かべる方も多いのではなかろうか。
“thrifty gene theory” は,「乏しい不安定な食物供給に適応していたヒトが,裕福な国に移り,食物の安定供給を享受するようになると,元々有していた “thrifty gene” のため,エネルギー蓄積過剰となり,肥満や糖尿病になりやすい」 という理論である。
今回の成績から,早産がいかなる環境をもたらし,より早く糖尿病を発症させることになるのか,その解明がまたれる。膵β細胞の成熟は,妊娠後期に完成することが知られているが,その機能不全によるものなのか? あるいはインスリン拮抗ホルモンの関与があるのか? などが考えられよう。いずれにしろ,予防医学の立場からすれば,健診などでは 「満期に生まれたのか?」 などを聴取することも必要になろう。【河盛隆造

●目的 早産は,児の成人期における1型・2型糖尿病発症リスク増加と関連するという仮説を検証した。
●デザイン コホート研究。
●試験期間 追跡期間は92,300,000万人・年,追跡終了は2015年。
●対象患者 4,193,069例:1973~2014年に出生した単胎児。
除外基準:在胎期間が不明な児。
●方法 Swedish Birth Registry(スウェーデン出生登録)のデータを使用。
1973~2014年に出生した単胎児を最大43歳(中央値22.5歳)になるまで追跡し,早産と1型・2型糖尿病発症との関連を調査した(糖尿病の新規発症は,全国的な診断データおよび薬局データにより特定)。
在胎期間により,極早産(extremely preterm)(22~28週),超早産(very preterm)(29~33週),後期早産(late preterm)(34~36週),早期正期産(early term)(37~38週),満期正期産(full term)(39~41週:対照),過期産(post term)(≧42週)の6通りに分類。本解析では極早産,超早産,後期早産を統合して早産(在胎期間<37週)とし,満期正期産を対照として,1型・2型糖尿病発症との関連および性差を検討した。
ハザード比(HR)はCox回帰により潜在的交絡因子(児[出生年,性別,出生順位],母体[年齢,教育レベル,出生国/地域,BMI,喫煙,糖尿病,子癇前症,妊娠中におけるその他の高血圧性障害])で調整し,同胞解析により家族性要因(遺伝子かつ/または環境)による影響についても検討した。
●結果 1型糖尿病の発症率は,早産で36.78/100,000人・年,満期正期産で28.80/100,000人・年であり,2型糖尿病の発症率はそれぞれ8.48/100,000人・年,5.56/100,000人・年であった。
在胎期間は1型・2型糖尿病発症リスクと負の関連を示した。
早産(vs. 満期正期産)の18歳未満での1型糖尿病発症のHRは1.21(95%CI 1.14 to 1.28),2型糖尿病発症のHRは1.26(1.01 to 1.58)であり,18~43歳ではそれぞれ1.24(1.13 to 1.37),1.49(1.31 to 1.68)であった。
早産と2型糖尿病発症リスクとの関連は,女性で強かったが(<18歳:女性でのHR 1.60[95%CI 1.18 to 2.17],男性でのHR 1.01[0.73 to 1.39],18~43歳:女性でのHR 1.75[1.47 to 2.09],男性でのHR 1.28[1.08 to 1.53];p<0.01 for additive and multiplicative interaction),1型糖尿病発症リスクとの関連には性差はみられなかった。同胞解析では,家族性の遺伝子または環境因子による影響はわずかで部分的なものであった。
●結論 早産は,小児期から成人中期にいたるまでの1型・2型糖尿病発症リスクの増加と関連した。早産児および早産成人は,糖尿病に対する,早期の予防的評価と長期間のモニタリングが必要な可能性が示唆された。