編集:片山茂裕 河盛隆造 景山茂 西尾善彦 西村理明 綿田裕孝
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Shavadia JS, Zheng Y, Green JB, Armstrong PW, Westerhout CM, McGuire DK, Cornel JH, Holman RR, Peterson ED: Associations between β-blocker therapy and cardiovascular outcomes in patients with diabetes and established cardiovascular disease. Am Heart J. 2019; 218: 92-99. [PubMed]

日本の糖尿病専門医はあまり積極的にはβ遮断薬を使用してこなかったので,日本での糖尿病患者におけるβ遮断薬の使用頻度は低い。一方,欧米ではかなり積極的に使われるようで,このTECOS研究の対象症例においてもおおよそ3人に2人はβ遮断薬が使用されていた。β遮断薬の使用に関して虚血性心疾患や心不全に関する有用性のエビデンスがあるものの,糖,脂質代謝への悪影響があることや低血糖,特に重症低血糖のリスクが増すことへの懸念もあり,そのメリット/デメリットのバランスをどう捉えるかで日本と欧米での使用頻度の差につながっていると考えられる。本研究では,β遮断薬の使用者で心血管イベントの発生が減少することはなくむしろ増加していたこと,重症低血糖リスクの有意な増加をきたさなかったことが示された。β遮断薬の使用者と非使用者での背景因子が大きく異なる本研究のみでは結論は導けないが,従来通り日本における糖尿病患者へのβ遮断薬の使用には慎重な適応の判断が必要であろう。【西尾善彦

●目的 アテローム性動脈硬化症(ASCVD)を伴う2型糖尿病患者において,β遮断薬と心血管アウトカムの関連を検討した。
一次エンドポイントは心血管死,非致死性心筋梗塞,非致死性脳卒中,不安定狭心症による入院の複合。
●デザイン TECOS試験(ランダム化,二重盲検,多施設)のpost hoc解析。
●試験期間 追跡期間中央値は3年(25,75パーセンタイル:2.2,3.6)。
●対象患者 14,671例:TECOS試験の参加者(50歳以上のASCVD[冠動脈疾患,虚血性脳血管障害,かつ/またはアテローム性末梢動脈疾患]を伴う2型糖尿病患者)。
平均年齢はβ遮断薬投与群65.5歳,非投与群65.4歳,女性28.3%,30.9%(p=0.001),白色人種72.2%,60.3%,地域:北米19.1%,15.1%,西洋14.9%,12.8%,糖尿病罹病期間11.5年,11.7年,HbA1c 7.2%,7.2%,既往歴:冠動脈疾患84.7%,55.5%(p<0.001),うっ血性心不全22.1%,10.9%(p<0.001),心房細動(9.3%,5.6%,p<0.001)。
●方法 元試験(TECOS試験)では,通常治療への追加投与として,sitagliptin群とプラセボ群にランダム化した。
本post hoc解析では,ベースライン時にβ遮断薬を投与していた患者(β遮断薬投与群:9,322例)と,投与していなかった患者(非投与群:5,349例)に分類し,エンドポイントの発生を比較した。ハザード比(HR)はinverse probability weighting(IPW)で調整した。
さらに,心筋梗塞既往例および心不全既往例によるサブグループ解析を実施した。
●結果 複合一次エンドポイントの発生リスクは,β遮断薬投与群で非投与群にくらべ,有意に高かった(4.5 vs. 3.4イベント/100人・年,HR 1.17,95%CI 1.05 to 1.29)。
心筋梗塞/心不全の既往の有無によるサブグループ解析では,心筋梗塞の既往(有:HR 1.10,95%CI 0.95 to 1,27,無: HR 1.20,1.04 to 1.37;p for interaction 0.42)および心不全の既往(有:HR 1.13,0.94 to 1.37,無:HR 1.22,1.09 to 1.38;p for interaction 0.50)による複合一次エンドポイント発生への有意な影響は認められなかった。
また,β遮断薬投与群では,重症低血糖イベント発生リスクとの有意な関連は認められなかった(vs. 非投与群:HR 1.24,95%CI 0.98 to 1.57)。
●結論 ASCVDを伴う2型糖尿病患者において,β遮断薬は重症低血糖リスクとの有意な関連を認めず,心血管リスク減少との関連もみられなかった。