編集:片山茂裕 河盛隆造 景山茂 西尾善彦 西村理明 綿田裕孝
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Brown SA, Kovatchev BP, Raghinaru D, Lum JW, Buckingham BA, Kudva YC, Laffel LM, Levy CJ, Pinsker JE, Wadwa RP, et al.; iDCL Trial Research Group: Six-Month Randomized, Multicenter Trial of Closed-Loop Control in Type 1 Diabetes. N Engl J Med. 2019; 381: 1707-1717. [PubMed]

小型の人工膵臓(CGMで血糖値を測定し,その値にしたがってインスリンポンプがAIを用いてインスリン量を自動調整する)の第一世代がアメリカで市販されてから,数年が経過した。本機器の第三世代に相当する機器のポテンシャルについて,1型糖尿病患者を対象にRCTで評価したのが,本報告である。
その効果は極めて秀逸で,夜間においては血糖値が70~180 mg/dLの範囲を推移する時間の割合が90%(中央値)を超えている時間帯もみられる。また,低血糖となる時間の割合は実に1%台である。
本報告の結果をみる限り,医療コストの問題が解決されれば,1型糖尿病患者において本機器による治療がゴールドスタンダードになる可能性がある。しかしながら,その際にも,ポンプトラブルの際の対処方法(ペンによるインスリン頻回注射,従来のポンプの使用法)についてマスターした人のみ本機器を使用するなどの対策を講じる必要がある。また,現時点の機器では,食後や,運動前後の血糖コントロールにおいて課題を抱えているのは事実であるが,さらに洗練された機器の登場にも期待したい。【西村理明

●目的 1型糖尿病患者において,クローズドループインスリン注入システムは,センサー付きインスリンポンプにくらべ,血糖コントロールを改善するか検討した。
一次エンドポイントは,血糖値が目標範囲内(70~180 mg/dL)を推移した時間の割合。
二次エンドポイントは,血糖値>180 mg/dLを推移した時間の割合,血糖値,HbA1c,血糖値<70 mg/dLとなった時間の割合,血糖値<54 mg/dLとなった時間の割合。
●デザイン ランダム化,オープン,多施設(米国の7施設),intention-to-treat解析。
●試験期間 ランダム化期間は2018年7月12日~10月9日,試験期間は26週。
●対象患者 1型糖尿病患者168例。平均年齢はクローズドループ群33歳,対照群33歳,糖尿病罹病期間中央値はそれぞれ17年,15年,インスリンポンプ使用は80%,77%,インスリン頻回注射は20%,23%,女性は48%,54%。
採用基準:14歳以上,1型糖尿病の臨床診断を受けた者,HbA1c値の制限はなく,インスリンポンプまたはインスリン頻回注射によるインスリン療法を1年以上受けている者。
●方法 2~8週間のrun-in期間後,対象患者をクローズドループ群(インスリンポンプと持続血糖モニター[CGM]による,クローズドループインスリン注入システムを使用)(112例),対照群(センサー付きインスリンポンプを使用)(56例)に2:1にランダム化。
コンピュータ生成の乱数表を用いて,置換ブロック法により,層別化(施設)によりランダム化した。
一次エンドポイントおよび二次エンドポイントは,ベースライン(2週間の平均)から26週後(6ヵ月平均)の変化を比較した。二次エンドポイントは階層分析により検討した。血糖値はCGMにより評価し,群間差はベースラインの独立変数,年齢,CGMの使用歴,インスリンポンプの使用歴,臨床センター(ランダム効果)により調整した。
●結果 一次エンドポイントである,血糖値が目標範囲内(70~180 mg/dL)を推移した時間の割合は,クローズドループ群で61±17%(ベースライン)から71±12%(6ヵ月平均)に上昇し,対照群では59±14%と変化せず(平均群間差11パーセントポイント,95%CI 9 to 14,p<0.001),クローズドループ群のほうが対照群にくらべ血糖値が目標範囲内となる時間が2.6時間/日増加した。
二次エンドポイントを階層分析により検討した結果,血糖値>180 mg/dLを推移した時間の割合(リスク調整後の群間差-10%,95%CI -13 to -8,p<0.001),平均血糖値(-13 mg/dL,-17 to -8,p<0.001),HbA1c(-0.33%,-0.53 to -0.13,p=0.001),血糖値<70 mg/dLとなった時間の割合(-0.88%,-1.19 to -0.57,p<0.001),血糖値<54 mg/dLとなった時間の割合(-0.10%,-0.19 to -0.02,p=0.02)のいずれにおいても,クローズドループ群のほうが対照群にくらべ良好であった。
クローズドループ群における6ヵ月間にわたるクローズドループシステム使用率の中央値は90%であった。
有害事象はクローズドループ群14%,対照群4%で認められたが,重篤な低血糖イベントは両群で認められなかった。糖尿病性ケトアシドーシスが,ポンプ注入セットの不具合により,クローズドループ群で1例に認められた。
●結論 1型糖尿病患者を対象とした6ヵ月の試験において,クローズドループシステムは,センサー付きインスリンポンプにくらべ,血糖値が目標範囲内を推移した時間の割合が大きいことが示された。