編集:片山茂裕 河盛隆造 景山茂 西尾善彦 西村理明 綿田裕孝
2020年3月現在,1226報収載!
全トライアルリスト
[HOMEに戻る]
Rodbard HW, Rosenstock J, Canani LH, Deerochanawong C, Gumprecht J, Lindberg SØ, Lingvay I, Søndergaard AL, Treppendahl MB, Montanya E, et al.; PIONEER 2 Investigators: Oral Semaglutide Versus Empagliflozin in Patients With Type 2 Diabetes Uncontrolled on Metformin: The PIONEER 2 Trial. Diabetes Care. 2019; 42: 2272-2281. [PubMed]

血糖コントロール不良(平均HbA1c 8.1%)の,顕著な肥満2型糖尿病患者(平均体重91.6 kg)が対象であった。SGLT2阻害薬の主たる作用機序が,尿糖排出量を増やすことであるから,体重の減少,血糖値の降下が期待できよう。本研究においても,平均体重は91.9 kgから26週後には3.8 kg減少し,88.1 kgになったが,その後は体重減少が全く認められていない。52週後も88.1 kgのままであった。この現象は何故であろうか? 患者が食事療法を守らず,過食になったのであろうか? 一方,平均HbA1cは8.1%から26週後には0.9%減少して7.2%になったが,尿糖が続いているにもかからわず,52週後も7.3%であった。この現象は,体重減少がみられなかったからであろうか?
経口GLP-1受容体作動薬は,主に腸や膵でのGLP-1受容体を刺激し,食事摂取時の腸の働きを抑え,食事内容物の消化,吸収を遅延させる,脳を介して食欲を抑制する,満腹感を高める,などの効果を発揮することが期待されている。本研究では,体重減少,HbA1cの改善は,SGLT2阻害薬とほぼ同等の効果が認められたが,やはり26週後以降には,そのさらなる改善はみられなかった。
臨床現場においては,HbA1cなどが目標値に達しない際には,次の一手として,どのような薬剤をパートナーに選択し実行するか,科学的根拠を踏まえ熟慮し,患者にその相互作用を分かりやすく伝えて,よりよい効果を発揮するようにしたい。 【河盛隆造

●目的 metformin(≧1,500 mg)投与下でコントロール不良の2型糖尿病患者において,経口GLP-1受容体作動薬semaglutideの有効性と安全性をSGLT2阻害薬empagliflozinと比較した。
一次エンドポイントはベースラインから26週後までのHbA1cの変化。
二次エンドポイントはベースラインから26週後までの体重の変化。
●デザイン ランダム化,オープン,多施設(108施設,12ヵ国),第IIIa相。
●試験期間 試験(治療)期間は52週,追跡期間は5週。
●対象患者 metformin(≧1,500 mg)投与下の成人2型糖尿病患者822例。
平均年齢58歳,女性49.5%,HbA1c 8.1%,空腹時血糖172.8 mg/mL,体重91.6 kg,糖尿病罹病期間7.4年。
登録基準:HbA1c 7.0~10.5%。
除外基準:90日前以内の糖尿病/肥満に対する薬物治療歴のある例(但し,metforminや短期間[≦14日]インスリン投与例は除外しない),腎不全(eGFR<60mL/分/1.73 m2),眼底撮影/拡張眼底検査により診断された緊急治療を要する増殖網膜症または黄斑症,膵炎の既往。
●方法 対象患者を経口semaglutide群(412例),empagliflozin群(410例)にランダム化。
経口semaglutideは3 mgより開始し,4週後に7 mg,8週後に14 mgまで漸増した。経口投与は1日朝1回,朝食/他の薬剤服用の30分以上前の空腹時とした(飲料水≦120 mL)。
empagliflozinは10 mg を1日 朝1回より開始し,8週後に25 mgまで増量した。
“治療方針estimand”(試験治療薬中止あるいはレスキュー治療導入に関わらず,割付けした全例を含む: intention-to-treat解析)および“治療薬estimand” (レスキュー治療導入例を除外し,全試験期間を通して治療薬を投与した試験完遂の患者のみ含む)による解析を行った。
●結果 試験を完遂したのは,経口semaglutide群97.1%,empagliflozin群94.4%であった。
一次エンドポイントである26週後におけるHbA1cは,経口semaglutide群でempagliflozin群にくらべ,有意に低下した(治療方針estimand: -1.3% vs. -0.9%,推定治療差[ETD] -0.4%[95%CI –0.6 to -0.3],p<0.0001)。HbA1cに関する治療差は,26週後には治療薬estimandによる検討により,経口semaglutideのempagliflozineに対する優越性が認められ(-1.4% vs. -0.9%,ETD -0.5%,95%CI -0.7 to -0.4,p<0.0001),52週後では両estimandで経口semaglutideのempagliflozinに対する優越性が認められた。
26週後の体重については,治療方針estimandでは経口semaglutideの優越性は認められなかったが,治療薬estimandによる52週後の体重は経口semaglutideがempagliflozinに比べて有意に低下した(治療薬estimand -4.7 vs. -3.8 kg, p=0.0114)。
有害事象は両群で同程度であったが,消化管の有害事象は,経口semaglutide群で多くみられた(嘔気:21例 vs. 2例,嘔吐:11例 vs. 1例)。
●結論 metforin投与下でコントロール不良の2型糖尿病患者において,26週後では,HbA1cの低下における経口semaglutide群のempagliflozin群に対する優越性が認められたが,体重については優越性は示されなかった。52週後には,HbA1cおよび体重(治療薬estimand)ともに,経口semaglutide群でempagliflozin群にくらべて有意に減少した。経口semaglutideの忍容性は良好であり,他のGLP-1受容体作動薬で確立されている安全性プロファイルの範囲内であった。