編集:片山茂裕 河盛隆造 景山茂 西尾善彦 西村理明 綿田裕孝
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Pieber TR, Bode B, Mertens A, Cho YM, Christiansen E, Hertz CL, Wallenstein SOR, Buse JB, Akın S; PIONEER 7 investigators: Efficacy and safety of oral semaglutide with flexible dose adjustment versus sitagliptin in type 2 diabetes (PIONEER 7): a multicentre, open-label, randomised, phase 3a trial. Lancet Diabetes Endocrinol. 2019; 7: 528-539. [PubMed]

本研究は糖尿病治療薬としての注射薬として有用性が明らかにされているGLP-1受容体作動薬semaglutideを経口投与して,その効果をDPP-4阻害薬sitagliptinと比較検討した研究である。すでにsemaglutideの内服治療の有効性は報告されているが,本研究では少量からスタートして,その効果と認容性を検討しながら増量していくという実臨床での使用に即した投与プロトコールが採用されている点,HbA1c 7%未満への到達率,体重減少というこの薬剤に期待される効果を評価項目としている点,そして日常臨床でもっとも使用頻度の高いsitagliptinを対照薬としている点において,本研究の結果は非常に興味深い。
HbA1c 7%未満達成率がITT解析で58%(vs. sitagliptin 25%),体重-2.6 kg(vs. sitagliptin-0.7 kg)という結果は,GLP-1受容体作動薬の注射での治療に匹敵する効果である。この効果を内服で得られるというのは,糖尿病治療の非常に有用なツールがまた1つ増えたといえる。願わくは,医療費負担面で注射薬なみで収まることと,より簡便な服用方法が開発されることである。【西尾善彦

●目的 コントロール不良の2型糖尿病患者において,適宜用量調整による経口GLP-1受容体作動薬semaglutide 1日1回の有効性と安全性を,固定用量の経口DPP-4阻害薬sitagliptin 100 mg 1日1回と比較した。
一次エンドポイントは52週後におけるHbA1c<7%の達成率。
二次エンドポイントはベースラインから52週後までの体重変化。
●デザイン ランダム化,オープン,多施設(81施設,10ヵ国),第IIIa相。
●試験期間 登録期間は2016年9月20日~2017年2月7日,試験(治療)期間は52週。
●対象患者 1~2種類の血糖降下薬(安定用量)でコントロール不良の2型糖尿病(診断後≧90日)患者504例。
男性57%,平均年齢57.4歳,糖尿病罹病期間8.8年,HbA1c 8.3%,体重88.6 kg,BMI 31.5 kg/m2
登録基準:18歳以上(韓国は19歳以上),HbA1c 7.5~9.5%, 1~2種類の血糖降下薬(metformin,SU薬,SGLT2阻害薬,またはチアゾリジンジオン系)をスクリーニング前90日間以上使用,HbA1c<7.0%を治療目標に設定可能な者。
除外基準:腎不全(eGFR<60mL/分/1.73m2),心不全(NYHA心機能分類IV),緊急治療を要する増殖網膜症または黄斑症,膵炎の既往,多発性内分泌腺腫症2型/甲状腺髄様癌の家族歴/既往,過去5年以内の悪性新生物。
●方法 2週間のスクリーニング後,対象患者を経口semaglutide群(253例),経口sitagliptin群(251例)に1:1にランダム化。その際,基礎治療の血糖降下薬による層別化を実施。
経口semaglutideは,3 mgより開始し,8週ごとにHbA1cの値および消化管の認容性(嘔気または嘔吐)を評価し,3 mg,7 mg,または14 mgへと,適宜用量を調整するものとした(各評価時にHbA1c<7%の場合は,用量はそのまま維持し,HbA1c≧7%で,中等度/重度の嘔気または嘔吐の報告が3日以上ない場合はひとつ上の用量に変更)。
経口sitagliptinは固定用量100 mgを1日1回投与。

semaglutide群とsitagliptin群の比較において,“治療方針estimand”(試験治療薬中止およびレスキュー治療導入に関わらず,割付けした全例を含む: intention-to-treat解析)および“治療薬estimand” (治療薬中止例およびレスキュー治療導入例を除外し,治療薬を投与した患者のみ含む)による解析を行った。
●結果 sitagliptin群の1例を除き,全例が試験薬を1剤以上投与した。試験完遂は,経口semaglutide群95%(241例),経口sitagliptin群97%(244例)。
HbA1c<7%の達成率は,semaglutide群でsitagliptin群に比べ,有意に高かった(治療方針estimand: 58%[134/230例] vs. 25%[60/238例],治療薬estimand: 63%[123/196例] vs. 28%[52/184例])。HbA1c<7%達成のオッズ比(OR)は,semaglutide群でsitagliptin群に比べ,有意に良好であった(治療方針estimand: OR 4.40,95%CI 2.89 to 6.70,p<0.0001,治療薬estimand: OR 5.54,3.54 to 8.68,p<0.0001)。
ベースラインから52週後までの体重の変化は,経口semaglutide群でsitagliptin群に比べ,有意に減少した(体重の推定平均変化:治療方針estimand: -2.6 kg[SE 0.3] vs. -0.7 kg[SE 0.2],推定治療差[ETD] -1.9 kg,95%CI -2.6 to -1.2,p<0.0001,治療薬estimand: -2.9 kg[SE 0.3] vs. -0.8 kg[SE 0.3],ETD -2.2 kg,-2.9 to -1.5,p<0.0001)。
有害事象の発生は,経口semaglutide群78%(197/253例),sitagliptin群69%(172/250例)であり,経口semaglutide群では嘔気がもっとも多い有害事象であった(21%[53例])。sitagliptin群では,試験期間中に死亡が2例あった。
●結論 有効性と忍容性に基づいた用量調整による経口semaglutideは,経口sitagliptinに比べ,血糖コントロールおよび体重減少が良好であり,安全性プロファイルも静注GLP-1受容体作動薬と同様であることが示唆された。