編集:片山茂裕 河盛隆造 景山茂 西尾善彦 西村理明 綿田裕孝
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Pratley R, Amod A, Hoff ST, Kadowaki T, Lingvay I, Nauck M, Pedersen KB, Saugstrup T, Meier JJ, ; PIONEER 4 investigators: Oral semaglutide versus subcutaneous liraglutide and placebo in type 2 diabetes (PIONEER 4): a randomised, double-blind, phase 3a trial. Lancet. 2019; 394: 39-50. [PubMed]

ペプチドを経口摂取すると,胃で失活してしまうのは常識である。しかし,ペプチドを胃の粘膜表面で失活させずに,胃粘膜を通して体内に吸収させることを可能にする技術が開発された。それを利用した薬剤が,今回検証された経口GLP-1受容体作動薬の経口semaglutideである。
本研究では,metformin 1,500mg/日以上が投与されている(SGLT2阻害薬の併用は可)2型糖尿病患者において,経口semaglutideを追加した場合の,HbA1cならびに体重減少について,プラセボ追加,もしくはliraglutide皮下投与追加に対して優越性があるか否かを検討した。
その結果,HbA1cの低下に関してはプラセボ群に対して,体重の減少に関しては,プラセボ群のみならず,liraglutide皮下投与に対しても,優越性が示された。
経口semaglutideは,liraglutide皮下投与に対してHbA1cの改善効果で同等,体重減少効果においては優れていることになる。
これは,小腸で分泌され門脈内に流入するというGLP-1の本来の体内動態に近い(経口semaglutideは胃で吸収され,門脈内に流入する)という理由によるのか,それ以外の理由によるのか,徐々に明らかにされていくであろう。本剤は,注射への心理的ハードルが高い日本人において,相当数が使用される可能性があり,その動向から目が離せない。【西村理明

●目的 metformin(≧1,500 mg)投与下の2型糖尿病患者において,経口GLP-1受容体作動薬semaglutideの有効性をliraglutide皮下投与およびプラセボと比較した。
一次エンドポイントはベースラインから26週後までのHbA1cの変化。
二次エンドポイントはベースラインから26週後までの体重の変化。
●デザイン ランダム化,二重盲検,多施設(100施設,12ヵ国),第IIIa相。
●試験期間 登録期間は2016年8月10日~2017年2月7日,試験(治療)期間は52週。
●対象患者 metformin(≧1,500 mg)投与下(SGLT2阻害薬の併用は許可されていた)の2型糖尿病患者711例。
平均年齢56歳,女性48%,HbA1c 8.0%,空腹時血糖167.2 mg/mL,BMI 33.0 kg/m2,糖尿病罹病期間7.6年。
登録基準:18歳以上,HbA1c 7.0~9.5%。
除外基準:スクリーニングの90日前以内の糖尿病/肥満に対する薬物治療歴(metformin,SGLT2阻害薬,短期間インスリン投与[≦14日]は除く),腎不全(eGFR<60mL/分/1.73m2),緊急治療を要する増殖網膜症または黄斑症,急性/慢性膵炎の既往。
●方法 対象患者を経口semaglutide群(285例),liraglutide皮下投与群(284例),プラセボ群(142例)に2:2:1にランダム化。その際,基礎治療(metformin単剤,metformin+SGLT2阻害薬併用)および出身国(日本/日本以外)による層別化を実施。
semaglutideは3 mgより開始し,4週後に7 mg,8週後に14 mg(維持量)まで漸増。朝1日1回,空腹時に経口投与し(飲料水≦コップ0.5杯),投与後30分間は飲食/他の薬剤の服用を控えることとした。
liraglutide皮下投与は0.6 mg 1日1回より開始し,1週後に1.2 mg,2週後に1.8 mg(維持用量)まで漸増。
全例が維持用量を全52週間投与するものとし,基礎治療は試験期間を通じて継続。
有効性は,“治療方針estimand”(試験治療薬中止およびレスキュー治療導入に関わらず,割付けした全例を含む: intention-to-treat解析)および“治療薬estimand” (治療薬中止例およびレスキュー治療導入例を除外し,治療薬を投与した患者のみ含む)による解析を行った。
●結果 試験を完遂したのは,経口semaglutide群97%,liraglutide皮下投与群96%,プラセボ群94%であった。
一次エンドポイントである26週後までのHbA1cの変化は,経口semaglutide群-1.2%(SE 0.1),liraglutide皮下投与群-1.1%(SE 0.1),プラセボ群-0.2%(SE 0.1)であった。HbA1cの変化について,治療方針estimandの検討では,経口semaglutide群で,liraglutide皮下投与群に対して非劣性(推定治療差[ETD]-0.1%,95%CI,-0.3 to 0.0,p<0.0001),プラセボ群に対して優越性(ETD -1.1%,-1.2 to -0.9,p<0.0001)を示した。
また,治療薬estimandの検討では,HbA1cにおいて,経口semaglutide群で,liraglutide皮下投与群(ETD-0.2%,95%CI,-0.3 to -0.1,p=0.0056),プラセボ群(ETD -1.2%,-1.4 to -1.0,p<0.0001)よりも有意に低下した。
26週後の体重の変化について,治療方針estimandの検討では,経口semaglutide群(-4.4 kg[SE 0.2])で,liraglutide皮下投与群(-3.1 kg[SE 0.2],ETD -1.2 kg,95%CI,-1.9 to -0.6,p=0.0003),プラセボ群(-0.5 kg[SE 0.3],ETD -3.8 kg,-4.7 to -3.0,p<0.0001)に対する優越性が認められた。同じく治療薬estimandの検討では,経口semaglutide群で,liraglutide皮下投与群(ETD -1.5 kg,95%CI,-2.2 to -0.9,p<0.0001)およびプラセボ群(ETD -4.0 kg,-4.8 to -3.2,p<0.0001)に比べて有意に減少した。
有害事象の発生は,経口semaglutide群229例(80%),liraglutide皮下投与群211例(74%),プラセボ群95例(67%)であった。
●結論 HbA1cの低下において,経口semaglutideはliraglutide皮下投与に対して非劣性を示し,プラセボに対して優越性を認めた。また,体重減少においても,経口semaglutideはliraglutide皮下投与およびプラセボに対して優越性を認めた。経口semaglutideの安全性と忍容性はliraglutide皮下投与と同様であった。経口semaglutideは継続して行う必要のある糖尿病治療において,GLP-1受容体作動薬のより早期からの投与をもたらす可能性が示唆された。