編集:片山茂裕 河盛隆造 景山茂 西尾善彦 西村理明 綿田裕孝
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Mosenzon O, Blicher TM, Rosenlund S, Eriksson JW, Heller S, Hels OH, Pratley R, Sathyapalan T, Desouza C, Abramof R; PIONEER 5 Investigators: Efficacy and safety of oral semaglutide in patients with type 2 diabetes and moderate renal impairment (PIONEER 5): a placebo-controlled, randomised, phase 3a trial. Lancet Diabetes Endocrinol. 2019; 7: 515-527. [PubMed]

腎機能障害があると,血糖降下薬の使用に様々な制限が生じ,治療に難渋することが多い。metforminはeGFRが30 mL/分/1.73m2以上の場合に,SGLT2阻害薬はeGFRが45 mL/分/1.73m2以上の場合に使用するように勧められている。DPP-4阻害薬は腎機能に応じて用量を減じて使用が可能なことが多い。一方,従来の皮下注で用いるGLP-1受容体作動薬はstage 4までの腎機能低下例には,用量を調節することなく使用可能である。
経口semaglutideは,胃からの吸収を増強するためにsodium N-(8-[2-hydroxybenzoyl]mino)caprylateが加えられた製剤である。糖尿病がない場合には腎機能障害があっても,薬物動態には影響がないことが報告されているが,腎機能障害を有する糖尿病患者での検討はなかった。PIONEER 5は,中等度の腎機能障害を有する2型糖尿病患者で経口semaglutideを用いて有効性と安全性をみるために初めて行われた試験である。その結果,stage 3Aおよびstage 3B,すなわちeGFRが30~60 mL/分/1.73m2の場合には十分な血糖降下作用が認められ,有害事象は腎機能障害がない2型糖尿病に比べてやや多いものの許容可能な程度であった。腎機能障害のある2型糖尿病患者での新しい治療のオプションとなることが期待される。26週という短期間の検討のため,eGFRがほぼ一定で推移したということは確認されたが,皮下注のGLP-1受容体作動薬で報告されているような腎保護作用が認められるかどうか,今後長期の検討で明らかにされることが望まれる。【片山茂裕

●目的 中等度腎障害を伴う2型糖尿病患者において,経口semaglutideの有効性と安全性をプラセボと比較した。
一次エンドポイントはベースラインから26週後までのHbA1cの変化。
二次エンドポイントはベースラインから26週後までの体重の変化。
●デザイン 無作為,二重盲検(患者と治験責任医師を盲検化),プラセボ対照,多施設(88施設,8ヵ国),第IIIa相。
●試験期間 スクリーニング期間は2016年9月20日~2017年9月29日,治療期間は26週,追跡期間は治療後5週間。
●対象患者 中等度腎障害(推算糸球体濾過量[eGFR] 30~59 mL/分/1.73m2,慢性腎臓病疫学共同研究[CKD-EPI] stage 3])を伴う2型糖尿病患者324例。
平均年齢70歳,女性52%,HbA1c 8.0%,糖尿病罹病期間14.0年,体重90.8 kg,BMI 32.4 kg/m2。stage 3BのCKD 40%,metformin使用75%,SU薬使用40%,基礎インスリン使用35%。
登録基準:18歳以上,HbA1c 7.0~9.5%,スクリーニング前にmetforminかつ/またはスルホニル尿素薬,または基礎インスリン(metforminの使用の有無問わず)のうち1つ以上のレジメンを90日以上実施している者。
除外基準:急速進行性腎不全または既知の糖尿病性アルブミン尿(>2,200 mg/24 hまたは>2,200 mg/g),多発性内分泌腫瘍症2型または甲状腺髄様がんの既往/家族歴,過去5年以内の悪性腫瘍の既往,膵炎の既往,過去180日以内の心筋梗塞,脳卒中,または不安定狭心症/一過性脳虚血発作の既往,心不全(NYHA心機能分類IV),増殖網膜症または黄斑症(ランダム化前90日以内の眼底撮影または散瞳しての眼底検査にて診断され,緊急治療を要する者)。
●方法 2週間のスクリーニング後,対象患者を経口semaglutide群(163例)とプラセボ群(161例)に1:1にランダム化。
基礎血糖降下薬(metformin単剤,SU薬[metformin併用の有無は問わず],基礎インスリン[metformin併用の有無は問わず]),腎機能(eGFR 45~59 mL/分/1.73m2[CKD-EPI stage 3A],30~44 mL/分/1.73m2[stage 3B])による層別化を実施。
経口semaglutideは3 mg 1日1回から開始し,4週後までに7 mg 1日1回,8週後までに14 mg 1日1回へと漸増。
基礎治療は全例で継続。

有効性の評価における2つのestimandは,“治療方針estimand”(治療中止またはレスキュー治療導入に関わらず,割付けした全例を含む: intention-to-treat解析)および“治療薬estimand”(レスキュー治療導入例を除外)と定義し,優越性は“治療方針estimand ”により検証した。
●結果 26週間の治療完遂は,経口semaglutide群82%,プラセボ群88%であった。
治療方針estimandによる評価では,26週後のHbA1c値の変化は,経口semaglutide群-1.0%(SE 0.1,-11 mmol/mol[SE 0.8]),プラセボ群-0.2%(SE 0.1,-2 mmol/mol[SE 0.8])であり,経口semaglutideのプラセボに対する優越性が認められた(推定治療差-0.8%,95%CI -1.0 to -0.6,p<0.0001)。治療薬estimandによる評価でも,HbA1c値の変化について,経口semaglutide群-1.1%(SE 0.1,-12 mmol/mol[SE 0.8]),プラセボ群-0.1%(SE 0.1,-1 mmol/mol[SE 0.8])と,有意な群間差が認められた(推定治療差-1.0%,95%CI -1.2 to -0.8,p<0.0001)。
26週後の体重の平均変化においても,治療方針estimandによる評価では,経口semaglutide群-3.4 kg(SE 0.3),プラセボ群-0.9 kg(SE 0.3)で,経口semaglutideのプラセボ群に対する優越性が認められた(推定治療差-2.5 kg,95%CI -3.2 to -1.8,p<0.0001)。治療薬estimandによる評価でも,体重の平均変化について,経口semaglutide群-3.7 kg(SE 0.3),プラセボ群-1.1 kg(SE 0.3)と,有意な群間差が認められた(推定治療差-2.7 kg,95%CI -3.5 to -1.9,p<0.0001)。
経口semaglutide群では,プラセボ群に比べ,有害事象発現率が高く(120例[74%] vs. 105例[65%]),有害事象による治療中止率が高かった(24例[15%] vs. 8例[5%])。
もっとも多くみられた事象は,軽度~中等度の消化管イベント(おもに嘔気)で,経口semaglutide群でプラセボ群に比べて多かった(31例[19%] vs. 12例[7%])。治療期間中の治療に関連しない死亡は3例であった(経口semaglutide群1例,プラセボ群2例)。
●結論 経口semaglutideは,中等度腎障害を伴う2型糖尿病患者に対して有用な可能性が示された。また,安全性については,腎臓に対する安全性も含め,他のGLP-1受容体作動薬と同様の結果が示された。