編集:片山茂裕 河盛隆造 景山茂 西尾善彦 西村理明 綿田裕孝
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Kang EY, Chen TH, Garg SJ, Sun CC, Kang JH, Wu WC, Hung MJ, Lai CC, Cherng WJ, Hwang YS. Association of Statin Therapy With Prevention of Vision-Threatening Diabetic Retinopathy. JAMA Ophthalmol. 2019; 137: 363-71. [PubMed]

糖尿病治療では,血糖応答のみならず,血圧,血中脂質レベルの正常化を維持し,糖尿病合併症発症・進展防止に努めることはいうまでもない。疫学調査により,糖尿病患者では,血清コレステロール値高値と硬性白斑のある網膜症が相関することが認められていた。
FIELD研究では,fenofibrateが非使用例に比べ,レーザー治療の必要性を有意に抑制したことが証明された。さらにACCORD-EYE研究は,simvastatin単独では糖尿病網膜症の進行を抑制できなかったが,simvastatinとfenofibrateの併用が有意に進行を抑制したことを認めた。
今回のコホート研究は,多人数,長期間の解析により,スタチンの有用性を証明した貴重な成績といえよう。【河盛隆造

●目的 脂質異常症を有する糖尿病患者において,スタチン療法と糖尿病網膜症への進展との関連を検証した。
評価項目は糖尿病網膜症(硝子体出血,牽引性網膜剥離),視力を脅かす糖尿病網膜症に対する治療(網膜レーザー治療,硝子体内注射,硝子体茎切除術)。
●デザイン 集団ベースコホート研究。
●試験期間 登録期間は1998年1月1日~2013年12月31日。解析実施は2018年5月1~31日。
平均追跡期間は,スタチン投与群7.6年,非投与群7.3年。
●対象患者 40歳以上の脂質異常症を有する2型糖尿病患者219,359例(スタチン投与群199,760例,非投与群19,599例)。解析対象は,傾向スコアでマッチングし,各群18,947例とした。平均年齢はスタチン投与群61.5歳,非投与群61.0歳,男性はそれぞれ44.9%,45.0%。
除外基準:血清中LDL-C<100mg/dLまたは血清中総コレステロール<160mg/dL,3ヵ月以内のスタチン使用,網膜疾患(糖尿病網膜症,網膜血管閉塞,網膜層の分離,網膜変性,脈絡網膜の炎症)の既往,あるいは硝子体網膜インターベンション(レーザー治療,硝子体内注射,強膜バックリング,硝子体茎切除術)歴,肝硬変(安全面で,スタチン使用を妨げる可能性があるため)。
●方法 台湾の国民健康保険研究データベース(National Health Insurance Research Database)を使用。
アウトカムの発生について,スタチン投与例と,非投与例を比較するため,対象を傾向スコアで1:1にマッチングさせた。
●結果 追跡期間中の糖尿病網膜症への進展は,スタチン投与群2,004例(10.6%),非投与群2,269例(12.0%)であった。
スタチン投与群では,非投与群にくらべ,糖尿病性網膜症(HR 0.86[95%CI 0.81-0.91]),非増殖性糖尿病網膜症(HR 0.92[0.86-0.99]),増殖性糖尿病網膜症(HR 0.64[0.58-0.70]),硝子体出血(HR 0.62[0.54-0.71]),牽引性網膜剥離(HR 0.61[0.47-0.79]),黄斑浮腫(HR 0.60[0.46-0.79])の発症リスクが有意に低かった。同様に,視力を脅かす糖尿病網膜症に対するインターベンションの実施率も,非投与群にくらべ,スタチン投与群で有意に低かった(網膜レーザー治療 HR 0.71[0.65-0.77],硝子体内注射 HR 0.74[0.61-0.89],硝子体茎切除術 HR 0.58[0.48-0.69])。
スタチン投与群では,非投与群にくらべ,主要有害心血管イベント(HR 0.81[0.77-0.85]),新規発症の糖尿病性神経障害(HR 0.85[0.82-0.89]),新規発症の足部潰瘍(HR 0.73[0.68-0.78])の発症リスクが有意に低かった。
●結論 脂質異常症を有する2型糖尿病の台湾人患者において,スタチン投与により,糖尿病網膜症への進展リスク,視力を脅かす糖尿病性網膜症のための治療の必要性が減少した。