本報告にあるCARMELINA(the Cardiovascular and Renal Microvascular Outcome Study With Linaglipin)は,心血管(CV)および腎リスクの高い2型糖尿病患者において行われた,linagliptinのCVおよび腎アウトカム試験である。虚血性心疾患の既往歴が約58%に,心不全の既往歴が約27%に,高血圧が約91%に,微量アルブミン尿が約42%に,顕性アルブミン尿が約38%に,45≦eGFR<60 mL/分/1.73m2が約20%に,30≦eGFR≦45 mL/分/1.73m2が約28%に,eGFR<30mL/分/1.73m2が約15%に認められる患者群を対象とし,通常治療へlinagliptinまたはプラセボを追加投与して,2.2年間追跡した。3P-MACEは両群で差がなく,プラセボに対するlinagliptinの非劣性が証明された。他のDPP-4阻害薬で行われたCVアウトカム試験であるSAVOR-TIMI 53やEXAMINE,TECOS同様 ,通常治療へのDPP-4阻害薬の追加投与はプラセボ追加投与に比べて,3P-MACEを減少させはしなかったが,少なくとも増加をさせなかった。特に今回のCARMELINA試験には,腎機能低下を有する2型糖尿病患者がかなり含まれているが,このような患者群でも低血糖の頻度は増加せず,胆汁排泄経路を有するlinagliptinの安全性が再確認できたといえる。ただ,腎複合エンドポイントではlinagliptinの腎保護作用が必ずしもはっきり示せなかった点は残念であった。【片山茂裕】
●目的 | 心血管(CV)および腎リスクの高い2型糖尿病患者において,linagliptinのCVおよび腎アウトカムを検討した。 主要評価項目は,CV死+非致死的心筋梗塞+非致死的脳卒中。副次評価項目は,末期腎疾患(ESRD)+腎不全死+推算糸球体濾過量(eGFR)の低下≧40%。 |
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●デザイン | 無作為,二重盲検,プラセボ対照,多施設(27ヵ国,605施設)。 |
●試験期間 | 登録期間は2013年8月~2016年8月。2018年1月18日追跡終了。追跡期間は中央値2.2年。 |
●対象患者 | CVリスクと腎リスクの高いHbA1c 6.5~10.0%の2型糖尿病患者6,979例。 登録基準:CV高リスク(冠動脈疾患・脳卒中・末梢動脈疾患の既往と尿中アルブミン-クレアチニン比(UACR)>30mg/g),腎高リスク(eGFR 45~75mL/分/1.73m2+UACR>200mg/gまたはUACRにかかわらずeGFR 15~45mL/分/1.73m2)。 除外基準:ESRD(eGFR<15mL/分/1.73m2,維持透析)。 |
●方法 | linagliptin 5mg群(3,494例),プラセボ群(3,485例)に1:1にランダム化し,通常治療に追加して1日1回投与。 プラセボに対するlinaglitideの非劣性基準は,ハザード比(HR)の両側95%CIの上限<1.3とした。 |
●結果 | 試験を完遂したのは98.7%であった。 主要評価項目の発生率は,linagliptin群12.4%(発生率5.77件/100人・年),プラセボ群12.1%(発生率5.63件/100人・年)で,絶対発生率差は0.13件/100人・年であった(HR 1.02,95%CI 0.89-1.17,非劣性p<0.001)。 副次評価項目の発生率は,linagliptin群9.4%(発生率4.89件/100人・年),プラセボ群8.8%(発生率4.66件/100人・年)で,絶対発生率差は0.22件/100人・年であった(HR 1.04,95%CI 0.89-1.22,p=0.62)。 linagliptin群とプラセボ群で,有害事象の発生率はそれぞれ77.2%,78.1%,低血糖エピソードを認めた患者の割合は29.7%,29.4%,急性膵炎イベントの発生率は0.3%,0.1%であった。 |
●結論 | CVリスクと腎リスクの高い2型糖尿病患者において,通常治療へのlinagliptin追加はプラセボ追加に対し,複合CVアウトカムについて非劣性であった。 |
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