empagliflozinについて検討したEMPA-REG OUTCOME試験に続き,canagliflozinに関するCANVAS Programでも同様な心血管疾患や腎症の減弱効果が確認されたといえるが,その効果に若干の違いがあり,CANVAS Programには一次予防の集団が34%含まれているためと解釈されていた。
本報告は,CANVAS Programの参加者を一次予防と二次予防に分けて解析したものである。一次予防集団の割合は34%であり,イベントの発症数も減少するため,統計的パワーが弱くなったものの,一次エンドポイントの一次予防と二次予防との間に統計的な不均一性は認められなかった。今回の解析人数でも,腎エンドポイントと心不全による入院リスクについては,二次予防群と同等なリスクの減少が一次予防群でも認められ,下肢切断についても二次予防群と同等な一次予防群でのリスクの上昇が認められた。SGLT2阻害薬の心血管疾患の一次予防効果については,DECLARE(Multicenter Trial to Evaluate the Effect of Dapagliflozin on the Incidence of Cardiovascular Events)の結果が待たれる。【片山茂裕】
●目的 | 2型糖尿病患者において,canagliflozinの有効性と安全性を一次予防コホートと二次予防コホートに分けて検討した。 主要評価項目は,心血管(CV)死+非致死的心筋梗塞(MI)+非致死的脳卒中。副次評価項目は,心不全による入院,全死亡,腎複合エンドポイント(推算糸球体濾過量の低下≧40%,腎代替療法の必要性,腎死)。 |
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●デザイン | 無作為,二重盲検,プラセボ対照,多施設(30ヵ国,667施設),intention-to-treat解析。 |
●試験期間 | 追跡期間は平均188週。 |
●対象患者 | 2型糖尿病患者10,142例。 登録基準:HbA1c≧7.0%~≦10.5%,二次予防コホートは≧30歳かつ症候性動脈硬化性CVイベント(脳卒中,MI,不安定狭心症による入院,冠動脈バイパス形成術,経皮的冠動脈インターベンション,末梢血行再建術)+血行動態的に重大な頸動脈または末梢血管疾患の症状または血管疾患による切断,一次予防コホートは≧50歳かつCVイベント既往なし+2つ以上のCVリスク因子(糖尿病罹病期間≧10年,1剤以上の降圧薬投与下の収縮期血圧>140mmHg,現在の喫煙,微量アルブミン尿または顕性アルブミン尿,HDLコレステロール<1mmol/L)。 |
●方法 | CANVAS Programでは,対象患者をcanagliflozin群,プラセボ群にランダム化。 本解析では,3,486例(34%)を一次予防コホート,6,656例(66%)を二次予防コホートに分類し,アウトカムを比較した。 |
●結果 | 一次予防コホートは二次予防コホートに比し,年齢が低く(63 vs. 64歳),女性の割合が高く(45 vs. 31%),糖尿病罹病期間が長かった(14 vs. 13年)。 主要評価項目の発生率は,二次予防コホートのほうが,一次予防コホートよりも高かった(36.9 vs. 15.7件/1000人・年;ハザード比[HR]2.36,95%CI 2.03-2.74,p<0.001)。 全患者において,canagliflozin群ではプラセボ群に比し,主要評価項目の発生率が低く(26.9 vs. 31.5件/1,000人・年;HR 0.86,95%CI 0.75-0.97;非劣性のp<0.001,優越性のp=0.02),一次予防コホート(HR 0.98,95%CI 0.74-1.30)と二次予防コホート(HR 0.82,95%CI 0.72-0.95)で有意な不均一性は認めなかった(相互作用のp=0.18)。 二次予防コホートと一次予防コホートで,腎複合エンドポイント(HR 0.59 vs. 0.63),心不全による入院(HR 0.68 vs. 0.64)のリスク低下度は同等で,下肢切断(HR 2.07 vs. 1.52)のリスク上昇度は同等であった。 |
●結論 | 2型糖尿病患者において,二次予防コホートは一次予防コホートに比し,CVアウトカム発生率が高かったが,canagliflozinのCVアウトカムおよび腎アウトカム低減効果は両コホートで有意差を認めなかった。 |
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