編集:片山茂裕 河盛隆造 景山茂 西尾善彦 西村理明 綿田裕孝
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Ueki K, Sasako T, Okazaki Y, Kato M, Okahata S, Katsuyama H, Haraguchi M, Morita A, Ohashi K, Hara K, et al.; J-DOIT3 Study Group: Effect of an intensified multifactorial intervention on cardiovascular outcomes and mortality in type 2 diabetes (J-DOIT3): an open-label, randomised controlled trial. Lancet Diabetes Endocrinol. 2017; 5: 951-64. [PubMed]

血糖・血圧・脂質の厳格なコントロールを目指した統合的治療の効果を検討した試験ではSteno-2試験が有名であるが,患者数が160名と小規模であり,厳格療法群の到達したHbA1c値も7.9%と不十分であった。J-DOIT3は厚生労働省の戦略研究の一環として2006年に開始され,足掛け11年を要した,わが国から世界に発信できる重要なランダム化比較試験である。2型糖尿病患者において血糖のみならず,血圧・脂質の厳格なコントロールも目指した。
主要評価項目は従来療法群に比べ,強化療法群で有意ではなかったものの,登録時の危険因子で補正後は24%有意に抑制された(HR 0.76,0.59-0.99,P=0.042)。心筋梗塞+脳卒中+全死亡は,強化療法群で有意ではないが26%抑制された(HR 0.74,95%CI 0.54-1.01,P=0.055)。補正前の合併症発症率の抑制に強化療法群と標準療法群で有意差が見られなかった原因は,1つには,標準療法群でも血糖・血圧・脂質が良好にコントロールされていたため,予想以上にイベント発生が少なかったことがあげられる。特に,強化療法群では心筋梗塞や脳卒中による死亡は1例もなく,両群とも死因の約60%ががんであった。副次的評価項目については,強化療法によって腎イベントが32%,眼イベントが14%,有意に抑制された。2型糖尿病に対するより厳格かつ安全な統合的治療により,大血管合併症や死亡の発生率が抑制され,なかでも脳血管イベントが有意に抑制されることが示された。また細小血管合併症についても,特に腎イベントの発生が抑制された。
国内外でさまざまな糖尿病診療ガイドラインが発表され,治療の目標値が定められているが,本研究の結果が明らかになったことで,より厳格な治療を目指す方向に見直しが進む可能性がある。【片山茂裕

●目的 2型糖尿病患者において,血管合併症と死亡の予防のための強化統合的介入の有効性と安全性を検討した。
主要評価項目は大血管イベント(心筋梗塞[MI],冠動脈バイパス術[CABG],経皮的冠動脈形成術[PTCA],脳卒中,頸動脈内膜剥離術,経皮的脳血管形成術,頸動脈ステント留置術)+全死亡。
●デザイン 無作為,多施設(日本,81施設),intention-to-treat解析。
●試験期間 登録期間は2006年6月16日~2009年3月31日。追跡期間は8.5年(中央値)。
●対象患者 45~69歳で,高血圧または/および脂質異常症を有する2型糖尿病患者2,542例。
登録基準:食事および運動療法単独・食事および運動療法+経口糖尿病治療薬(OAD)1剤・食事および運動療法+αグルコシダーゼ阻害薬(α-GI)+別のOAD 1剤による治療下でHbA1c≧6.9%,降圧薬非投与下の随時血圧≧140/90mmHgまたはアンジオテンシンII受容体拮抗薬(ARB)・ACE阻害薬・長時間作用型Ca拮抗薬(CCB)投与下の随時血圧≧130/80mmHg(上記以外の降圧薬投与例は除外),脂質低下薬非投与下のLDL-C≧120mg/dL・トリグリセリド(TG)≧150mg/dL・HDL-C<40mg/dL。
除外基準:薬物療法下のコントロール不良高血圧(≧200/120mmHg),インスリン療法,非糖尿病腎症,1型糖尿病または2型糖尿病以外の発症機序によることが強く疑われる他の糖尿病,抗GAD抗体陽性,LDL-C≧200mg/dL,腎実質性高血圧以外の二次性高血圧の疑い,脂質代謝異常の強力な家族歴を伴う遺伝性脂質異常の疑い,ARB・ACE阻害薬・長時間作用型CCB以外の降圧薬投与(降圧以外の目的での投与を除く),3剤以上の降圧薬投与(降圧以外の目的での投与を除く),増殖性網膜症以外の重篤な網膜症,腎不全(血清クレアチニン≧2.0mg/dL[男性],≧1.5mg/dL[女性]),心不全既往または現在の心不全,妊娠中または妊娠の可能性,MI・狭心症(または狭心症既往)・CABG歴・PTCA歴・他の心疾患・左室肥大の心電図所見,異常心電図所見(孤立性期外収縮または右脚ブロックを除く)のいずれかに合致+脳性ナトリウム利尿ペプチド≧100pg/mL,主治医による不適格の判断。
●方法 対象患者を性別,年齢,HbA1c,心血管疾患既往で層別化後,標準療法群(1271例),強化療法群(1271例)に1:1にランダム化。
標準療法群の目標値は,HbA1c<6.9%,血圧<130/80mmHg,LDL-C<120mg/dL(冠動脈疾患[CAD]既往がある場合は<100mg/dL),HDL-C≧40mg/dL,TG<150mg/dLとした。
強化療法群の目標値は,HbA1c<6.2%,血圧<120/75mmHg,LDL-C<80mg/dL(CAD既往がある場合は<70mg/dL),HDL-C≧40mg/dL,TG<120mg/dLとした。
強化療法群では,食事療法として理想体重(IBW)1kgあたりの総エネルギー摂取量をBMI≧25の例は25kcal,BMI<25の例は27kcalとし,運動療法として1日あたり2回以上の15~30分間の歩行を指示し,禁煙指導を行い,定期受診時に喫煙数を報告させた。
●結果 強化療法群の2例はランダム化後に不適格となったため,解析からは除外した。
標準療法群(1,271例)と強化療法群(1,269例)の平均年齢はそれぞれ59.1/58.9歳,男性62/62%,糖尿病罹病期間8.47/8.58年,喫煙者21/26%,心血管疾患の既往例11/12%,BMI 24.9/24.8 kg/m2,HbA1c 7.98/8.01%,SBP 134.1/133.5 mmHg,DBP 80.0/79.3 mmHg,LDL-C 125.6/125.5 mg/dL,HDL-C 54.5/54.4 mg/dL,トリグリセリド123/121/mg/dLであった。ベースラインのすべての糖尿病治療薬の使用は78.7/75.1%,うちSU薬は41.5/40.3%,metforminは15.7/13.8%,α-GIは28.8/29.0%。すべての降圧薬の使用は43.4/44.3%,すべての脂質降下薬の使用は36.1/32.5%であった。
強化療法群は標準療法群に比し,介入中の平均HbA1c(6.8 vs. 7.2%),血圧(123/71 vs. 129/74mmHg),LDL-C(85 vs. 104mg/dL)が有意に低値であった(すべてp<0.0001)。
主要評価項目の発症は,強化療法群109例,標準療法群133例で,有意差は認めなかった(ハザード比[HR]0.81,95%CI 0.63-1.04,p=0.094)。
事後解析において,強化療法群と標準療法群で全死亡と冠動脈イベント(MI+CABG+PTCA)のリスクに有意差はなかったが(HRはそれぞれ1.01,0.86),脳血管イベント(脳卒中+頸動脈内膜剥離術+経皮的脳血管形成術+頸動脈ステント留置術)のリスクは強化療法群で標準療法群よりも有意に低かった(HR 0.42,95%CI 0.24-0.74,p=0.002)。
強化療法群で標準療法群に比べ非重症低血糖(41 vs. 22%,p<0.001)と浮腫(15 vs. 10%,p=0.0001)が多かったことを除き,主要有害事象の頻度に群間差は認められなかった。
●結論 2型糖尿病患者において,冠動脈イベント,脳血管イベント,全死亡の予防における強化統合的介入の有効性は認められなかったが,脳血管イベントの予防に対する潜在的効果が示唆された。