編集:片山茂裕 河盛隆造 景山茂 西尾善彦 西村理明 綿田裕孝
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Tobias DK, Pan A, Jackson CL, O'Reilly EJ, Ding EL, Willett WC, Manson JE, Hu FB: Body-mass index and mortality among adults with incident type 2 diabetes. N Engl J Med. 2014; 370: 233-44. [PubMed]

糖尿病患者では,正常体重の者に比べてBMI高値例で死亡率が低下する“肥満パラドックス”があるのではないかという報告がある。ただ,それらの検討では,サンプルやイベントの少なさや,喫煙状況や既往歴の調査が不十分であるなど,いくつかの問題点があった。今回のNHSとHPFSの大規模な統合解析では,糖尿病患者において診断直前のBMIと死亡率にはJ字曲線の関連がみられ,過体重または肥満の糖尿病患者における死亡率の低さはみられず,いわゆる“肥満パラドックス”は認められなかった。喫煙歴のない例では,心血管疾患死・がん死はそれぞれBMIと線形の関連が認められた。一方,喫煙歴ありでは心血管死とBMIの間に有意な関連はなく,がん死亡については最低BMI群で有意なリスク上昇が認められた。健康的な体重を維持することは,糖尿病管理の基本であるといえる。【片山茂裕

●目的 2つの前向きコホート研究の統合解析を行い,糖尿病患者におけるBMIと死亡率の関連を検討した。
一次アウトカムは全死亡。
●デザイン コホート研究の統合解析。
●試験期間 平均追跡期間は15.8年。
●対象患者 11,427例:2型糖尿病患者。
除外基準:糖尿病診断以前の心血管疾患またはがん,BMI<18.5,35歳以下での糖尿病発症,体重データが得られなかった者。
●方法 2つの前向き研究,Nurses’ Health Study(NHS)およびHealth Professionals Follow-up Study(HPFS)のデータを対象に,多変量Coxモデルを用いて死亡率とBMIカテゴリーのハザード比および95%信頼区間[CI]を評価。人種,喫煙状況,アルコール摂取,身体活動量,配偶者の有無,食事の質,糖尿病の家族歴,閉経状態(NHSのみ)について調整。
NHSは30~55歳の女性看護師121,700例を対象に1976年に開始,HPFSは40~75歳の男性医療従事者を対象に1986年に開始。
●結果 追跡期間中の死亡は3,083例であった。
全死亡とBMIカテゴリー(18.5~22.4,22.5~24.9[基準],25.0~27.4,27.5~29.9,30.0~34.9,≧35.0)のあいだにJ字曲線の関連が認められた(NHS参加者のP<0.001,HPFSの参加者P=0.59)。BMI 22.5~24.9(基準)の例に比べ,BMIの低い例およびBMIの高い例では全死亡率が有意に上昇していた(BMI 18.5~22.4:ハザード比[HR]1.29,95%CI 1.05~1.59,BMI30.0~34.9:HR 1.24,95%CI 1.08~1.42,BMI≧35.0:HR 1.33,95%CI 1.14~1.55)。
この関連には喫煙状況による影響がみられ(相互作用のP=0.04),喫煙歴のない例では全死亡とBMIカテゴリーの関連に線形傾向が認められた(P<0.001)。一方,喫煙歴のある例のうち,男女および女性患者では両者の関連にJ字曲線の関連がみられたが(NHS参加者のP<0.001),男性患者のみでは認められなかった(HPFS参加者のP=0.72)。
糖尿病診断時の年齢が65歳未満の例では,BMIと死亡率にダイレクトな線形傾向が認められたが(相互作用のP<0.001),65歳以上ではこの傾向は喫煙歴のない例のみにかぎられ(P=0.04),また,もっとも低いBMIカテゴリーでは死亡リスクが有意に増加していた(HR 1.89,95%CI 1.32~2.71)。
死因別の検討では,BMIと心血管疾患による死亡率の関連は,すべての患者(P<0.001)および喫煙歴のない例(P=0.004)では線形であったが,喫煙歴のある例ではこの関連は減弱していた(P=0.02)。BMIがもっとも低いカテゴリーでは,全例および喫煙歴のある例でがんによる死亡率が上昇していたが(全例:HR 1.51,95%CI 1.00~2.28,喫煙歴のある例:1.87,1.15~3.04),喫煙歴のない例では死亡率の上昇が認められなかった(HR 0.83,95%CI 0.34~2.05)。他の疾患による死亡率とBMIには,すべての患者でJ字曲線の関連がみられた。
●結論 糖尿病患者においてBMIと死亡率にはJ字曲線の関連がみられ,そのうち喫煙歴のない例では線形の関連が認められた。過体重または肥満の糖尿病患者における死亡率の低さはみられず,“肥満パラドックス”は認められなかった。