蛋白尿を伴う1型糖尿病患者244例での,継続的なeGFR低下パターンと低下率を検討した貴重な報告である。血清クレアチニン濃度が5回以上測定されている161例の検討では,ほぼ68%の患者が線形の,15%の患者がほぼ線形の低下パターンを示し,3分の1以上の患者でeGFR低下率は<3.5mL/分/17.3m2/年であった。ただし,CKDのステージ1,2(eGFR 60mL/分/17.3m2/年)の216例において,5年までの観察での早期eGFR低下率とESRDの発生をみたところ,ベースラインのHbA1c,血圧,アルブミン-クレアチニン比よりも良好な予測因子となった。ESRDの発生率を予測する早期のeGFR低下率のカットポイントは11mL/分/17.3m2/年であった(ESRDの発生率は,<11mL/分/17.3m2/年の群では50.2%となり,≧11mL/分/17.3m2/年の群では7.0%であった)。線形のeGFRの低下パターンを想定した早期のeGFR低下率を求めることは,ESRDの発生を予測するうえで極めて重要であり,ESRDの発症機序や治療法を考えるうえで有益な方法となるであろう。【片山茂裕】
●目的 | 腎機能正常で蛋白尿を認める1型糖尿病患者において,早期の推算糸球体濾過量(eGFR)低下と末期腎疾患(ESRD)の関連を検討した。 |
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●デザイン | コホート。 |
●試験期間 | 登録期間は1991~2004年。追跡期間は7.4年(中央値)。血清クレアチニンの評価が≧5回の患者の追跡期間は9.0年(中央値),<5回の患者の追跡期間は 6.2年(中央値)。 |
●対象患者 | 244例:腎機能正常で蛋白尿を認める1型糖尿病患者。平均36.8±8.4歳。 登録基準: eGFR≧60mL/分/1.73m2。 |
●方法 | eGFRの経時的変化とESRDの発生を評価。 |
●結果 | 血清クレアチニンを5回以上(範囲5~73回)評価した161例において,110例はeGFR低下が線形,24例は臨床的に重要でない非線形,27例は臨床的に重要な非線形であった。 全体として,3分の1以上の患者でeGFR低下率は<3.5mL/分/1.73m2/年で,生涯のESRDリスク上昇はごくわずかであった。それ以外の患者では,eGFR低下の傾きとESRD発症率がさまざまであった。 5年間までの観察では,腎機能が正常範囲の場合には,早期のeGFR低下の追跡期間のESRDリスク予測能は,ベースラインのHbA1c,血圧,アルブミン-クレアチニン比よりも良好であった。 |
●結論 | 腎機能正常で蛋白尿を認める1型糖尿病患者において,早期のeGFR低下はESRDリスクの予測因子であった。 |
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