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Inaba M, Maekawa K, Okuno S, Imanishi Y, Hayashino Y, Emoto M, Shoji T, Ishimura E, Yamakawa T, Nishizawa Y: Impact of atherosclerosis on the relationship of glycemic control and mortality in diabetic patients on hemodialysis. Clin Nephrol. 2012; 78: 273-80. [PubMed]
維持血液透析をうけている2型糖尿病患者の血糖コントロールの指標には,HbA1c値よりもグリコアルブミン(GA)値が優れていることが明らかにされてきた。今回の検討は,CVD既往歴のない維持血液透析中の糖尿病患者では,GA<20%が死亡率を低下させるための血糖コントロールのとりあえずの目標値になることを示した。しかしながら,CVD既往歴のある維持血液透析中の糖尿病患者においては,CRPは死亡率に影響を与えるものの,血糖コントロールの影響はかならずしも明らかでなく,血糖コントロールの目標値が異なるかもしれないことを示唆しており,さらなる検討が必要である。【片山茂裕】
●目的 | 維持血液透析を受けている2型糖尿病患者において,心血管疾患(CVD)(冠動脈疾患,大脳動脈疾患,末梢動脈疾患,大動脈瘤)の合併が,血糖コントロール改善のベネフィットに与える影響を検討した。 |
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●デザイン | コホート,観察研究,単施設(日本,腎疾患専門外来)。 |
●試験期間 | ベースライン調査は2005年4月,追跡期間は48ヵ月(~2009年3月まで)。 |
●対象患者 | 178例: 維持血液透析(期間>1ヵ月)を受けている2型糖尿病の腎疾患専門外来患者。 CVD合併70例(平均66.3±8.1歳),非CVD合併108例(平均65.4±10.6歳)。 |
●方法 | 血糖コントロールの指標にはグリコアルブミン(GA)値を用いた。 CVD合併例と非CVD合併例を,それぞれGA値で3つに分類(GA<20%:CVD合併25例,非CVD合併34例,GA 20~24.5%:23例,36例,GA≧24.5%:22例,38例)。 全患者において,多変量調整Cox解析により,死亡の予測因子を求めた(性別,透析期間,血清アルブミン,ヘモグロビン,BMI,収縮期血圧,拡張期血圧,喫煙,血清尿素窒素,CVD既往により調整)。 CVD合併がGAと死亡との関連に与える影響について,多変量調整Cox比例ハザード解析を実施(性別,透析期間,血清アルブミン,ヘモグロビン,BMI,収縮期血圧,拡張期血圧,喫煙,血清尿素窒素により調整)。 |
●結果 | 追跡期間中の死亡は,CVD合併30例(42.8%),非CVD合併24例(23.3%)であった。死亡率は非CVD合併例よりもCVD合併例で高かった。 非CVD合併例において,GA値がもっとも低い患者群(GA<20%)では,GA 20~24.5%,GA≧24.5%の患者群に比べて,死亡率が有意に低かった(P=0.026)。CVD合併例においては,GA値と死亡率は関連しなかった。 全患者において,死亡との有意な独立した関連が認められたのは,GAおよびlog CRPであった。 非CVD合併例では,GAの1%増加(HR 1.093,1.029-1.160,P=0.004)およびLogCRP(HR 2.242,1.118-4.496,P=0.014)は,死亡リスク上昇との有意な関連を示した。CVD合併例ではLogCRPは死亡リスク上昇との有意な関連を示したが(HR 2.806,1.375-5.726,P=0.005),GAの1%増加は死亡とは関連しなかった(P=0.842)。 |
●結論 | 維持血液透析を受けている2型糖尿病患者において,血糖コントロール改善は生存率を上昇させたが,その効果はCVD合併により減弱した。 |
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