編集:片山茂裕 河盛隆造 景山茂 西尾善彦 西村理明 綿田裕孝
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Anderson C, Teo K, Gao P, Arima H, Dans A, Unger T, Commerford P, Dyal L, Schumacher H, Pogue J, et al.; ONTARGET and TRANSCEND Investigators : Renin-angiotensin system blockade and cognitive function in patients at high risk of cardiovascular disease: analysis of data from the ONTARGET and TRANSCEND studies. Lancet Neurol. 2011; 10: 43-53. [PubMed]

降圧およびレニン-アンジオテンシン系の阻害が認知機能障害の発症・進展を抑制する可能性が期待されているが,本研究ではその効果を示すことができなかった。しかしながら,血圧と脳卒中が関連することは明らかであり,脳卒中が認知機能障害の誘因であることを考えると,今後も降圧と認知機能の関連性を検討する研究が必要であろう。心血管イベントの観察でもみられるように,こうした検討にはより長期の観察が必要である可能性が高く,認知機能の測定方法の工夫により効果を明らかにできる可能性もある。【西尾善彦

●目的 55歳以上の臓器障害を有する粥状動脈硬化性心血管疾患患者または糖尿病患者において,レニン-アンジオテンシン系阻害が認知機能に及ぼす影響を検討した。ONTARGET,TRANSCENDの認知機能に関する二次アウトカムの解析。
●デザイン ONTARGETとTRANSCENDは無作為,プラセボ対照,多施設(40ヵ国,733施設),intention-to-treat解析。ACE,ARBおよび両者の併用による心血管アウトカムへの効果を比較。
●試験期間 追跡期間は56ヵ月(中央値)。
●対象患者 ONTARGETおよびTRANSCENDの参加者31,546例。平均66歳。
登録基準:55歳以上,冠動脈疾患・末梢血管疾患・脳血管疾患または臓器障害を伴う糖尿病。
除外基準:収縮性心内膜炎,先天性心疾患,原因不明の失神,3ヵ月以内の心臓手術または血行再建術,治療下でコントロール不良の高血圧,心臓移植,くも膜下出血による脳卒中,腎動脈狭窄,クレアチニン値>265mmol/L,明らかな肝機能異常,心疾患の自然歴または予後不良,併存疾患,長期追跡を妨げる社会的状況。
●方法 ONTARGETでは対象患者をramipril群,telmisartan群,およびramipril+telmisartan群にランダム化。TRANSCENDではtelmisartan群とプラセボ群(通常治療のみ)にランダム化。
本解析ではONTARGETとTRANSCENDのデータを用い,収縮期血圧と認知機能障害およびその頻度の関連を評価。
●結果 ONTARGETでは,追跡期間中に認知機能障害を発症したのは,ramipril群652例(8%),telmisartan群584例(7%),併用群618例(8%)で,有意差は認められなかった(併用群 vs ramipril群 オッズ比[OR]0.95,95%CI 0.85-1.07,p=0.39,telmisartan群vs ramipril群 OR 0.90,95%CI 0.80-1.01,p=0.06)。認知機能の低下がみられたのは,それぞれ1314例(17%),1279例(17%),1240例(17例)で,有意な差はみられなかった(telmisartan群 vs ramipril群 OR 0.97,95%CI 0.89-1.06,p=0.53,併用群 vs ramipril群 OR 0.95,95%CI 0.88-1.04,p=0.28)。
TRANSCENDでは,認知機能障害を発症したのは,telmisartan群239例(9%),プラセボ群245例(9%)で,有意差はみられなかった(OR 0.97, 95%CI 0.81-1.17,p=0.76)。認知機能の低下は,それぞれ454例(17%),412例(16%)で,有意な差はなかった(OR 1.10,95%CI 0.95-1.27,p=0.22)。
●結論 心血管疾患患者または糖尿病患者では,レニン-アンジオテンシン系の阻害は,認知機能に影響を及ぼさなかった。収縮期血圧が最も低い群では認知機能が最もよく保持されていたが,メタ回帰分析では,認知機能に対する降圧のベネフィットは示されなかった。