MIによる入院発生率は,MI既往患者でもっとも高いことは以前からよく知られている。今回の126万人に及ぶ調査から,非MI既往患者では,MIによる入院発生率は,CKDのみを合併している患者のほうが糖尿病のみを合併している患者よりも高かった。CKDの定義をeGFR<45mL/分/1.73m2かつ重度の蛋白尿とすると,CKDのみを合併している患者と糖尿病のみを合併している患者の発生率の差は増大し,約2倍となった。さらに注目すべきことは,非MI既往の非糖尿病/非CKD患者に対するMIによる入院の相対リスクは,MI既往患者でもっとも高いが,それに続くのは糖尿病+CKD合併患者で,これらの相対リスクは2.7倍であり,CKDのみ合併の患者や糖尿病のみ合併の患者より相対リスクが高いことである。全死亡についてもほぼ同様の傾向であるが,糖尿病+CKD合併患者がもっとも高リスクであり,CKDのみ合併の患者では,糖尿病のみ合併の患者よりリスクが大であった。このことから,CKDは将来の冠イベントの危険因子に加える必要があることが示された。【片山茂裕】
●目的 | 慢性腎臓病(CKD)が冠動脈心疾患のリスクであるかを,心筋梗塞,糖尿病,CKDの既往別に検討した。 一次アウトカムは心筋梗塞(MI)による初回入院。二次アウトカムは全死亡。 |
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●デザイン | コホート。 |
●試験期間 | 追跡期間は48ヵ月(中央値)。2009年3月31日追跡終了。 |
●対象患者 | 1,268,029例:MI既往患者12,960例,非MI既往の糖尿病+CKD患者15,368例,非MI既往のCKD患者59,117例,非MI既往の糖尿病患者75871例,非MI既往の非糖尿病/非CKD患者1,104,713例。 登録基準:≧18歳,2002~2009年に外来で血清クレアチニンを測定,末期腎疾患なし。 除外基準:推定糸球体濾過量(eGFR)<15mL/分/1.73m2。 |
●方法 | ・カナダアルバータ州の腎疾患ネットワーク(AKDN)および2003~2006年の国民健康栄養調査(NHANES)のデータを使用。 ・入院と医療請求データに基づいた妥当性の確認されたアルゴリズムを用いて,ベースラインのMI既往または糖尿病/CKDにより患者を分類し,追跡期間のMIによる入院を評価。 ・CKDは,eGFR 15~59.9mL/分/1.73m2(ステージ3~4)と定義。 ・ベースラインのMI既往患者,非MI既往の糖尿病+CKD患者,非MI既往のCKD患者,非MI既往の糖尿病患者,非MI既往の非糖尿病/非CKD患者で,アウトカムを比較。 |
●結果 | 追跡期間のMIによる入院は11340例(1%),死亡は47712例(4%)。 未調整のMIによる入院発生率は,MI既往患者でもっとも高かった(18.5件/1000人・年[95%CI 17.4-19.8])。非MI既往患者のなかでは,糖尿病のみの患者のMIによる入院発生率は,CKDのみの患者よりも低かった(5.4件/1000人・年[95%CI 5.2-5.7] vs 6.9件/1000人・年[95%CI 6.6-7.2],p<0.0001)。 CKDの定義をeGFR<45mL/分/1.73m2かつ重度の蛋白尿とすると,糖尿病のみの患者とCKDのみの患者の発生率の差は増大した(6.6件/1000人・年[95%CI 6.4-6.9] vs 12.4件/1000人・年[95%CI 9.7-15.9])。 非MI既往の非糖尿病/非CKD患者に対するMIによる入院の相対リスクは,MI既往患者3.8,非MI既往の糖尿病+CKD患者2.7,非MI既往のCKD患者1.4,非MI既往の糖尿病患者2.0で,全死亡の相対リスクは,MI既往患者1.4,非MI既往の糖尿病+CKD患者1.8,非MI既往のCKD患者1.3,非MI既往の糖尿病患者1.4であった。 |
●結論 | CKDは,将来の冠イベントリスクが高い患者を定義する基準に加える必要があることが示された。 |
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糖尿病トライアルデータベースは2001年にオープンしました。現在までに,1283件のトライアルを収載しています。