現在用いられているチアゾリジンジオン類は,pioglitazoneとrosiglitazoneの2種類である(わが国ではrosiglitazoneは未承認)。両者は基本骨格を共有し,インスリン抵抗性改善作用を有している。しかしながら,血清脂質に対する影響は異なっていることが知られている。pioglitazoneはTGを減少,HDL-CおよびLDL-Cを増加させる。一方,rosiglitazoneはTG,HDL-CおよびLDL-Cを増加させる。pioglitazoneに比較してrosiglitazoneのHDL-C増加度は小さく,LDL-Cの増加度は大きく,LDLの粒子径に対する作用が異なることも指摘されている。
チアゾリジンジオン類の心血管イベントに対する効果についてはメタ分析がされており,rosiglitazoneは心筋梗塞等の心血管イベントを増加させ,一方pioguritazoneは減少させることが報告されている。心血管イベントに対する効果と血清脂質に対する効果が関連しているか否かは明らかではない。
薬物の基本骨格が共通し,かつ目的としたインスリン抵抗性改善作用を共有していると,他の作用・副作用も共通していると思いがちであるが,rosiglitazoneとpioglitazoneについては注意が必要である。【景山 茂】
●目的 | 心血管疾患リスクの高い2型糖尿病患者において,metformin(ビグアナイド),スルホニル尿素(SU),インスリンによる糖尿病治療およびスタチン薬の使用により,pioglitazone(インスリン抵抗性改善薬)の脂質への効果が影響されるかを検討した。PROactiveのサブ解析。 |
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●デザイン | 無作為,二重盲検,多施設(欧州19ヵ国)。 |
●試験期間 | 追跡期間は平均34.5ヵ月。 |
●対象患者 | 5238例:PROactiveの参加者(大血管障害リスクの高い2型糖尿病患者,HbA1c値>6.5%)。 |
●方法 | PROactive試験では,pioglitazone群,プラセボ群にランダム割付け。 本解析では,糖尿病治療薬(metformin,SU,インスリンの単独または併用療法),スタチンの使用の有無により,pioglitazoneのトリグリセリド(TG),HDL-C,LDL-Cへの効果を比較。 |
●結果 | TGは,糖尿病治療薬の種類およびスタチン薬の使用にかかわらず,pioglitazone群で低下した(-9.90%~-12.28%)。 HDL-Cも同様に,pioglitazone群でプラセボ群に比し,約2倍上昇した(18.12~20.25% vs 8.06~11.76%)。 LDL-Cは,pioglitazone群で上昇した(5.23~9.60% vs 3.34~7.56%)。 |
●結論 | 心血管疾患リスクの高い2型糖尿病患者において,長期のpioglitazone治療により,ベースラインの糖尿病治療薬の種類およびスタチン薬の使用にかかわらず,TGおよびHDL-Cは改善した。 |
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