編集:片山茂裕 河盛隆造 景山茂 西尾善彦 西村理明 綿田裕孝
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Shepherd J, Kastelein JP, Bittner VA, Carmena R, Deedwania PC, Breazna A, Dobson S, Wilson DJ, Zuckerman AL, Wenger NK, et al.: Intensive lipid lowering with atorvastatin in patients with coronary artery disease, diabetes, and chronic kidney disease. Mayo Clin Proc 2008; 83: 870-879. [PubMed]

TNT 試験では,冠動脈疾患がすでに存在する2型糖尿病患者に80mg/日のatorvastatinを投与すると,10mg/日投与群に比較して,致死性および非致死性心血管イベントがさらに25%減少することが示されている。
米国におけるCKDの有病率は男性の11%,女性では15%に達するといわれている。今回のサブ解析では,腎機能に関するデータが得られた1431例でCKDの有無で主要な心血管イベントの発症率を再解析した。まず,冠動脈疾患のある糖尿病患者では38%がCKDを有していた。LDL-C値はCKDの有無に関わらず,80mg群で75mg/dLに,10mg群で98mg/dLに低下した。観察期間中にeGFRの低下はみられず,むしろ両群でわずかに増加した。CKDがある症例では,ない症例に比べて心血管イベントのハザード比が1.32倍であった(発生率17.4% vs 13.4%)。CKD症例においてのみ,atorvastatin 80mg群で10mg群に比較して心血管イベントが35%低下し,絶対リスクの低下も7.0%と大きく,4.8年間で心血管イベント1件を予防するためのNNTは14例となった。糖尿病患者における厳格な脂質低下療法は冠動脈疾患を有する場合や末期腎不全を有する場合に勧められていたが,今回の結果は,スタチンによる厳格な脂質低下療法の必要性を,軽度から中等度の腎機能障害を有するCKDを認める糖尿病患者でも示したといえる。【片山茂裕

●目的 冠動脈疾患(CAD)および2型糖尿病に患者において,高用量のHMG-CoA還元酵素阻害薬atorvastatinによる強化脂質低下療法の心血管イベントに対する効果を慢性腎疾患(CKD)併発の有無により比較検討した。TNTのpost-hoc解析。
一次アウトカムは主要心血管イベント(CAD死,非致死性かつ非治療関連の心筋梗塞[MI],心停止後の蘇生,致死性または非致死性脳卒中)。
●デザイン 無作為,二重盲検,オープン,intention-to-treat解析。
●試験期間 ランダム化実施期間は1998年7月1日~1999年12月31日,追跡期間は4.8年(中央値)。
●対象患者 1431例:TNTの参加者(10001例)のうち,糖尿病を有し,かつ腎機能に関するデータの得られた例。
TNTの登録基準:35~75歳,CADを有する(MI,動脈硬化性CADの客観的エビデンスを伴う狭心症またはその既往,冠動脈血行再建術施行歴)。
除外基準:ネフローゼ症候群。
●方法 TNT試験では,LDL-C値130~250mg/dLかつトリグリセリド値≦600mg/dLの患者にatorvastatin 10mg/日を8週投与し(run-in期間),run-in期間終了時にLDL-C値<130mg/dLであった患者をatorvastatin 80mg/日群,10mg/日群にランダム化。
本解析では,CKD(MDRD推定式により算出した糸球体濾過率<60mL/分/1.73m²)の有無別に主要心血管イベントの発生状況を検討。解析対象例は80mg群717例(CKD例273例,非CKD例444例),10mg群714例(それぞれ273例,441例)。
●結果 追跡期間の主要心血管イベントの発生は,CKD例で非CKD例に比し有意に高率であった(95/546例[17.4%] vs 119/885例[13.4%]:ハザード比[HR]1.32,95%CI 1.00-1.72,p<0.05)。
CKD例における検討では,80mg群では10mg群に比して主要心血管イベントリスクが35%低下し(13.9 vs 20.9%:HR 0.65,95%CI 0.43-0.98,p=0.04),絶対リスクにも大きな低下(7.0%)が認められた。4.8年間に主要心血管イベント1件を予防するためのnumber needed to treat(NNT)は14例であった。
一方,非CKD例における検討では,有意な群間差は認められなかった(12.8 vs 14.1%:HR 0.90,95%CI 0.63-1.29,p=0.56)。
忍容性は両群ともに良好であった。
●結論 CADおよび2型糖尿病患者において,高用量atorvastatinによる強化脂質低下療法は軽度~中等度のCKDを併発した症例の心血管イベントを著明に減少させた。この結果は,過去にatorvastatinによるベネフィットが糖尿病および末期腎不全を有する患者に限られていたのとは対照的であり,atorvastatin治療はCKD早期に開始すべきであると考えられる。