ADVANCE 試験は,11140人の心血管疾患リスクを有する55歳以上の2型糖尿病患者で行われた。4.3年間の血圧降下アームは昨年すでに報告された(Lancet 2007; 370: 829-40)。ACE阻害薬perindopril 2mgとサイアザイド系利尿薬類似薬indapamide SR 0.625mgの併用投与群では,プラセボ群に比し,大血管および細小血管障害が14%減少し,心血管死は18%減少した。
今回,gliclazide MR錠30~120mg/日に加えて,インスリンを含めた血糖降下薬も追加使用した強化療法群(HbA1c値≦6.5%を目標)と通常療法群(7~8%を目標)を比較した血糖降下アームが報告された。HbA1c値は強化療法群では6.5%(通常療法群は7.3%)と,かつてないほどの血糖管理が達成された。その結果,強化療法群で腎症(蛋白尿)が21%減少したが,主な心血管疾患および心血管死はそれぞれ6%,12%減少したのみで有意差がなかった。重篤な低血糖は,強化療法群で0.7/100人・年で,通常療法群の1.86倍となった。
従来の成績では,HbA1c値を0.7%低下させると大血管障害が6分の1は減少するとされている。ただ,本試験では主な心血管疾患や心血管死はそれぞれ6%,12%減少したが,有意差には至らなかった。
本試験では,なぜ厳格な血糖コントロールが大血管障害を有意に減少させなかったのか,現時点では不明である。ただ,本試験と同時に報告されたACCORD試験とは異なり,本試験では強化療法群でも,少なくとも主な心血管疾患や心血管死の増加はみられなかった。本試験では,血圧は136/74mmHgに,LDL-Cは102mg/dLに管理されたため,イベント数が2.2%と予想値の3.0%に満たなかったためかもしれない。【片山茂裕】
●目的 | 2型糖尿病患者において,強化血糖コントロール療法の血管アウトカムに対する効果を検討した。 一次アウトカムは主要大血管イベント(心血管死,非致死性心筋梗塞,非致死性脳卒中)および主要細小血管イベント(腎症または網膜症の新規発症または悪化)。 |
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●デザイン | 無作為,多施設(20ヵ国,215施設),intention-to-treat解析。 |
●試験期間 | 追跡期間は5年(中央値)。登録期間は2001年6月~2003年3月。2008年1月試験終了。 |
●対象患者 | 11140例:診断時≧30歳,かつ試験登録時≧55歳の2型糖尿病患者。平均HbA1c値7.5%。 登録基準:主要な大血管疾患または細小血管疾患の既往,または血管疾患のリスク因子を1つ以上有する。 除外基準:試験薬に対する明確な適応または禁忌。登録時における長期インスリン療法の明確な適応。 |
●方法 | 6週のrun-in期間後,強化療法群(5571例)および標準療法群(5569例)にランダム化。 目標HbA1c値:強化療法群は≦6.5%,標準療法群は現地のガイドラインに準拠。 強化療法群ではスルホニル尿素(SU)薬gliclazide放出調節(MR)錠30~120mg/日を投与し,他のSU薬は中止。標準療法群では,gliclazide MR錠使用例は他のSU薬に変更。 |
●結果 | 5年後の平均HbA1c値は,強化療法群6.5%,標準療法群7.3%であった。 一次アウトカムの発生は強化療法群で有意に低かった(18.1% vs 20.0%,ハザード比[HR]0.90,95%CI 0.82-0.98,p=0.01)。 強化療法群では主要細小血管イベントの発生が有意に低かったが(9.4% vs 10.9%,HR 0.86,95%CI 0.77-0.97,p=0.01),これは主に腎症の新規発症または悪化が抑制されたことによるものであり(4.1% vs 5.2%,HR 0.79,95%CI 0.66-0.93,p=0.006),網膜症の新規発症または悪化には有意な群間差は認めなかった(6.0% vs 6.3%,p=0.50)。 主要大血管イベント(10.0% vs 10.6%,HR 0.94,95%CI 0.84-1.06,p=0.32),心血管死(4.5% vs 5.2%,HR 0.88,95%CI 0.74-1.04,p=0.12),全死亡(8.9% vs 9.6%,HR 0.93,95%CI 0.83-1.06,p=0.28)は両群で同等であった。 重篤な低血糖の発生はわずかであったが,強化療法群で有意に多かった(2.7% vs 1.5%,HR 1.86,95%CI 1.42-2.40,p<0.001)。 |
●結論 | 2型糖尿病患者において,HbA1c値≦6.5%を目標とする強化療法により,主要な大血管イベントおよび細小血管イベントが有意に低下したが,これは主に腎症の発生が大きく抑制されたことによるものであった。 |
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