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Barnett AH, Bain SC, Bouter P, Karlberg B, Madsbad S, Jervell J, Mustonen J, Diabetics Exposed to Telmisartan and Enalapril Study Group: Angiotensin-receptor blockade versus converting-enzyme inhibition in type 2 diabetes and nephropathy. N Engl J Med 2004; 351: 1952-1961. [PubMed]
糖尿病性腎症を対象にAII受容体拮抗薬とACE阻害薬を直接比較した最初の試験であり,興味深い。しかしながら,中止率がtelmisartan群32%,enalapril群34%と高いので,最終観察データを用いたITT解析による結果の解釈には慎重でなければならない。また投与量も,telmisartanは80mg/日,enalaprilでは20mg/日まで強制増量するプロトコールになっており,日常診療とは異なる。今後の研究が期待される。【景山 茂】
●目的 | 早期腎症を有する2型糖尿病患者において,AII受容体拮抗薬telmisartanおよびACE阻害薬enalaprilの腎保護効果を比較した。 一次エンドポイントは5年後または最終観察データの糸球体濾過率の変化。二次エンドポイントは,糸球体濾過率・血清クレアチニン値・尿中アルブミン排泄・血圧の1年ごとの変化,末期腎不全および心血管イベント,全死亡。 |
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●デザイン | 無作為,二重盲検,多施設,前向き。 |
●試験期間 | 試験期間は5年。 |
●対象患者 | 250例:早期腎症を有する2型糖尿病患者(白人またはアジア人)。35~80歳。 登録基準:食事療法,食事療法+経口血糖降下薬(投与期間≧1年),インスリン療法(経口血糖降下薬を1年以上投与後)のいずれかを実施されている者(インスリン投与例では発症時年齢≧40歳かつBMI>25kg/m²)。3ヵ月以上のACE阻害薬投与後の軽~中等度高血圧(安静時<180/95mmHg)。腎の形態が正常。尿中アルブミン排泄率11~999μg/分。HbA1c値<12%。血清クレアチニン値<1.6mg/dL。糸球体濾過率>70ml/分/1.73m²。 除外基準:余命に影響を及ぼす疾患。試験薬またはiohexolに対するアレルギー。 |
●方法 | 1ヵ月のスクリーニング期間(ACE阻害薬を含む降圧療法を実施)後,降圧療法を中止し,患者をtelmisartan群(120例)およびenalapril群(130例)にランダム化。 ・telmisartan群は40mg/日,enalapril群は10mg/日より投与開始し,4週後にそれぞれ80mg/日,20mg/日に増量。 ・糸球体濾過率をベースライン時およびその後1年ごとに測定し,その群間差が≧-10.0ml/分/1.73m²である場合を臨床的有意差ありとした。また,血清クレアチニン値,尿中アルブミン排泄,血圧を測定するとともに,末期腎不全,心血管イベント,死亡を追跡した。 |
●結果 | 5年後における糸球体濾過率の変化は,telmisartan群(103例)-17.9ml/分/1.73m²,enalapril群(113例)-14.9ml/分/1.73m²で,群間差は-3.0ml/分/1.73m²(95%CI -7.6~1.6ml/分/1.73m²)であった。CIの下限が事前に定めた-10.0ml/分/1.73m²よりも大きいことから,enalaprilのほうが良好であるものの,telmisartanはenalaprilに劣らないことが示唆された。二次エンドポイントに関しては,両群間に有意差は認められなかった。 |
●結論 | 早期腎症を有する2型糖尿病患者において,長期的腎保護効果に関してtelmisartanはenalaprilに劣らないことが示された。これらの結果は必ずしも,より進行した腎症に適用することはできないが,心血管イベントの高リスク患者において,AII受容体拮抗薬とACE阻害薬の臨床効果が同等であることを示唆している。 |
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糖尿病トライアルデータベースは2001年にオープンしました。現在までに,1283件のトライアルを収載しています。