編集:片山茂裕 河盛隆造 景山茂 西尾善彦 西村理明 綿田裕孝
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Hanley AJ, Williams K, Festa A, Wagenknecht LE, D'Agostino RB, Kempf J, Zinman B, Haffner SM, insulin resistance atherosclerosis study: Elevations in markers of liver injury and risk of type 2 diabetes: the insulin resistance atherosclerosis study. Diabetes 2004; 53: 2623-2632. [PubMed]

インスリン抵抗性の主体となるのは内臓脂肪の蓄積という考え方が主流を占めるなか,肝細胞内脂肪の貯留の重要性も,最近盛んに議論されている。非アルコール性脂肪肝炎(Non Alcoholic Steatohepatitis; NASH)が糖尿病専門医からも注目されているのはそのためである。transaminaseの上昇=肝細胞内脂肪の貯留=脂肪肝といえるかどうかは結論づけにくいが,少なくとも糖尿病発症のリスクとして着目した点では,斬新かつ興味深いデータといえるだろう。【河盛隆造

●目的 肝機能マーカー(アスパラギン酸アミノトランスフェラーゼ[AST]およびアラニンアミノトランスフェラーゼ[ALT])上昇と2型糖尿病発症リスクとの関係を検討した。
●デザイン 観察研究,疫学,多施設。
●試験期間 追跡期間は平均5.2年。
●対象患者 906例:IRASの参加者のうち,ベースライン時に糖尿病を認めない例。40~69歳。
●方法 頻回測定静注ブドウ糖負荷試験(FSIGTT)を実施し,インスリン感受性指数(Si)および急性インスリン反応(AIR)を算出。またOGTT,臨床検査(AST値,ALT値,インスリン値,血糖値,脂質値,C反応性蛋白[CRP]値など),身体測定,患者背景および生活習慣の調査を実施。単変量解析および多変量解析を用いて,AST値およびALT値,その他の変数,2型糖尿病の発症リスクの関係を検討。
●結果 追跡期間中に148例が2型糖尿病を発症した。
ベースライン時のAST値およびALT値は,空腹時インスリン値(AST値:r=0.22,ALT値:r=0.35),ウェスト周(r=0.18,r=0.34),空腹時血糖値(r=0.13,r=0.29)と正相関を示し,Si(r=-0.18,r=-0.30)と逆相関を示した(いずれもp<0.0001)。過去の飲酒歴を有する患者および中~高度の飲酒習慣を有する患者を除外した検討でも同様の結果を得た。
AST値およびALT値を4分割して多重ロジスティック回帰モデルによる解析を行ったところ,年齢,性別,民族,施設,飲酒を補正後,AST値およびALT値が最も高値(Q4)の患者では,より低値(Q1~3)の患者に比して2型糖尿病発症リスクが有意に増大していた(AST値:オッズ比[OR]1.73[95%CI 1.17-2.57],ALT値:OR 2.32[95%CI 1.36-3.75])。さらに喫煙,ウェスト周,トリグリセリド値,HDL-C値,耐糖能異常,Si,AIRを補正後も,AST高値およびALT高値は(Q4 vs Q1~3)なお2型糖尿病発症リスクと有意な相関を示した(AST値:OR 1.98[95%CI 1.23-3.17],ALT値:OR 2.00[95%CI 1.22-3.28])。一方,性別,民族,肥満,耐糖能異常,Si は,AST値およびALT値と2型糖尿病発症リスクとの関係に影響を及ぼさなかった。
同様のモデルを用いた解析において(年齢,性別,民族,施設,飲酒を補正),CRP高値(>3.0mg/L)は2型糖尿病発症の独立した予測因子であり(OR 2.00[95%CI 1.37-2.93]),CRP値とALT値の組み合わせにより2型糖尿病の予測能が向上した。
●結論 AST値およびALT値は2型糖尿病発症の独立した有意な予測因子であった。このことは,非アルコール性脂肪肝またはその機序が2型糖尿病発症の素因となることを示唆していると考えられる。