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Maruyama T, Shimada A, Kanatsuka A, Kasuga A, Takei I, Yokoyama J, Kobayashi T: Multicenter prevention trial of slowly progressive type 1 diabetes with small dose of insulin (the Tokyo study): preliminary report. Ann N Y Acad Sci 2003; 1005: 362-369. [PubMed]
1型糖尿病の発症予防に早期のインスリン治療が効果的であることを日本人で示した試験。症例数が少ないのが難点であるが,緩徐進行型1型糖尿病を発見した場合,迷わずにインスリン治療に切り替えるべきであるという証拠となる論文である。【河盛隆造】
●目的 | 緩徐進行型1型糖尿病において,インスリン少量投与がβ細胞の機能低下に及ぼす有効性を検討した。 一次アウトカムは血清Cペプチド反応(CPR)および75g OGTTにおける血糖値。 |
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●デザイン | 無作為,多施設,前向き。 |
●試験期間 | 試験期間は4年(1996年試験開始)。 |
●対象患者 | 56例:GAD 65抗体陽性でインスリン投与を必要としない2型糖尿病患者。 登録基準:診断後6ヵ月以内にインスリン治療を実施されていない。GAD 65抗体陽性(≧1.5U/mL)。罹病期間<10年。対象患者同士が血縁関係にない。 除外基準:ケトン尿症,糖尿病性ケトアシドーシス,インスリン投与を要する顕著な高血糖の既往。Cペプチドクリアランスおよび耐糖能に影響を及ぼす腎障害または肝障害。 |
●方法 | 患者を,インスリン皮下注群およびスルホニル尿素(SU)薬群にランダム化。両群ともベースライン時およびその後3ヵ月ごとに血糖値を測定し,その値に応じて用量を調整(目標血糖値は血漿ブドウ糖値<120mg/dL,HbA1c値<7%,食後血糖値<200mg/dL)。 6~12ヵ月ごとに75g OGTTを実施し,0,30,60,90,120分後の血清Cペプチド値の積算値(ΣCPR)を用いてインスリン依存性(ΣCPR<4.0ng/mL)を評価。 |
●結果 | ΣCPRは,SU薬群ではベースライン時の22.0±10.6ng/mLから48時間後には11.3±7.5ng/mLと次第に低下したが(p<0.001),インスリン群では変化は認められなかった。 1型糖尿病を発症したのは,SU薬群で30%(9/30例)であったのに対し,インスリン群では8.3%(2/24例)のみであった(p=0.087)。1型糖尿病発症率は,CPRが維持されていた症例(ΣCPR≧10ng/mL)についてはSU薬群でインスリン群に比し有意に高く(25%[7/28例] vs 0%[0/21例],p=0.015),GAD 65の滴定値が高い症例(≧10U/mL)についてもSU薬群で有意に高かった(64.3%[9/14例] vs 12.5%[2/16例]),p=0.0068)。さらに,GAD 65の滴定値が高く,かつCPRが維持されていた症例でも,1型糖尿病発症率はSU薬群で有意に高かった(58.3%[7/12例] vs 0%[0/14例],p=0.012)。 |
●結論 | 緩徐進行型1型糖尿病において,インスリン少量投与はβ細胞の機能低下を効果的に抑制することが示唆された。したがって2型糖尿病のうちGAD 65抗体陽性例に対しては,SU薬に代わり,インスリン投与が推奨される。 |
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