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Harding GK, Zhanel GG, Nicolle LE, Cheang M; Manitoba Diabetes Urinary Tract Infection Study Group: Antimicrobial treatment in diabetic women with asymptomatic bacteriuria. N Engl J Med 2002; 347: 1576-1583. [PubMed]
糖尿病女性患者における無症候性細菌尿は,非糖尿病女性患者に比べて3倍高率といわれている。本研究で,糖尿病があるからといって,無症候性細菌尿をスクリーニングし,治療するメリットがないことが示された。【片山茂裕】
●目的 | 糖尿病女性患者において,無症候性細菌尿(連続した2つの尿検体の培養において≧105コロニー/mLの微生物)のスクリーニングおよびその治療により,尿路感染症(UTI)に起因する合併症を抑制できるか否かを検討した。 一次アウトカムは初回症候性UTI発症までの期間,症候性UTIの発症率。 |
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●デザイン | 前向き,無作為,プラセボ対照,二重盲検。 |
●試験期間 | 追跡期間は36ヵ月(平均27ヵ月)。登録期間は1991年2月~1997年4月。 |
●対象患者 | 105例:無症候性細菌尿を認め,泌尿器症状のない糖尿病女性患者。≧16歳。 除外基準:妊娠,血清クレアチニン値>2.25mg/dL,追跡不能例。 |
●方法 | 抗菌薬治療群(55例)とプラセボ群(50例)にランダム化し,6週投与。 ・抗菌薬治療群:trimethoprim 320mg/日(分2)+sulfamethoxazole 1600mg/日(分2)を経口投与。2剤に対するアレルギーまたは耐性菌感染の場合,ciprofloxacin 500mg/日(分2)を投与。 ・6週の治療期間後は3ヵ月ごとに細菌尿を評価し,無症候性細菌尿を認めた場合は抗菌薬治療群のみ,症候性細菌尿を認めた場合は両群に抗菌薬を投与。 |
●結果 | 治療終了から4週までに,プラセボ群の78%で細菌尿を認めたのに対し,抗菌薬治療群では20%であった(p<0.001)。追跡期間中に症候性UTIを≧1回発症した患者は,抗菌薬治療群42%(23例),プラセボ群40%(20例)と差はなく,初回症候性UTI発症までの期間(p=0.67),すべての症候性UTI(0.93±0.14 vs. 1.10±0.17/1000日,相対リスク[RR]1.19,95%CI 0.28-1.81,p=0.42),腎盂腎炎(0.13±0.05 vs. 0.28±0.08/1000日,RR 2.13,95%CI 0.81-5.62,p=0.13),UTIによる入院(0.06±0.22 vs. 0.10±0.36/1000日,RR 1.93,95%CI 0.47-7.89,p=0.36)も両群で同等であった。UTIに対する抗生物質の投与期間は,抗菌薬治療群ではプラセボ群の約5倍であった(158.2±1.7 vs. 33.7±0.91日/1000日,RR 0.21,95%CI 0.20-0.22,p<0.001)。 |
●結論 | 糖尿病女性患者において,無症候性細菌尿を治療しても合併症抑制効果は認められなかった。したがって,糖尿病があっても,無症候性細菌尿のスクリーニングおよびその治療は必要でないと考えられた。 |
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糖尿病トライアルデータベースは2001年にオープンしました。現在までに,1283件のトライアルを収載しています。