編集:片山茂裕 河盛隆造 景山茂 西尾善彦 西村理明 綿田裕孝
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Detre KM, Lombardero MS, Brooks MM, Hardison RM, Holubkov R, Sopko G, Frye RL, Chaitman BR: The effect of previous coronary-artery bypass surgery on the prognosis of patients with diabetes who have acute myocardial infarction. Bypass Angioplasty Revascularization Investigation Investigators. N Engl J Med 2000; 342: 989-997. [PubMed]

糖尿病患者が心筋梗塞を起こした場合には,非糖尿病患者に比べて死亡率が高いことが知られている。本試験では,多枝冠動脈疾患を有する糖尿病患者においてCABGを施行すると心筋梗塞の再発が著明に低下し,そのメリットが非糖尿病患者に比べ大きいことが明らかにされた。【片山茂裕

●目的 心筋梗塞(MI)を発症した多枝冠動脈疾患(CAD)を有する糖尿病患者に対するCABGとPTCAの予後改善効果をMI非発症例と比較検討した。一次エンドポイントは全死亡。
●デザイン 無作為・非無作為,多施設(米国,Canada)。
●試験期間 追跡期間は平均5.5年。
●対象患者 3603例:血行再建術を要する重度の多枝CADを有し,初回血行再建術としてPTCAまたはCABGが適切な患者を選別したBARI試験の追跡可能症例(3839例:CABG施行群とPTCA施行群への無作為割付けに同意した1829例,および担当医師の判断に基づいて血行再建術を行った2010例)のうち,登録後3ヵ月以内にCABGまたはPTCAを施行された者。
●方法 患者の累積死亡率およびCox回帰モデルによる死亡の相対リスクを,糖尿病症例(641例)と非糖尿病症例(2962例),CABG施行例(2134例:初回血行再建術としてPTCAを施行され,のちにCABGを施行された症例を含む)と非施行例(1469例:PTCAのみを施行)にわけて,突発性(発症前7日以内に血行再建術を施行されていないこと)Q波MI発症例(176例)と非発症例(3263例)で比較した。
●結果 糖尿病症例および非糖尿病症例の5年累積死亡率はそれぞれ20%,8%(p<0.001),5年累積Q波MI発症率はそれぞれ8%,4%(p<0.001)と,いずれも糖尿病症例で有意に高かった。
また糖尿病症例では,CABG施行例のQ波MI発症後の5年累積死亡率が17%であったのに対し,CABG非施行例では80%であった。Cox回帰モデルを用いてベースライン時の患者背景を補正すると,CABG施行例における死亡の相対リスクは0.09(95%CI 0.03-0.29,p<0.001)と,CABG施行による著明な死亡抑制効果が認められた。
Q波MI非発症の糖尿病症例(CABG施行例250例,非施行例311例)では,CABG施行による死亡抑制効果は中程度であったが(補正相対リスク0.65,95%CI 0.45-0.94,p=0.02),Q波MI発症例ではQ波MI非発症例の約7倍の効果が認められた(p=0.002)。
一方,非糖尿病症例では,Q波MI発症例(発症後5年における累積死亡率:CABG施行例67例 vs. 非施行例69例,補正相対リスク0.67,95%CI 0.34-1.34,p=0.26)および非発症例(CABG施行例1127例,非施行例1575例:補正相対リスク1.04,95%CI 0.80-1.35,p=0.77)のいずれにおいても,CABG施行による有意な死亡抑制効果は認められなかった。
●結論 MI発症糖尿病患者では,CABGはPTCAに比較してきわめて優れた予後改善効果を示したが,MI非発症糖尿病患者ではその効果は小さかった。これらのデータは,多枝CADを有する糖尿病患者において,血行再建術の選択に影響を与えると思われる。