編集:片山茂裕 河盛隆造 景山茂 西尾善彦 西村理明 綿田裕孝
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Chaturvedi N, Fuller JH, Pokras F, Rottiers R, Papazoglou N, Aiello LP; EUCLID Study Group: Circulating plasma vascular endothelial growth factor and microvascular complications of type 1 diabetes mellitus: the influence of ACE inhibition. Diabet Med 2001; 18: 288-294. [PubMed]

EUCLID試験では,lisinopril投与群でAERが減少し,網膜症の進展も抑制されることがすでに報告されている。本試験では,ACE阻害薬の網膜症の進展抑制効果は,血中VEGF濃度とは関連しないことが示された。しかしながら,眼内局所のVEGF産生やレニン-アンジオテンシン系が関与することも考えられ,今後の検討が必要である。【片山茂裕

●目的 主に正常アルブミン尿で正常血圧の1型糖尿病患者において,細小血管障害(網膜症,腎症)と血管内皮増殖因子(VEGF)の血漿中濃度の関係と,細小血管障害に対するACE阻害薬lisinopril投与による血漿中VEGF濃度の変化を検討した。
●デザイン 無作為,プラセボ対照,多施設。
●試験期間 追跡期間は2年。
●対象患者 299例:EUCLIDの登録患者(36歳以前に発症し,診断後1年以内にインスリン治療を必要とした1型糖尿病患者530例)のうち,両眼の眼底写真および血漿中VEGF濃度のデータが得られた例。男性192例,女性107例。20~59歳(平均34歳)。DBP75~90mmHgかつSBP<155mmHg。正常アルブミン尿(アルブミン排泄率[AER]<20μg/分)または微量アルブミン尿(AER 20~200μg/分)。
●方法 lisinopril群とプラセボ群にランダム化。
・眼底写真をベースライン時および2年後に撮影し,重症度を6段階で評価。重症度レベルが≧1段階上昇した場合を網膜症の進展とした。
・6ヵ月ごとに2日連続の夜間尿でAERを測定。
・平均VEGF濃度を,ベースライン時の網膜症重症度,2年後の網膜症重症度の変化,lisinopril投与によって評価。
●結果 本試験はEUCLIDのサブ解析として実施された。
ベースライン時のVEGF濃度と細小血管障害のリスク因子(年齢,糖尿病罹病期間,血糖コントロール,血圧,喫煙状況,フィブリノーゲン,フォンウィルブランド因子)の間に有意な相関は認めなかった。ベースライン時の平均VEGF濃度は,網膜症の重症度に伴って上昇していたが,有意な上昇傾向は認めなかった(網膜症非発症例11.5pg/mL[95%CI 6.0-27.9],非増殖網膜症例12.9pg/mL[95%CI 6.0-38.9],増殖網膜症例16.1pg/mL[95%CI 8.1-33.5];p=0.06 for trend)。ベースライン時の平均VEGF濃度は,2年後の網膜症進展例(15.2 pg/mL)では,非進展例(11.8pg/mL)に比して高かったが,その差は有意ではなかった(p=0.3)。また,lisinopril投与によるVEGF濃度の有意な変化は認めなかった(lisinopril群10.7pg/mL vs. プラセボ群9.4pg/mL;p=0.5)。AERについても同様に,VEGF濃度との有意な相関はなかった。
●結論 1型糖尿病患者において,血漿中VEGF濃度は細小血管障害およびそのリスク因子との間に強い相関は認めず,ACE阻害薬投与による影響もみられなかった。したがって,網膜症に対するACE阻害薬の有効性は,血漿中VEGF濃度の変化によるものではないと考えられた。