編集:片山茂裕 河盛隆造 景山茂 西尾善彦 西村理明 綿田裕孝
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Klein R, Klein BE, Moss SE, Cruickshanks KJ: Relationship of hyperglycemia to the long-term incidence and progression of diabetic retinopathy. Arch Intern Med 1994; 154: 2169-2178. [PubMed]

糖尿病網膜症にはいわゆるpoint of no returnがあり,その時期をすぎるといくら血糖コントロールをしても網膜症の進行を止めることはできないとする説がある。このスタディでは初診時のHbA1値がその眼の運命をほぼ決定しているが,途中からでもやはり諦めずに血糖コントロールを行えば網膜症発症,進展のリスクを下げることができるとしている。いくら血糖コントロールをしても網膜症が進行していく症例は確実に存在し,これがpoint of no returnの概念を生んでいるが,これは眼の状況によって影響されていることがある。部分後部硝子体剥離があり,その部位に血管新生が存在する眼では,良好な血糖コントロールにより網膜自体には大きな変化がなくとも硝子体の収縮だけで硝子体中にある血管が破綻し,硝子体出血を起こすことがある。また網膜出血や新生血管は消退したが,網膜萎縮が進行したり硬性白斑が中心窩に集積して高度視力低下が改善しえない症例もある。したがって血糖コントロールだけでは,その予後を判断するのは所詮無理であり,やはり眼科的な状況と内科的な状況をあわせて,網膜症の予後を判断すべきである。【梯 彰弘】

●目的 血糖(HbA1)値と網膜症の罹患率および進展との関係について調査した。
●デザイン 疫学,無作為,多施設。
●試験期間 追跡期間は10年。
●対象患者 若年発症糖尿病患者682例と,高齢発症糖尿病患者834例。
●方法 患者を若年発症インスリン治療群,高齢発症インスリン治療群,高齢発症インスリン未治療群の3群に分類し,各群でHbA1の測定とステレオ眼底写真による網膜症の評価(ETDRSプロトコール13段階)を行った。HbA1は5.6~9.4%,9.5~10.6%,10.6~12.0%,12.1~19.5%の4群に分類した。
●結果 ベースラインでのHbA1値は若年発症治療群,高齢発症治療群,高齢発症未治療群の順で高く,治療群の4年後のHbA1値はベースラインと比較し有意に下降していた。10年後の網膜症罹患率,進展率,増殖網膜症進展率は若年発症治療群,高齢発症治療群,高齢発症未治療群の順で高かった。ベースラインでのHbA1(12.1~19.5%)群はHbA1(5.6~9.4%)群より網膜症の進展が有意であった(若年発症治療群:相対リスク2.9;95%CI 2.3-3.5,高齢発症治療群2.1;1.6-2.8,高齢発症未治療群4.3;3.0-6.2)。さらに増殖網膜症への進展も有意であった(若年発症治療群:相対リスク7.1;95%CI 4.6-11.1,高齢発症治療群3.1;1.5-6.1,高齢発症未治療群13.8;4.8-39.5)。これらの相関は他のリスク因子を一定にした後も有意であった(p<0.005)。
●結論 若年発症であれ高齢発症であれ,ベースラインでのHbA1高値は長期的に網膜症の発症,悪化のリスク因子である。また一方で,たとえ初期に血糖コントロールが悪くてもHbA1の改善はその網膜症のリスクを少しでも回避できることが示された。